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留学先の外傷医療の実情
先ほどEURO2024 のドイツVSハンガリー戦が終わりました。
ドイツ開催であり、非常に盛り上がっている感じがします。
この田舎町でも駅前の広場にスクリーンが用意され、パブリックビューイングで賑わっています。本大会は今のところドイツは好調で、みんなの機嫌は良くなりそうです。
さて、留学を開始してから2カ月が経ち、何となく留学先の様子もわかってきたので、今日は自分の留学先の実情について書こうと思います。
私の留学先は27?ある大学病院のひとつで、なんでも、大学病院がある市の中で一番小さい市とのことです。
私が留学している科は整形外科ではなく、外傷外科になります。
日本とシステムがだいぶ違うため、自分も完全には理解していないのですが、私の留学先には(多分ドイツ全体?)いわゆる救急科がなく、救急医なるものはいないそうです。
よって、外傷の救急患者は外傷外科の医師たちが初療します。外傷外科の医師は日本でいうところの外傷専門の救急医+外傷専門の整形外科みたいな立ち位置だと思われます。よって、腹部や胸部、頭部の外傷がある場合、それらの専門には外傷外科の医師がコンサルトします。
入院後も外傷外科のレジデントが中心に入院患者を管理しているようですが、私はあまり入院患者を診る機会がなく、ICUの外傷患者を誰が中心に診ているのかなどいまひとつよく分かっていません。
ちなみに整形外科は別で存在しており、彼らは変性疾患を中心に治療しているようです。
朝の始業はとっても早く、7時前にICUを回診し、そこから朝のカンファを行います。カンファはドイツ語なので、画像と会話のトーンで大体の内容を想像しています。上の先生が怒っている場合は、なんで帰したんだ!とか言ってるのかななどと想像しています。笑
手術は大体8時くらいから1件目が始まります。
私のいる施設は、教授が2人、Oberarztという日本でいう講師?が7-8人、レジデントが15人くらいいます。
手術は基本、講師1人、レジデント1人の組み合わせで行っており、よっぽど簡単な手術以外はほぼ講師が執刀します。なので見ている感じは、レジデントの執刀はほぼなく、たまに年次の上のレジデントが執刀していますが、完遂することは稀です。良いか悪いかはさておき、多くの外傷をレジデントにやらせる日本とはだいぶ考え方が違います。
手術は外傷関連がほとんどですが、カバーの範囲が非常に広いです。具体的には脊椎外傷(頸椎も腰椎も前方も後方も)、スポーツ外傷(外傷性腱板断裂も膝の靱帯半月板も)、外傷後の変形性関節症に対する人工関節(ときには腫瘍用も)、外傷後の変形治癒(創外固定、骨切り)など日本では他の専門にお願いすることが多い領域も自分たちで完結させています。また、手の外科領域に関しては、変性疾患も治療しています。唯一、マイクロを要する領域は治療しておらず、また大学病院なのに形成外科がいないらしく、とっても困ると嘆いていました。
手術室は外傷外科専用の部屋が2室あり、日中は2列で手術しています。
それぞれの手術室には前室が2部屋あり、前室で麻酔をかけて、患者を入れ替えます。さぞ、効率的に手術をやっていると思われるかもしれませんが、残念ながら、入れ替えはとってもゆっくりです。その原因は看護師等の医療スタッフの不足だそうです。ドイツは慢性的に看護師が不足しているそうですが、それに加えてCOVIDで大量に離職した人たちが戻ってこず、病棟、手術室ともやりくりが大変とのことです。また、朝の始業が早いので、15時に帰るシフトの看護師たちがおり、15時を超えた段階で、進行具合によっては、あらかじめ組まれている手術でも容赦なく翌日以降に飛ばされているのを度々目にします。金曜日はみんな早く帰りたいからか、よく手術を飛ばしています。。
夜間休日はレジデント2人、講師1人の3人が泊まっており、ERと緊急手術を担当しています。日中に手術がたくさん出来ないためか、夜間に頚部骨折や転子部骨折等は片づけている印象です。多くの日本の病院と違い、当直明けは帰れるようです。
レジデントは日ごとにシフトでER担当、病棟担当、手術担当に分かれていますが、年次の低いレジデントは手術以外を担当することが多いようです。病棟ごとにチームで診ており、日本のような担当医制ではないようです。
レジデントに関しては、始業も早いが、帰りも決して早くないそうです。そして手術の執刀も少ないので、結構修行要素が強いなと感じます。(日本と比較すると給料はそこそこ貰えるようですが)
私はというと、今のところほとんど手術室で過ごしています。骨盤・寛骨臼や人工関節など、3人目が必要な手術で術野に入らせてもらうことが多いです。手術と手術の間が長く、4月はひとりだったので、時間を持て余していましたが、5月からは各国からのフェローが数人来ており、各国の違いなどをおしゃべりして楽しく過ごしています。たまに夕方からの長い手術に入ると、夜遅くに帰宅になることもありますが、それ以外は16から17時くらいには帰宅しています。それでも5時起きなので、疲労感はけっこうあります。笑
今日は長くなってしまったのでこのへんにします。
詳しい手術の違いなどはまたの機会に書こうと思います。
今宵は試合終了後から街中の飲み屋で唄い続けているドイツサポーターたちの声を聴きながら眠りにつきます。