[きょうの労働新聞]電力生産基地をにぎやかにした経済扇動の太鼓の音(2021.1.3)
朝鮮労働党機関紙「労働新聞」1月3日記事 『電力生産基地をにぎやかにした経済扇動の太鼓の音』について少々書きます。
新聞記事へのリンクは↓をご覧ください。
「経済扇動」とは
朝鮮では工場や農場の生産への雰囲気を盛り上げ労働者たちの労働意欲を高めるため経済扇動(宣伝扇動)という催しがしばしば行われます。
主に芸術人(歌手や俳優、演奏家)や職場ごとの芸術宣伝隊(音楽サークル)がコンサートを行い一時の娯楽を与えます。
その他にもスローガンやポスターを掲示する直観扇動もあります。
(写真)昨年の台風8号9号被害の復旧建設現場で活動する芸術宣伝隊
(写真)平壌化粧品工場の敷地内を彩る直感扇動の掲示物
首都への電力供給を支える主要な発電所
今回の記事で取り上げられたのは平壌火力発電聯合企業所と東平壌火力発電所の2発電所です。両者とも首都・平壌へ電力を供給する重要な発電所です。平壌近郊の平安北道、南道で産出された石炭を燃料として使用しています。
平壌への電力供給基地としては北倉火力発電聯合企業所や順川火力発電聯合企業所といった火力発電所もあります。
朝鮮の火力発電のほとんどは石炭を燃料にしていますが、タービンへの着火時には重油が必要となります。しかし重油は朝鮮国内では産出しないので輸入に頼らざるを得ません。それを打開すべく、平壌火力発電聯合企業所と東平壌火力発電所は無重油着火装置や燃焼安定装置を新たに開発し実装が進んでいます。また、熱エネルギーを効率的に利用するために廃材を再利用した保温断熱材も開発されました。
1960年代に建設された古い発電所ですが、コンピュータ制御システムも導入されています。
これらの努力により、平壌火力発電聨合企業所のタービン職場は2020年9月に3重(3度目)模範技術革新単位称号を取得しました。
まだまだ課題の多い朝鮮のエネルギー問題ですが、限りある資源を有効活用するための現場での努力と技術革新が見られます。
(写真)平壌火力発電聯合企業所(上)と東平壌火力発電所(下)
報道要約
2021年1月1日の0時、金元均平壌音楽大学の教員と俳優たちが平壌火力発電聯合企業所の職場で扇動公演をおこなった。また、社会安全軍楽団のメンバーが発電所の朝の出勤時間に合わせ吹奏楽を演奏し盛り上げました。
その他にも中央芸術宣伝隊のコンサート、血の海歌劇団と国立サーカス団の民謡と曲芸を披露しました。
また、平壌市芸術宣伝隊の歌手たちは発電所の熱生産1,2職場、タービン職場、運炭職場で労働者たちに歌を披露しました。
さらに万寿台(マンスデ)創作社や平壌市美術創作社、高麗美術創作社の芸術家たちは平壌火力発電聯合企業所と東平壌火力発電所の生産現場にて「革新人物」の肖像を短時間に描きあげ労働者たちの功績を称えました。
電力生産は重大な課題
恒常的にエネルギー不足に喘いでいる朝鮮では、このようにエネルギー部門の強化に注力しています。経済扇動に生産性向上の効果があるとは思えませんが、昨年の台風8,9号被害復旧現場にも宣伝隊を投入するなど、建設の要所では必ず行われます。
また、昨今の情勢に伴う経済停滞に伴い芸術活動の場を失った芸術人たちの活動の場を提供する意義もあると思われます。
この記事では火力発電所での経済扇動のみについて触れられていますが、タービンの改良や運転プログラムの自動化など生産現場の有効な施策も行われいます。それらは折をみて紹介します。