旭区役所が鶴ヶ峰駅の真上に?
横浜市旭区は、ズーラシアや二俣川(かながわ県立がんセンター、神奈川県運転免許センター)などを擁している町です。特に二俣川については、神奈川東部方面線が計画段階だったころから分岐駅として想定されるなど、横浜市でも新たな拠点として活躍されることが期待されます。そんな旭区ですが、この区の区役所は二俣川にはなく、隣駅の鶴ケ峰駅(以下、鶴ヶ峰駅)から徒歩5~10分ほどと少し離れた所(旭区合同庁舎)にあります。そんな旭区役所ですが、このほど「旭区役所は鶴ヶ峰駅前に移転新築するのではないか」と言う噂がまことしやかに囁かれています。今回はそう言われる根拠を中心に話し、今後の展望について考えました。
今の旭区役所は何だかんだ歴史が長い
ここで改めて、旭区の成立過程を振り返ります。横浜市旭区は昭和46年に保土ケ谷区(以下、保土ヶ谷区)から分区と言う形で誕生。これは横浜市内の人口増加により、行政区を増やして職員と住民をより近接にしようとしていたことが理由と言われています。そんな旭区ですが、分区後は「親元」の保土ヶ谷区とは全く異なるニュータウン的な雰囲気と共に発展し、現に人口に関しては保土ヶ谷区より多いです。
旭区に何があるかと言えばやはり地元の人にとっては運転免許センターでしょうか。それ以外では町田、戸塚、八王子へのアクセスが良い保土ヶ谷バイパス、日本で初めてオカピの飼育を始めたよこはま動物園ズーラシアがあります。
今の区役所庁舎の現状が問題視されていることは事実
旭区役所の話題に戻りましょう。旭区が誕生した当初は仮の庁舎だったようですが、昭和48年に今の合同庁舎が完成し、増築と新館の建築を繰り返してきました。そんな旭区役所(合同庁舎)についてですが、横浜市は市内全域に点在する区役所(合同庁舎)について、既に建て替えもしくは移転の検討を始めています。
横浜市は、旭区以外でも港北区、神奈川区などの庁舎の老朽化を指摘しており、市としても庁舎の老朽化が放置されている現状に憂慮しているようです。
何故、今移転か
旭区役所が問題視されていることについて、一番の根拠と言えるのは老朽化です。かつての横浜市役所についても2020年を以て移転されたことを考えると、区役所の老朽化はより一層激しいのではないでしょうか。
老朽化もさることながら、アクセスの悪さにも問題があります。今の鶴ヶ峰駅近くにある庁舎については、ほぼ道路事情のみしか見られていないような立地です。しかもバスもそこまで恵まれているわけでもないので余計にタチが悪いと言えます。
旭区役所が◯◯◯◯前に!?
そんな旭区ですが、近い将来、超高立地な場所に区役所を置ける可能性があります。その場所とは、鶴ヶ峰駅前です。「どうしてそんなに場所がピンポイントなの?」と思った方も多いとおもいますが、この説明を聞けばそう言える理由が分かると思います。
今、鶴ヶ峰駅周辺では、横浜市の連続立体交差事業により地下化が決定しており、2023年度中に着工することが確定しており、工期は10年を目安としています。つまり、鶴ヶ峰の地下化が終われば旭区役所も完成から60年近く経過することとなり、ついでに鶴ヶ峰駅前には大きな地上の空間が現れます。都心直通と附随するように始まった地下化プロジェクトにより、旭区は大きく変わろうとしていることは明確。建て替えや移転の話題が取り沙汰されることは自然な話と言えます。
区役所駅前移転説の根拠
鶴ヶ峰駅地下化が都市計画決定される前の2020年より、旭区は横浜市に対しての「要望」としてこんな一節を載せています。
・連続立体交差事業及び鶴ヶ峰駅北口周辺まちづくりと連携した旭区総合庁舎等再編整備の推進
旭区としては駅前への移転をしたいようです。そして、小項目の変化にも注目してみます。
◇これまでの区としての対応
旭区庁舎等の再編整備の検討を進めていく必要があります。(2020)→
鶴ヶ峰駅北口周辺地区まちづくり構想では、(中略)市営住宅跡地等を活用し、鉄道敷地の利活用の可能性も検討しながら行政機能の更新・充実について位置付けました。(2021,2022)
◇提案内容・概算額等
各区の総合庁舎の建替方針の検討を踏まえた旭区総合庁舎の再編に係る調整及び検討(2020,2021)→
1 1960年代~1980年代に整備した9区庁舎の建替えに関する方針検討
2 鶴ヶ峰駅北口周辺のまちづくりに合わせた旭区総合庁舎等の公共施設の再編整備向けた検討費の計上
(2022)
小項目に対して語気は年々強まっているため、合同庁舎にある区役所の駅前移転はかなり望まれているように見えます。仮にこれが失敗しても、図書館と言った公共施設がここに来るかもしれません。
なお、地下化後の都市計画についても動きがあり、横浜市都市整備局の担当者が同じ郊外型の地下駅である下北沢駅周辺を調査したことが報告されています。これは区役所移転とは少々趣旨が異なりますが、このエリアで行われた「まちづくり」と、下北沢駅周辺における地下駅とその上空部の費用負担と財産関係の線引きについてを主として現地調査がなされたようです。
もし、鶴ヶ峰駅北口に旭区役所が移設されたら
旭区役所が鶴ヶ峰駅前に移転されることになれば、鶴ヶ峰駅からわざわざ歩く必要がないのですから、区内の他の駅やバスターミナルを日常的に使う地域に住む人には朗報と言えます。また、市の遊休地から最新型のオフィスビルが作れますし、構造によってはテナント収益も入ることでしょう。そして、ロードサイドにあるボロボロの庁舎は解体できるのです。
しかし、課題もあります。仮に区役所等のソフト面の移転が出来たとしても、旭区役所が入る旭区合同庁舎には公会堂や消防局の機能があり、現状の鶴ヶ峰駅前の道路事情によっては庁舎機能の全面移転は出来ない可能性があります。庁舎の移転の際には、これらについても検討する必要があるでしょう。
おわりに
今回は、鶴ヶ峰駅地下化に関連した横浜市旭区役所の移転について話しました。区役所などの官庁機能とは、民間のオフィスと異なり、その地域を出ることが出来ない、言わばベッドタウンにとっては貴重な「サービス業」と言えます。貴重なリソースであると言うことは、このサービス業の拠点をどうするかと言うことは、今後の都市計画に直結する改変と言っても過言ではありません。
旭区役所の移転に「検討」が長引くことは自然なことかもしれません。
参考文献
◇鶴ヶ峰駅の地下化とは?
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/doro/rittaikosa/rittai/turugaminerenrituHP.html 『相模鉄道本線(鶴ヶ峰駅付近)連続立体交差事業』 横浜市
◇旭区から横浜市への提案項目一覧
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/yokohamashi/ku-shokai/ku-yosan/hanei/h29/08asahi.html (平成29年度。"1" より、区の要望に対して市は現状維持と回答)
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/yokohamashi/ku-shokai/ku-yosan/hanei/r02/08asahiR2.html (令和2年度。"3","4" より、区総合庁舎の一部改修の報告あり)
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/yokohamashi/ku-shokai/ku-yosan/hanei/r03/r3asahi.html (令和3年度。"8" より。大きな進展なし。)
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/yokohamashi/ku-shokai/ku-yosan/hanei/r04/r4asahi.html (令和4年度。"2" より、若干区が食い気味に。)
◇区の資料
https://youtu.be/Wp0uQ4Gvhh0 (旭区デジタルアーカイブ。区役所の映像あり。)
◇横浜市の区役所の現状について
https://hiyosi.net/2021/08/02/wardoffice_rebuilding/ 『築40年超「港北区役所」は建替えなるか、9区の庁舎対象に可能性探る調査』 横浜日吉新聞
◇その他
http://www.minnano-yokohama.com/blog/?p=2139 『鶴ヶ峰駅・鉄道地下化後の新たな街づくり〜他都市好事例を参考に!』 大岩まさかず
http://www.minnano-yokohama.com/blog/?p=2159 『下北沢駅・地下化後の街づくり〜小田急、世田谷区(東京都)、市民の力・長期間にわたる公民連携プレー』大岩まさかず
(横浜市都市整備局への市議の質問、紹介に基づき、整備局が下北沢駅周辺を視察していたことが明かされている。)
2022年5月18日、タイトルを変更、内容追記、参考文献を追加差し替えをしました。