Web漫画におけるコメントの重要性
だいたいタイトルで落ちていますが、Web漫画のコメントについて。
最近は出版社公式の漫画アプリが増え、「1日に1話」などの条件付きながら漫画を無料で読める機会が増えました。
しかし条件付きだったり、作者に利益が還元されないのではないかという視点で今でも「漫画は買うものだ」という意見もあるでしょう。
これに対して「単行本( or Kindle)では他読者のコメントがつかない」という問題提起をしてみます。他読者のコメントはお金で買えない作品にとっての「財産」と言えます。具体的に作品名を挙げてコメントの傾向を見ていきましょう。
ジャンプ+『バンオウ』
漫画は将棋漫画。コメントは主に奇抜な登場人物への言及。
「観戦してる人たち皆トチ狂ってて草」や、「お兄ちゃん????」など、
読んでいて当然感じる感想が多い。
他方、将棋の内容がいついつの将棋を真似ているとか、専門知識による補足のコメントもあり。
まとめるとコメントの傾向は共感と専門知識。
ジャンプ+『ジャンケットバンク』
漫画はギャンブル漫画。『賭博黙示録カイジ』などのように登場人物が心理戦を繰り広げる。
コメントは「バケモノか?」「それがわかるのすごくない?」といった登場人物の手腕を褒めるものや、”定型文”が目立つ。
作品はギャンブル漫画なのでお金に関わる台詞が劇中にも出てくる。それを借用して「この情報は無料です」と語るコメントがけっこう多く、面白い。
たとえば「来週は休載です。この情報は無料です」「単行本には◯◯のようなエピソードが追加されています。この情報は無料です」など。
まとめるとコメントの傾向は共感とスラング(専門用語)。
ジャンプ+「チェンソーマン」
漫画はバトル漫画。「チェンソーマン」という悪魔に変身できるようになった主人公の物語。
派手だったり大胆な展開が多い漫画なので「そこでそうなるの!?」のような共感を得るコメントとともに目立つのが伏線回収に言及するコメント。
「これって、10話前の……」「めっちゃ◯◯のこと(登場人物が)覚えてるじゃん」など、普通に読んでいると見過ごしている部分をコメントで再確認できることが多々ある。
まとめるとコメントの傾向は共感と伏線回収。
ヤンジャン!『ウマ娘 シンデレラグレイ』
漫画はウマ娘の漫画。ゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』に始まった競走馬の擬人化「ウマ娘」の作品の一つ。
主人公はオグリキャップでゲーム版に比べレースの熾烈さに力点をおいた作品。
それゆえコメントも「こんな展開あっていいのか!?」「調べたら史実のレースもそうだった」「この脚本は神が書いてる」など作品への驚きと史実への驚きがまずある。
ここから広がって漫画では脇役とされるキャラクターの解説をする人もいたり「◯◯はこのレースが生涯最後の1勝になった」、漫画描写を補足する人が目立つ「◯◯の判断がすごいのは鞍上(いわゆる騎手)が△△だからなんだよなぁ」。
まとめるとコメントは共感、驚き、そして専門知識。
おわりに
エセーとしてまとめるなら文章量はこんなものでもいいだろう。
さて、困ったことにこうしたWeb上に残る上記のコメントは「わざわざお金を払って」単行本や電子書籍を買っても読めない。出版社公式アプリで読む必要がある。
単行本や電子書籍は無料で読めるアプリより優遇するため、アプリでは読めない追加エピソードなどもある。それでもすでに書いたような、気合の入った読者コメントは漫画アプリの魅力の一つと言って良いだろう。
こうしたコメントは、やはり漫画を無料で読めるようにしたことがその下地となっている。コミック購入者限定コメントコーナーが仮にあっても、書ける人が少ない。数が少ないということは必然「面白いコメント」「詳しいコメント」も減ってしまう。
現状の漫画アプリは他の人に評価されたコメントを優先表示している。おかげで、漫画アプリのコメントは「コメントの上澄み」を読むことができる。上澄みだけ読めるならコメントは多いに越したことがない。
正直な所、私はこうしたコメント群が単行本の「付録」の価値を上回っていると見ている。他方、このコメントから資金を回収することはできない。
すでに書いたように、漫画の無料公開によって大量のコメントがつき、大量のコメントがつくから面白いコメントが蓄積される。
もしこれでコメントの質が劣悪だったら私も「マンガアプリの良さは少ないので、単行本を買おう」と書く所だ。しかし私の意見は逆な訳である。
似たような現象はニコニコ動画で確認できる。ニコニコ動画は動画の上を視聴者コメントが流れる。感覚的には上記マンガアプリのコメントに近い。
そしてこのコメントは価値があると見られている。
このように、無料公開から生まれるコメントに価値を認める傾向があるようだ。
私自身はマンガアプリのコメントが見れることにお金を払ってもいいと考えている。しかしそのコメントは無料でないと生まれないものなのである。