見出し画像

オリックス・バファローズ シーズン総括~野手編~

こんにちは、シュバルベです( ✌︎'ω')✌︎前回の投手編に引き続き、野手編の総括を書いていきたいと思います!!ちなみに投手編⇓

長いんだよ!もっと要約しろや!!って方はこちらをご覧くださいませ。

ありがたいことにTHE DIGESTさんでのネット記事もこちらで3本目。noteを昨年12月にスタートさせてから良い縁をいただき感謝しきりです。前回投手編をご覧いただければわかるのですが、野手編はやや辛口です笑。

1.野手編

さて今回の野手編、チーム別の野手成績がこちらです。

チーム別野手成績

野手WARでダントツトップに君臨するのは王者ソフトバンク。上では打撃指標を掲載していますが、打率・出塁率は意外なことにリーグでも中位です。しかしリーグトップタイの長打率にけん引される形でOPSはリーグ2位、そして(長打率)ー(打率)で算出されるISOは.152でリーグトップ。ソフトバンクは長打力で秀でており、本塁打の数はリーグトップの126本でこれはリーグ2位の楽天より14本多くなっています。また、三塁打の数も28本でリーグトップ(2位は西武の24本)で、これは143試合行われた昨年よりも9本多くなっています。

対してオリックスは打率はリーグ4位、出塁率は5位、長打率は4位といずれも下位に沈んでいます。OPS.683はリーグ最下位で、他球団に比べて突出する何かを作れていないことがうっすら見えています。実際、投手力ではリーグ3位の防御率で、投手編で見たように各個人の投球内容は決して悪いものではありません。これまでのnoteでも書いているように、オリックスの最下位の要因は基本的に野手に帰属すると私は考えています。

シーズン終了時点ではないですが、10月4日時点でのポジション別wRAAはこちらの通り。

プラス指標は捕手・ショート・レフト・ライト・代打。レフト・ライトは両ポジションで起用された吉田正尚選手として、昨年は大きくマイナスを背負った捕手でwRAAプラスとなっているのは良い兆候です。しかし、センターはポジション別でも最悪のマイナスを背負い、打撃特化型の選手をおけるファースト・DHでもマイナス指標な点はオリックスの現状の問題点を端的に現していると思います。

さて前置きが長くなりましたが個別の選手を見ていきましょう。150打席以上立っている選手の指標はこちら。

orix野手成績

まず規定打席に到達している選手が吉田正尚選手とT-岡田選手しかいない!!!

他の5球団はいずれも4人以上規定到達打者がおり、継続してスターティングラインナップに並ぶコアとなる打者が不足していることがオリックスの弱みの一つだと仮説が立てられます。

長くなりましたが、各ポジション別に今シーズンの総括を行っていきましょう。

1-1.捕手

いわゆる扇の要のポジションを開幕からメインで守ったのは若月健矢選手でした。19オフに結婚し、昨年メタメタだった打撃の改善を目標として掲げ、シーズン開始時は7月に単月で3本塁打を放ちました。

シーズン1/4時点ではOPS.726で各指標も軒並上がり、これで正捕手の座は安泰だと誰もが思っていたはずです。が。8月に入り極度の不振で三振が急増。打率もOPSも急落し、中嶋代行監督に代わるとスタメンマスクを伏見選手に奪われる試合が目立ちました。2019年は盗塁阻止率.371でリーグトップでしたが、今年は.222と低迷。

私としては盗塁の責任の半分以上は投手に帰すると考えていますし、フレーミング技術が19年に比べて格段に上がるなど捕手としての総合力は未だチームトップだと思っています。契約更改では悔しさをにじませるコメントが入っていますね。

背番号が37から2になることが発表され、来年は心機一転、熾烈な正捕手争いを引っ張る存在となってほしいと思います。

後半戦に徐々に出場機会を増やしていった伏見寅威選手は、強みである打撃に磨きをかけ今シーズン自己最多となる6本塁打を記録

3.0BB%と四球はあまり選べないものの、17.7K%とこのタイプにしては三振が少なく、長打を打てる捕手として貴重な存在です。昨年アキレス腱断裂という大怪我を負い、選手生命も危ぶまれた中で今年戦線に復帰し数字まで残したのは驚異的です。

契約更改では大幅増を勝ち取りました。私自身もあの大怪我で捕手としては厳しいと思っていただけに、今年の復活は凄すぎます。

数字以上に伏見選手は印象が良いと思うのですが、その理由を探した時に一つ出て来たのは試合終盤での打撃内容です。伏見選手は第1打席では打率.174ですが、第3打席では打率.364、第4打席では.308本塁打も第3・第4打席で4本放っており、終盤の大事な場面での安打が多いことが印象の良さに繋がっていると考えられます。意外にも得点圏打率は.212で低く、印象というのは面白いなぁと思いながら私は記事を書いています笑

来年に関しては、24歳の頓宮選手がシーズン終盤に出場機会を得ており、基本的には若月・伏見・頓宮の3人の争いになるでしょう。頓宮選手は35打席と限られた打席の中で2本塁打を放っており、伏見選手と打撃型捕手としての座を競う形になります。第3捕手としては守備型でチームの捕手最年長である松井雅人選手が控えており、頓宮選手の身体が問題なければ(←重要)良い競争が見られそうです。

1-2.一塁手

一塁手として最も多く出場したのは37試合のアデルリン・ロドリゲス選手

画像3

パワーツールに優れた長距離ヒッター候補として期待されましたが、シーズン通して6本塁打放つもののOPSは.642と苦戦してしまいました。外角のやや高めにスポットを持っていましたがインコースと低めのボールのコンビネーションには無抵抗で26.1K%と三振が多く、出塁率も3割を切ってしまうなど日本の投手に最後まで対応できませんでした。7月10日の日ハム戦@京セラドームではライナー性のサヨナラスリーランホームランを放ち、ファンに強烈な印象を与えましたがこの試合が最後の輝きになってしまった感があります。

守備面でも8失策と攻守に精彩を欠き、シーズン終了後に来シーズンの契約を行わないことが発表されてしまいました。お疲れ様でした。

ロドリゲス選手と入れ替わる形でシーズン後半戦を中心に35試合でファーストを守ったスティーブン・モヤ選手は、来日3年目にしてキャリアハイをマーク。

46試合で12本塁打を放ち、長打率.567、OPS.891と他球団の主軸打者に劣らない打力を発揮しました。9月18日~28日の9試合で6本塁打を放つなど手が付けられない時期もあり、ジョーンズ選手がスタメン落ちした試合では4番~5番を担いました。

18年・19年と25%以上あったK%が今年は18.8%に下がり、コンタクト率が70%→74%となっているように、こちらは日本の投手への慣れを感じさせます。特にカーブやチェンジアップといったこれまで苦手としていたオフスピードボールに対応できるようになったことが好成績の要因ではないかと考えています。

昨年60試合で5個あった失策も今年は1個。守備面でも上達が見られ、攻守両面での成長を感じさせます。来年もオリックスは外国人6人体制を敷くと言われていますので、オープン戦からベンチ入りを賭けた競争が始まります。同じぐらいの成績ならジョーンズ選手の起用が優先されることは間違いないので、シーズン終盤で見せた打撃を春先から発揮しアピールすることが求められます

打力を優先されるポジションであるファーストですが、やはり新外国人で長距離候補として期待したロドリゲス選手の不発が響きました。同リーグで見てみると山川選手や中田翔選手のようなスラッガーが一塁につく一方で、ソフトバンクや楽天は中村晃選手・銀次選手のようなベテランプレイヤーを配備しています。

オリックスはベテランが少なく、またソフトバンクや楽天のようにセンターラインで打力のある選手が不足しているため、打撃に専念させる意味合いを含めて基本はスラッガータイプを配置したいところです。ともに2桁本塁打を放ったT-岡田選手とモヤ選手のどちらかが起用される形が望ましいと言えます。

1-3.二塁手

不動のリードオフマンとして期待された福田選手が開幕直前に右手人差し指の剥離骨折で離脱を余儀なくされ、前半戦は大城滉二選手が二塁に主に起用されました。

守備面ではライトの介護を含めたダイナミックなシフトと、身体能力をフルに活かしたアクロバティックな捕球とスローイングでUZR+6.4とチームに貢献しました。その一方で、OPSは昨年の.694から.505に急落シーズン通して長打が二塁打3本と本塁打1本の計4本と散々な成績でした。K%・BB%に大きな差は無く、スイング率・コンタクト率にも大きな変化がないため、選球眼や球の待ち方を変えたことによる打撃不振で無い分、一層不安に感じます。打球方向で見るとレフト方向への打球が27%→19%と下がっており引っ張り方向への強い打球が減っていることが考えられます。

契約更改では自身の振り返りとして次のように語っています。

守備に関しては自信をもって、考えながらプレーできたが、打撃で貢献できなかったことが全て。三振数を減らし出塁率を上げるなど、来季は全項目でキャリアハイを目指したい

私個人としては、今年の大城選手の三振率は昨年と比べて1%程度しか悪化していませんし、19年は二塁打を18本放つなど意外性のあるパンチ力を下位打線で発揮してくれることを第一に望んでしまいます笑

怪我明けの福田周平選手は7月末に復帰。打率こそ.258ですが、出塁率は.366でキャリアハイ。今年はやや三振が増えてしまったものの13.8BB%は過去3年で1番よく、出塁率だけでなく長打率もキャリアハイでした。社会人3年目にしてさらにレベルアップした感はあり、特に外のボールには強くファールで粘れるのは福田選手の魅力です。昨年リーグ1位だったコンタクト率は今年も88%を超え、いやらしいバッターとして地位を確立してきました。

守備面では今季サードにも取り組みました。セカンドとしてのUZRは+2.9、サードとしても+1.8と安定した守備力を発揮しました。後輩の太田選手がセカンドのレギュラー争いに来年は本格的に食い込んでくると思うので、安定して出塁できる福田選手をサードに回すことで打線の厚みも加えるのはアリだと思います。

本人も契約更改で出場試合数について触れており、まだまだ若手にポジションを譲るつもりはありません。

1-4.遊撃手

センターラインの中でも特に重視されるショートストップをメインで担ったのは安達了一選手でした。

持病があるため、今年は3試合連続出場はシーズン通して1回だけ。しかし完全週休3日制を敷いたことで打率.289はキャリアハイ。ただですら負担の大きいショートで持病がある中で休みを取らせることで最大限のパフォーマンスを引き出したのは西村前監督の功績の一つと言えるでしょう。

シーズン終盤には三番打者としても力を発揮、その多くは四番に吉田正尚選手が座るという重要な位置でもしっかり結果を残したのが印象的です。先に上げた選手の中でも野手WAR2.5は吉田正尚選手に次ぐ2位。守備での貢献度が特に高いですが、打撃でも結果を残し簡単にはショートを譲らないぞという気概を見せた一年となりました。というか冒頭の守備動画見ても異次元ですよね。若手野手がショートで出場しても比較される相手が安達選手になってしまうのは不憫な気すらしてきます。契約更改では次のように語っています。

自分が(遊撃を)守る気持ちではいるが、自分をはねのけて(若手が)ショートのレギュラーになってくれないとチームは強くならないと思う

ちなみにこちらの記事でも目について語られていますのでT-岡田選手同様、やはりベテランになる程目の衰えは深刻なんでしょうね。

打撃では2019年から引き続いてストライクゾーンでもスイング率は54%と抑えめ。ストライクゾーンのコンタクト率は92.3%と極めて高く、待球型へのモデルチェンジが功を奏したと言えるでしょう。地味ですが、コンタクト率85.8%もキャリアで最も高い数字。一発の怖さはないものの、試合に出れば一定の出塁を稼げるという点では福田選手と双璧でしょう。先に引用したwRAAでもショートのプラスは安達選手によってもたらされています。

1-5.三塁手

今年レギュラー不在だったポジションの一つがサードです。最も多くの試合でスタメンしたのが36試合の宗佑磨選手。今年のシーズン前に私がキーマンに挙げた選手です。

書いているときはまさかサードを守るとは思っていませんでした。残念ながら今年の宗選手は昨年が嘘のようにひどい成績。.225/.288/.308でOPSはまさかの.600を切ってしまいました。思わず私自身こんなツイートをしています。

不振の原因は二段ステップに起因する立ち遅れにあると思います。1ヶ月単位でもフォームが変わり、1年かけてずっとタイミングの取り方に悩まされてきたのでしょう。2回ステップを踏んで打てる打者、今のNPBにおいては大阪桐蔭が生み出した天才スラッガー平田良介しか知りません。案の定、フォーシームに立ち遅れ昨年はwFAで+2.9を記録したにも関わらず今年は−4.5。今年のオフに再度フォーム固めに取り組んで欲しいです。

今年唯一のホームランは楽天戦でのランニングホームラン。

走攻守に高いポテンシャルはあるはずなんですよね。実際、今年急造とも言えるサードのUZRは+3.2。入団してからずっと打撃フォームで悩んでいる気がするので本人のせいだけとは思いませんが、来年は愈々勝負の年になりそうです。

サードで最も存在感を示したのは大下誠一郎選手。育成6位で指名されましたが8月に支配下登録を勝ち取ると中嶋代行監督の下、その日に一軍昇格。そして迎えたプロ初打席。

見事プロ初打席初本塁打。しかもほっともっとフィールド神戸開催試合での神戸ユニでのそれはファンの心を掴むには十分でした。ドラフト指名時からすれば、この殊勲打だけでも期待以上、その後もサードから大きな声で味方を鼓舞する姿は他球団のファンを慄かせ、有形無形の戦力となったと言えます。確か白鴎大時代は2年生ながら異例のキャプテンに就任しチームを引っ張っていました。そのリーダーシップも含めて魅力の強い選手です。打撃内容もK%は14%台とイメージより少なく、OPS.666は一年目のルーキーとして上出来と言えるでしょう。

オフは白鴎大の先輩である阪神の大山選手と取り組むとのこと。本塁打打てればすぐレギュラーになれますよ。

1-6.左翼手

オリックスのレフトといえば吉田正尚選手です。今年は打率.350で首位打者のタイトルも獲得し、THE DIGESTの記事でも野手のMVPに私も記事の中で選出させていただきました。

本塁打こそ14本でチーム2位ですがOPS.966はキャリアハイ。吉田選手の凄さを語るとどれだけ紙面があっても書き切れないですが、フルスイングをしながら492打席で29三振は本当におかしいです。異常です。日本代表にも常連となりつつあり、投の山本由伸・打の吉田正尚はオリックスの抱える至宝です。

しかし今年のオリックスは吉田正尚選手を十分に活かしきれたとは言えません敬遠17はリーグダントツのトップ。それ以外の打者と比べた時に圧倒的であるからこそ、勝負を避けられるケースも目立ちました。

吉田選手のすごい点を改めて分析してみるのなら、まずフォーシームへの圧倒的強さです。入団1年目からwFA+12.3、それから今に至るまで常に+10以上をマーク。今年に至っては全ての球種に対してプラス指標という意味不明の成績を残しました。かつては四番でチャンスに打てず涙したこともありましたが、今年は得点圏打率でも.356とアベレージ越え。ケチのつけようがありません。彼と山本投手がいる間に優勝しなければいつするのか?今でしょ、状態なんですよ。

吉田選手の次にレフトの守備位置についたのはTー岡田選手。ファーストと兼務する形で外野起用も目立ちましたがレフトとしてのUZRは-6.2とまぁきつい数字。ファーストではプラス指標なだけに本来一塁専任としたい選手です。今年はチームトップの16本塁打を記録

昨年はわずか20試合で1本塁打に終わり屈辱を味わいましたが、オフに3年契約を締結。球団への恩返しをしなければならない中でプエルトリコに武者修行。若手かのような行動力に加え、ボールを見る目の意識について指導を受けたことが最大の収穫だったと思います。

カリブ海で得た打席での収穫は「両目」で見ることで「意識するとボールの見え方が変わる。顔の向きも変わって、ポイントを引っ張って来られるようになって、感覚も良くなった」と充実感を漂わせた。

今年のボール球スイング率は29.2%、これはTー岡田選手のキャリアの中で最も少ない数字となりました。特にベテラン選手は最後に目の劣化と向き合わざるをえない中で、Tー岡田選手が何かを掴んだのであればいいですね。吉田選手とともにチーム2人だけの規定打席到達。復活の狼煙をあげるに足る成績は残せたと思います。

1-7.中堅手

今年wRAAでは最大の穴と出ているのがセンター。最も多いスタメン33試合で起用されたのは佐野皓大選手。故小瀬選手が付けていた背番号41を今年から着用し、シーズン中に右打ちから両打へ再転向。本人にとっても目まぐるしい中で打撃の結果は残せず打率.214。OPSは.555と極めて厳しい結果となりました。

一方で、収穫は彼の持ち味である走塁面でしょう。

盗塁は20個、さらに成功率100%と足で掻き乱しアピールを果たしました。(→4つ失敗してました…陳謝)。動画の通り足が速いだけでなく、投手のモーションを盗むのが上手く盗塁技術を持っているので劣化しづらいのも評価ポイントです。足を活かした広い守備範囲でセンターUZRは+3.5。ソフトバンクの周東選手を挙げるまでもないですが、その足は塁に出て初めて生かされます。現状の佐野選手の出塁率はわずか.262。来季に向けては少なくとも3割以上の出塁率をマークすれば自ずとスタメンの機会は増えるはずです。

次にセンターで出場したのは26試合でスタメンを果たした中川圭太選手です。

Twitterで見ている方はご存知ですが、私はキャンプから一貫してセンター中川には反対でした。肩は強くなく、足もそこまでない彼が1年目に打撃で結果を残したにも関わらず、不慣れなセンターをキャンプで練習していた時は目を疑いました。昨年からライトは取り組んでいたものの、329イニングでUZR-6.3と散々で外野の適正自体に疑問符を抱いていました。当時はスクランブル時のオプションと考えましたが、シーズン中盤から本当にセンターで起用したのは驚きです。結果的にセンターとしてのUZRは+0.6で私の予想より随分良かったのですが、両翼に打撃型の選手を置いている中での中堅手の負担は大きかったと思われます。

打撃でも結果を求められ、中嶋監督は「無敵の中川」と称して四番を一時期任せたのはモチベーションを考えてのことだったと思いますが、結果的にただ負担が増しただけでした。以前より発信しているように、2年目の研究される中で中川選手には打撃に集中できる環境を作ってあげるべきだというのが私の持論です。若手の台頭もあってポジションがないとの向きもありますが、サードのレギュラーも決まってないしファーストも攻撃力で劣るチームがいうことでは無いはずです。辛口ですが、チームの方針のミスだと思っています。

契約更改でも悔しさを滲ませました。

オフの内容は極秘とのことですが、再度打撃を中心に返り咲いて欲しい選手です。

今季18試合でセンターのスタメン出場を果たした西浦颯大選手には悲劇が訪れてしまいました。

オフに国の難病指定されている両側特発性大腿骨頭壊死症であることを公表。二軍成績は着実にステップアップする中で、日常生活すら危ぶまれる大病を患ってしまったのは本当に残酷だと思います。来年の戦力として見込んでいたであろうチームに与える打撃も計り知れません。安達選手に続きなぜこうなるんでしょうね。

来年について、今年の起用から考えると佐野選手・中川選手・小田選手で調子を見極めながら起用していく形になるかと思います。打力を継続して発揮できる選手はいないので、FA市場に参戦するかと思ったのですがそれもなく現有戦力で戦うシーズンはかなりキツいと考えています。

1-8.右翼手

さて。本来このポジションで活躍するはずだったのがアダム・ジョーンズ選手です。かつてはWBCアメリカ代表としてセンターを守り、ホームランキャッチも見せるなど輝かしい経歴を辿った本物のメジャーリーガーだけに、年俸4億越えで招いたGMは昨オフ賞賛を一手に受けました。しかしながら、その生きるレジェンドは守備面では完全な化石と化してしまっていました。ライトでは緩慢な守備を見せUZRは-3.1。後逸などもあり、ライトのスタメン出場はわずか12試合。シーズン一ヶ月でさしもの西村監督も業を煮やしDHでの起用を余儀なくされてしまいました。

打撃面では日米通算2,000本を放ったほか、12本塁打でOPS.749と昨年のMLB成績並の数字を叩きました。

画像4

物足りないといえばそうですが、もはやNPBのレベルはMLBに近づきつつあるということの証左ではないかと考えています。フォーシームには負けずに弾き返せるものの、日本人投手が得意とするアウトコースのストライクゾーンからボールゾーンへ逃げるスライダーに翻弄された一年でした。来日前にジョーンズ選手についてnoteで記事を書いているので見返してみると次のように私が書いていました。

先のスイング/コンタクト率表を念頭におくと、日本の投手はストライク・ボールの投げ分けで勝負する選手が多く、重要なことにストライクゾーンも広いので、多くの外国人選手同様、4月〜5月は苦しむこともありうるでしょう。

この時のコメントの状態がシーズン長く続き、コロナ禍+コンディション不良で最後まで調整しきれなかったと考えられます。

すでに多くの指摘がなされているように、体型を維持できずキャンプ〜シーズンを迎えてしまった点は多くのファンに失望を生みました。私としても守備走塁の期待値もそこそこあっただけに残念でした。来季こそ打撃だけでもホンモノを見せて欲しいですね。

崖っぷちから返り咲き、ライトのポジションで30試合以上スタメン出場を果たしたのがラオウこと杉本裕太郎選手です。190cmの巨体から繰り出されるパワーには定評があり、昨年までは通算13安打中7本がホームラン。しかしコンタクト率は60%台で確実性に欠け、昨年は打率.150と低迷。今年はシーズン前にジョーンズ選手に教えを乞い打撃練習に励みました。

後ろのお尻を(ボールに)ぶつける感覚。そうすれば、両手と上半身は意識しなくてもくっついてくるからバットが出る

二軍では今年OPS1.112と驚異的な数字を叩き出しましたが、西村監督時代は一軍に呼ばれず。中嶋代行監督に代わると翌日に昇格しキャリアハイとなる打率.268と結果を残しました。

無理にホームランを狙い続けるのではなく、状況に応じてセンター方向中心に弾き返すバッティングが功を奏しています。今年はセンター方向への打球が最多の49%。中嶋監督ら二軍のコーチ陣がシャッフルで一軍に上がり一緒に野球をやれたこともプラスに働いたのでしょう。10月4日のタイムリー談話でも表れています。

杉本は「打席に入る前に、監督代行に“絶対に打てるから大丈夫、ボテボテでもランナーはかえってきてくれるから思いきって行け”と言ってもらったので、思いきって打ちました! なんとかいいところに飛んでくれてよかったです!」と激励の内容を明かした。

残念なことに10月14日に右腓腹筋の筋損傷で登録抹消、その後は治療に専念しシーズンを終えました。実働期間が2ヶ月と短く、チャンスを逃してしまった感は否めないのですが、それでも一軍に上がれず露骨に構想外と見られた時期からは脱したと考えられます。29歳でドラフト10位入団の社会人出身選手と本当に今年崖っぷちだったと思います。来季は開幕から一軍ベンチ枠の争いに入るべき選手ですので、一年間稼働できる身体を作って欲しいですね。

2.プロスペクト野手

ここまでポジション別に一定の試合数を重ねた各選手の成績を追ってきました。やはり打力の面での物足りなさは感じますよね?ということで、ここでは次年度以降の活躍を嘱望される3人の若手プレイヤーを見ていきましょう(20年ドラフト選手除く)。

2-1.太田椋選手

レギュラー争いに確実に食い込んで来るであろう選手が2018年ドラフト1位の太田椋選手です。高卒1年目の昨年早くも一軍デビューを果たし6試合に出場。二軍では64試合に出場しOPS.743と投高のウェスタンリーグで結果を残しました。

そして今年。7月16日にサードで出場すると、SBバンデンハーク投手から第1打席でホームラン。プロ初安打が初本塁打となりました。

その後もセカンド・サード・ショートと内野の3ポジションを守りつつ3本塁打で打率.259。センター方向に弾き返す打球が多く、オリックス待望の打力のあるセンターラインの選手として着実にステップアップしています。

9月25日、自身の走塁ミスで日ハムのビヤヌエバ選手と接触転倒してしまい肋骨骨折。以降出場機会はなし。怪我が太田選手の最大の敵でしょう。

本人も当然自覚していますよね。来年はレギュラー争いに加わり打力を発揮してホンモノを見せてくれると信じています。

2-2.宜保翔選手

太田選手と同期の宜保翔選手もプロスペクトの1人です。やはり昨年、高卒1年目ながら8試合に出場。二軍ではOPS.559でしたが一軍では早々にヒット6本を放ち今年はレギュラー争いに入ってくるのでは、と期待されていました。

3月のオープン戦では一軍に入り主にセカンドで出場していましたが、5月に右手首有鈎骨を骨折。場所が場所なため時間がかかり、また打撃に及ぼす影響からか復帰後も二軍ではOPS.513と昨年より悪化してしまいました。

一軍では結局10試合18打席のみの出場で、OP戦・練習試合で見せていた強く引っ張る打球が減ってしまったのが残念でした。

2月末〜3月頭のOP戦第1弾(そんな呼び方していないけどw)ではこの通り、Batted  Ballのうち実に75%が引っ張り方向でした。彼のような小柄な選手はどうしてもシフトを敷かれがちで、特に逆方向への当てるバッティングだけだと三塁手を前に出されてヒットゾーンが狭まります(そういう場面でセーフティーを試みてアウトになるシーン、よく見ますよね?)。小柄な非力左バッターこそ、浅いカウントでは強く引っ張る打球を見せることで自らのヒットゾーンを広げることができるので、宜保選手の打撃内容はプラスに見ていました。超絶自分語りですが気にしないでくださいw

フィールドに立てばセカンドでアクロバティックな魅せる守備を披露

高い身体能力を存分に発揮したプレーで、ポスト大城選手としての将来像が見えてきた気がします。

2-3.紅林弘太郎選手

2019年ドラフト2位で指名された大型遊撃手の紅林選手二軍ではなんと86試合に出場。今年の舞洲軍の試合数は86試合、つまり今年行われた全てのファームの試合に出場したのは驚異的です。しかもメインポジションはショートで高卒一年目としては部類の体の強さを示しました。多くの打席と守備機会を1年目に与えることが重要ですが、ここまで出場できるのは本当に凄い。

シーズン終了間際に一軍に昇格。11月3日のプロ初打席でなんとセンター前ヒットを放ちました👏

その後も5試合で4安打、一年目に積む経験値としては最大限の結果を残してくれました。ショートの守備もこの5試合では破綻なくできていました。

186cmと遊撃手としては大柄ですが、もし体格に見合うだけの打力が備わり遊撃もこなせれば巨人の坂本選手のようになれる可能性を秘めています。知らなかったのですが、紅林選手本人も坂本選手について次のように言及していました。

「坂本さんはすべてにおいて尊敬できる存在。僕は坂本さんみたいになるのではなく、坂本さんを超える選手にならなきゃいけない」

決して焦ることなく来年も基本は二軍で攻守に技術を磨き、3年目・4年目でレギュラー争いに乗り込んで欲しいと思います。

3.最後に

長々と書きましたが、投手と比べて野手は厳しい評価を並べざるを得ませんでした。各ポジション平均を下回る打力の選手が多く、若手の台頭に期待するしかないのが結構キツイです。

育成に切り替えたといっても、しばしば忘れがちですが既に各球団も育成に力を入れているので、平均以上の打者が台頭するか力を持った選手を連れてくるしかありません。筆頭はやはりソフトバンクで、三軍制を早期に採用し育成指名からもスター選手を輩出しました。2章で挙げた若手達は上手くいけばコアになれる選手の候補で、彼らに十分力を蓄えさせ一軍に送り出すことはチームとして必須です。そして、何より実践で勝つこと。これが一番です。優勝体験というのは今年のヤクルトスワローズのFA残留組が言及したように、チームへの愛着を一層厚くするものです。

勝ちながら育成する。それが今のオリックスには求められています。その為のピースはまだ不十分ですが、山本由伸・吉田正尚という投打の柱がいる間に頂点に立ちたいですね。叶うべき夢の先へ、邁進して欲しいです。

■出典










この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?