#12 一番好きで、一番最低だった
-花火-
そうして合鍵をもらった私は、自分のキーケースにつけました。
車と家の鍵しかついていなかったキーケースに1つ鍵が増えました。
キーケースいっぱいに鍵がじゃらじゃら付いている大人を見て、
少し憧れがあった私(謎の憧れ)。
キーケースのリングが1つ埋まった嬉しさと、初めて合鍵をもらった嬉しさで何度も見てはにやにやしていました。
そして、なんだか大人に近づいた気がする、そんな日でした。
その日以来、彼とは二人でランチに行ったり、夜中にDVDを借りに行って
一緒に観たり、ただやるというだけの関係では無くなって行きました。
セフレには変わりないのですが。
そうこうして気付けば3年の夏。1年この関係が続いていました。
もう付き合って良くない?と何度思ったことか。
でも彼が再び私を好きになることはありませんでした。
まだ元カノのことがまだ好きなんだろうな、というのは何となく分かっていました。
こんなに一緒にいるのに、ずっと彼のことを思い続けているのに、
ふとした時すごく悲しくて虚しい気持ちになります。
彼の寝顔を見て泣いたことも何度もありました。
ずっと心に小さい穴が開いたような、何かが欠けているような、
楽しいのに虚しい、満たされない。
このままではだめだなとずっと思っていたけど、甘えて1年も関係を続けてしまった。
もういい加減にしなきゃと思っていた時、同じクラスの男の子(B君)が私のことが好きだという噂を聞きました。私もB君はクラスで1番かっこいいと思っていたので、普通に嬉しいなと思いました。
ほぼ喋ったことも無かったので、どんな人かは全く分かりませんでしたが、
ここでタイミング良く、学科ごとに1泊2日で行く研修がありました。
2日間チームごとに分かれて発表だったりレクリエーションをするのですが、そのチーム分けでB君と同じチームになったのです。
1泊2日同じチームで過ごす中で、周りの友達の後押しもあり、
なんとなくいい感じの雰囲気になりました。
とても優しくておもしろいし人だと分かったし、何となく波長も合うし、なんせ顔がかっこいい。失恋は次の恋で忘れるとよく聞くので、これは彼を忘れるチャンスだと思いました。
研修依頼B君とは何度か遊びに行きました。
クラスの友達ももうこれは付き合うでしょ!みたいな雰囲気でした。
(誰にも元カレとセフレの関係であることは言っていませんでした。)
そして、夏休みに入り、B君から花火に行こうと誘われました。
行くかどうか迷いました。
この日告白されるだろうという事はなんとなく想像できたからです。
まだ私の心の中には彼がいて、B君のことが好きだという事が出来ない状況で告白されたらどうしよう。
ですが、このチャンスを逃しては私は一生彼の都合の良い女として終わる、それは絶対ダメだと思い行く事にしました。
花火デート当日、2人とも浴衣を着て、
(B君は浴衣を持っていなかったので、前日に一緒に買いに行きました)
屋台で焼きそばを買って、花火をみました。
こんなきらきらしたザ・デートというデートは初めてでした。
花火が終わり駐車場まで歩いている途中で、下駄の鼻緒の部分が擦れて痛くて、おんぶなんかしてもらったりしちゃったりして、素敵な青春デートになりました。
内心では最初の花火デートは彼とが良かったなーとちょっとだけ思っていたなんて、口が裂けても言えませんが。
帰りは彼が家まで送ってくれたのですが、私の家の前で止まり、
今日はありがとう、楽しかったと言われました。
あれ、告白はないパターンかと思い、少しの安心と少しの不安を抱きつつ
こちらこそありがとう、と言って車を降りドアを閉めようとした時、
あ、ごめんやっぱもう少し一緒に居たい。と言われ、近くの公園のベンチで話すことにしました。
そして、B君から本当は今日言おうかもう少し時間をかけた方がいいか迷ってたんだけど、ばいばいするときに今日言おうって決めた。
俺と付き合ってほしいと。言われました。
告白されたらOKしようと決めていたのですが、いざ言われるとこんな中途半端な気持ちで彼の思いに応えていいのかと思ってしまい、なかなか答えれず、なぜか涙が出てきてしまいました。
するとB君が、思ってることあるなら全部言っていいよ。と言ってくれたので、思っていること、今の状況を素直に話しました。
元カレのことがずっと好きで、今も正直忘れられていないと。
B君はそれでもいいと、俺が忘れさせるからと。
なんていい人なんだ。猶更申し訳なくなってしまいましたが、そう言ってくれるんだったら私からお願いしますと言って、付き合うことになりました。
心からB君に忘れさて欲しいと思いました。
彼はというとちょうど夏休みで帰省中だったので、連絡はとっていましたが
会うことはなく、連絡も徐々に返さなくして、自然にフェードアウトすることにしました。彼氏が出来たとはなんでか言うことが出来ませんでした。
#13 一番好きで、一番最低だったへ続く...