映画ファンはもう絶対観て! 天才・二ノ宮隆太郎監督の新作『若武者』始まりました!
U-NEXT映画部・林です。New Counter Films第1弾作品『若武者』、ついに劇場公開されました。世界同時公開、そして映画館に行きづらい方にも今すぐご覧いただけるように、U-NEXTでも税込1,900円で配信開始しています。(※New Counter Filmsについては後述します)
『若武者』を無理矢理にジャンル分けすると、青春映画、ということになるのかもしれませんが、通常のザ・青春映画とは全く違っていて……だから一言でのご紹介が本当に難しいのですが、ただただ、凄まじい映画です。
とにかく、感情が動かされます。凪ではいられず、必ずや粟立ちます。
今が旬、そしてこれからさらに羽ばたいていく大注目の若手役者3人(坂東龍汰、髙橋里恩、清水尚弥)が主演。メガホンをとったのは、自ら強烈な印象を残す俳優でありながら、多方面から天才監督と評される二ノ宮隆太郎。彼のオリジナル脚本による作品です。
この映画、本当に何なのでしょう? 会話のスタイルもテンポも喋り方も被写体の位置も、主人公たちがやってることも言ってることも、何もかも唐突で違和感があって引っかかることばかり。何がどうなってこんなことになるの? これ、自分が生きてるのと同じ世界の話? もしかして違う世界?
個人的に1回目は正直かなり面食らい、そしてだいぶ胸糞悪かったです。にもかかわらず、なぜか早くも4回観てしまいました。クセになるのです。
ルッキズム、エイジズム、性差別、LGBTQ差別……偏見、決めつけの全部乗せ。人の不幸を喜ぶ心。冷笑主義。確かに、人間誰しも心の中に闇を持ちます。あるいは、闇を持つ時はあります。その闇がどういうわけか全部剥き出しになって、臆面もなく3人の若者の口をついて出てしまっているような映画です。だからこそ、彼らが好青年としてちゃんと労働しているシーンが最高に面白くて怖くて、好きでした。
僕自身はもうだいぶあの頃の感覚を忘れているし、時代の風は急激に優しい方向へ、全てを配慮する方向へ吹いているけど、二十歳の頃、世の不条理とか、自分のエゴとか、それこそ自他共に皆が持つ心の闇とか、周りの人間の怒りの感情への恐れとか……なんとなく気分がすぐれなくなるこうした「人間の課題」的なことばかり一人暮らしの安アパートで考えていたなぁということを、この映画は鮮明に思い出させてくれました。
一方で現在の自分には、岩松了、木野花、豊原功補扮する大人側の言動がだいぶしっくりくる! 僕はすっかり、老武者になったってことですね。
それにしてもこのベテランお三方の芝居が本当に素晴らしいのです。3人の若武者俳優との対峙シーンも痺れるし、そこも意図的だなぁと思いました。
そして、ここまで感情が揺さぶられる理由として忘れてならないのは、役者たちの芝居の力は当然のこととして、画と音のレベルが非常に高い点。監督の感性の部分とスタッフの技量が、高次でバランスを取り合っているのだと思います。
物語は極めて静かに、淡々と進んでいくのですが、画面全体から、ずっと何かが暴発しそうな不穏さが横溢しています。これは、二ノ宮作品が常に纏っているもの。ワンシーンワンシーンに情念?怨念?みたいなものが充満していて、快と不快を問わずなぜか目が離せなくなる。被写体の向こうに映るのは、僕らが普段、何とも思わずに見ている日本の最大公約数みたいな景色なのに、この人のフィルターを通したら、すべて強烈な意味を持ったものに見えるのです。
画の力の強さは、劇中曲『Wakamusha』のMVからも十分感じ取っていただけるかと思います。
80年代ハリウッド映画のように、シンプルに楽しくてわかりやすい映画も僕は大好きですが、その対極にあるような二ノ宮監督の映画も、定期的に摂取したくなります。これもやはり、映画による悦びです。二ノ宮ライブラリーは、数十年後の若者たちを救うものになるかもしれない、なんてことも思います。
U-NEXTでは二ノ宮監督の過去作も取り揃えていますので、ぜひこちらもご覧ください。
二ノ宮隆太郎監督フィルモグラフィ
『枝葉のこと』(2017)
『お嬢ちゃん』(2018)
『逃げきれた夢』(2022)
でも今はまず、『若武者』を観てほしい!
上映館が近くにある方は映画館で。そうでない方はU-NEXTで。とにかく、感情は動くし、何かは残ります。そして確実に、今、観るべき映画です。
New Counter Filmsの挑戦
最後に、映画『若武者』を生み出したレーベル「New Counter Films」について。
気鋭の映画制作会社コギトワークスさんが企画・立案し、我々U-NEXTが賛同・協力する形で立ち上がったプロジェクトです。
詳しいことは、下記記事にバッチリ書いてありますが…
重要なポイントをかいつまんでお伝えすると、こういったところ。
監督のやりたいことや作家性を重要視しつつ、プロデュースワークをしっかり効かせる!
自ら世界に届ける→海外でもある程度回収の見込みが立てば、実写邦画の世界は変わる!
スタッフ・キャストへの成功報酬システムを採用→作り手の皆さんが夢を持てない状況を打破!
U-NEXTでの高額同時配信→いきなり見放題配信するのではなく、映画館と同等の金額(税込1,900円)を頂戴して、作り手にしっかり還元!
そして、レーベルミッションは「誰もが観たい映画ではなく、誰かが観たい映画を作る」。『若武者』はまさにそれに相応しい作品です。
大げさに言うと、日本映画界が抱える課題を解決する端緒になれば…というチャレンジです。今後のためにも、まずは『若武者』、多くの皆さんにご覧いただければと思っています。好きでも嫌いでもいいので、映画ファンの皆さんは、もう絶対に観てください!!!よろしくお願いします!!!