偏愛本紹介1月 大河な本
明けましておめでとうございます。
(…まだこの挨拶使っていいですか?)
年末年始はいかがでしたか?
私の年末ジャンボは、9000円購入3900円のリターンというしょっぱい結果でした。22年最後をそんな結末で締め、23年の今もなおWi-Fiのない実家に帰省し、読書と皿洗いから一年を始め、気が付けばもう一月も半ば。
初詣で「今年は●●できますように」と大きな目標を立て心意気も新たにスタートを切った人も多いのではないでしょうか。一年の始まりはなぜか大きなことを考えやすくなりますよね。
そこで今日はスケールの大きな、大河を感じる本をご紹介。
華竜の宮
『日本沈没』ならぬ「世界沈没」後の世界を、地球の動向、人間を含めた動植物の変化、紛争と政争等果てしないスケールで描いた日本SF大賞受賞作。
あらすじを見て、「おもしろそー!!!」と思う人と「てんこ盛りで読めるかな…」と思う人に分かれると思います。
前者の人、その直感は間違いないです。いますぐ読むのだ。
後者の人、たしかに内容の充満度がすごいのでさらっと読める本ではありませんし、自身の想像力を極限まで駆使して読む体力のいる作品です。でも読む価値はあります。脳が喜びで爆発するような体験ができますよ。
絶賛の嵐だった作品だけに数多の素晴らしい書評がネットで気軽に読めるので、私からは2つの胸熱ポイントだけご紹介します。
①魚舟の発想がすごい
本書以前に刊行された『魚舟・獣舟』が初登場。本書ではこのように記載されています。
さらっと新しい人類形態が登場し、それに伴う新社会が誕生しています。なにをどうしたらこんな発想ができるのでしょう…。
ちなみに生まれ落ちた時に人間と離れ離れになり、野生化した魚舟は物語の要素としても非常に重要なキーです。
②アシスタント知性体
陸上民は5歳くらいになると、アシスタント知性体を親からプレゼントされ、自身の思考補助パートナーとして生涯利用する。
主人公青澄と、彼のアシスタント知性体マキの関係性はバディものの至高にも思えます。
安心してください。クライマックスではありません。このパートでまだ上巻の半分もいっていません。
つまりこんな素敵な文章がずっと続くのです。ほうら、読みたくなるでしょう?
天冥の標シリーズ
日本SF大賞受賞の全10巻17冊の超大作。1000年のスペース・オペラは圧巻としか言いようがなく、巻ごとに独立しながら(5巻くらいまではどこから読んでも大丈夫)脈々と続く物語がある、まさに大河な作品です。
あまりにも毎巻趣が異なるので、ちょっと公式のあらすじを並べてみます。
はい、全部同じシリーズです。
1巻でこの舞台世界の大きな謎を提示しつつ、感染症が発症する起点たる2巻、そこから数百年を少しづつ進め、8巻以降は1巻の直後からという構成。
2巻で現れる90%を超える致死率の感染症は、完治しても体内に残り、垂直感染して子々孫々まで感染者となります。この性質により激しい差別の歴史が始まり、1000年の宇宙進出の歴史に影を落とす姿は、ハンセン病やコロナを経てきた今、確かなリアリティを感じ…。
あまりのスケールに、頭がパンクしそうになり、付属の年表を眺め読むことも多かったですが、補って余りある充足感。
種として生き残ること、個として人生を生き抜くこと。読みながら、自分がそんな”大河の一滴”として存在していることを改めて実感します。
善悪を越えて、憎悪を乗り越えて、先の未来を掴みに行く千年史。
ぜひご堪能あれ。
Unnamed Memoryシリーズ
WEBで読んでいた口なので、気が付けば小説が刊行され、大人気になり、23年にはアニメ化もされるようで…と感慨深いです。
1-3巻までがACT1、4-6巻までがACT2、そしてその後の物語として現在2冊が刊行済み。
なぜこの本が「大河」なのかを語るとネタバレになりそうなので、勝手に進退窮まっていますが、本作はまだ続いているシリーズ、作者の容赦のなさが今後どう反映されるか戦々恐々です。
人魚の肉を食べたことで不老不死になってしまう八百比丘尼のお話は、昔話や下敷きにした多くの創作物で耳にしたことがあるかもしれません。
一定の長寿が約束された現代では、不老不死は魅力的な存在ではなく、死ねない呪いとしての側面がより強く人を引き付ける設定かと思いますが、本作でもそうした”時を越えていく”存在が現れます。
本編6作まで読んで、ぜひ人が人として背負い進まなければならない何かへ、思いを馳せてみてください。
と、スケールの大きな書き方をしましたが、本シリーズのもう一つの魅力は比翼連理たる主人公カップルです。こちらもぜひお楽しみに。
終わりに
いかがだったでしょうか?
一年かけて読んでいただいてもよいくらい密で量のある作品群を今回はご紹介してみました。
新たな年が始まり、この一年はどこへ流れていくのでしょうか。
未来から見れば、ある一地点でしかない今日を、精一杯生きようと感じられる、そんな思いを本を通じて共有出来たら嬉しいです。
今年もまた、よい本との出会いがありますように。願わくばその中に弊社の刊行物がありますように…!
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