『相鉄グループ「長期ビジョン”Vision2030”」』を見てみよう。
11月25日、相鉄HDが『相鉄グループ「長期ビジョン”Vision2030”」及び
「第6次中期経営計画(2022 年度~2024 年度)」策定について』( https://ssl4.eir-parts.net/doc/9003/tdnet/2052976/00.pdf )を発表しました。コロナ禍における相鉄は今後どんな一手を打つと言うのでしょうか。そして、相鉄の鉄道業の今後とはどんなものなのでしょうか。
見たけどさ
正直、目新しい情報が詰められている訳ではないため、あまり面白さは感じませんね。一応気になることを順に書いていきます。
ホームドアの設置は続行
■ホームドア全駅設置
・2024年度までに海老名駅を除く全駅設置
・2027年度までに全駅設置
まず海老名駅について。海老名駅では相鉄グループ創業100周年を契機に駅舎の建て替えを始めました。しかし、施工主体の一つの東急建設による施工ミスが発覚。新駅舎の完成予定は既に相鉄創業110周年にあたる2027年になっています。海老名駅のホームドア設置が遅れているのはこの工事とセットで行う予定だったからと考えられます。
一方、それ以外の駅でのホームドア関連の設備の新設には積極的です。2020年には海老名を除く全旅客駅でのTASC地上子の整備,設置が完了し、車上子についても8706×10とモヤ以外の全編成に設置、運用されています。また、横浜,二俣川以外の駅でのホームドアの設置は、全て相鉄のみの負担で進められているらしく、このホームドア設置は今後も順調に進むものと見られます。
但し、コロナ禍が原因なのか、当初計画( https://www.sotetsu.co.jp/news_release/pdf/171102_05.pdf )よりも目標は2年遅れています。
グループとして駅務運営体制に言及
■駅務運営体制の抜本的な見直し
■駅改札業務における遠隔管理の導入
・対象改札 本導入時期
・天王町(YBP口) 2021年7月
・和田町、上星川、西谷、鶴ケ峰 2022年7月
■運行ダイヤの見直し
■夜間作業の見直し
■保守点検業務の効率化
駅改札における省力化は予想以上にトントン拍子で進んでいます。2021年11月現在、相鉄では天王町にてのみ無人改札を導入していますが、そこでの業務は全てお客様センターが担当しているようです。これを改札と駅事務室が分離している4駅でも導入すると言うことは、こうした駅事務室の業務の分離は今後更に進むと見て間違いないと思われます。
しかし、ここで少し疑問なのは、何故先の4駅の改札の業務をお客様センターでの対応に切り替えるのか、です。色々と理由が考えられるが、一つあり得るのは「駅事務室にいるバイトの社員の仕事の削減」でしょう。私は相鉄に対しては大して詳しくありませんが、相鉄としては「バイトはその雇用の性質ゆえにどうしても流動的になりやすく、人を雇う度に研修を入れたりととにかくコストがかかる。だからお客様センターにその仕事を委ねてそのコストを省きたいし、ゆくゆくは、事務室の人員削減を図りたい。」と言う意図があるのかも知れません。もっとも、相鉄ではコロナ禍当初まで横浜駅西口五番街改札は有人であったため、この方針転換にはかなり驚いています。
運行ダイヤの見直しと言う記載は正直かなり曖昧な気がします。そもそも、2022年度での東急との直通でダイヤは必ず見直す必要があるからです。しかし、これが優等列車、ひいては「閑散区間」であるいずみ野線の列車の大幅削減になるとしたら…。しかし、既に二俣川には快活CLUBがあり、2023年には東横INNがいよいよ二俣川の地で開店します。その為、0:59二俣川始発の最終湘南台行きのようなホテル難民救済のような深夜の列車の必要性が薄れているのかも知れません。しかし、人口減少の進む日本においてこのことは避けて通れないと言うのも事実であります。これが明言されてしまったのは少々悲しいですね。
そして、「夜間作業の見直し」、「保守点検業務の効率化」についての紹介も少し気になりました。なんなんでしょうねこれ。乗り入れ先のJRと方針と共通化させるのでしょうか。
また、乗り入れ先の拡大についても記載がありましたが、これは東急線との直通の紹介のみの掲載に留まっています。恐らく、乗り入れ先同士での乗り入れの方針は一先ず確定したと思われます。
鉄道以外の部門が今回のメインだった
鉄道についてはこれで全てです。その後は不動産等の別事業の紹介が進みますが、今回は不動産へのアピールが強いように見られました。それでは、そんな不動産業の中から興味深い内容を見てみましょう。
■不動産賃貸業の利益構成の拡大及び沿線外での収益の拡大
■沿線外・海外への展開
■都内での不動産取得・出店の更なる加速
• 都心直通を契機とした展開拡充の強化
■グループ内のノウハウを活かした 国内地方・海外への進出拡充
<国内地方への進出>
<海外への進出>
■ホテル事業
・ 韓国・ソウル3店舗 [運営中]
・ベトナム・ホーチミン
・ タイ・バンコク
・ 台湾・台北 [以上、進出決定済]
■不動産分譲事業
・タイ・バンコク [事業参画中]
遂に、相鉄が首都圏を飛び出して全国及びアジアの不動産業に参画するようです。私としては東急よろしく駅関係の町造りがやって欲しいのですが、流石にそこは東急とそのファンが卸さないのでしょうか。そもそも全国及び海外でホテル業を展開する相鉄が不動産分譲に手をつけなかったことが意外(あのアパグループだってマンション分譲がメインの不動産業ですし、現在も継続して経営しています。)です。
おわりに
今回の案内は、都心への直通が「目標」ではなく「普遍」であり、そのワードとある意味で決別する意志が見られます。海外でのホテル出店や不動産分譲は勿論、国内でも本格的に全国的な不動産事業に乗り込もうとしている発表こそが、今回の意志であり、今の相鉄グループの本質だと私は思います。
相鉄は、数年前のモハ7006に始まり、8701や7755のボックス試験車と言った、全国的に珍しい車両も解体していると言う現実があり、ホテルの一角にある部品類についても「保存」と意見を譲りません。今の相鉄にとっての車両とは、不動産分譲、または過去の相鉄ギャラリーや相鉄本多劇場のようなものと捉えているのでしょうか。今回の案内ではこうしたことに触れられることはありませんでしたが、こうした文化保存への取り組みも一種のCSRでありSGDsの目標に近づける行動であると私は思っています。
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