この映画を部屋に飾りたい。画面デザイン偏愛映画2024夏。(その前にちょっとだけ歌舞伎の話で失礼します)
学生時代から京極夏彦さんの百鬼夜行シリーズ(またの名を京極堂シリーズ)のファンでして、一方で、小学校の時に母親に手を引かれて「親子で楽しむ歌舞伎鑑賞教室」に行って以来歌舞伎が大好きでして。そして今この時、この8月!歌舞伎座では京極夏彦作・新作歌舞伎『狐花 葉不見冥府路行』が掛かっております!!!! まさに推しと推しが繋がったってやつです。感無量です。もちろん行きました。ひたすらに耽美でおぞましく(京極さんですから!)、そして哀しいお話でした。ええ、本文とは関係のない、ただの自慢ですスミマセン映画部の宮嶋です。
毎年8月の「納涼歌舞伎」にはだいたいひとつはミステリーやホラー系の演目がかかるので、比較的とっつきやすいですよ、とお伝えしておきます。
さてさて、映画ジャンルで最近わたくし的ニュースとしては、アカデミー賞作品賞、脚本賞にノミネートされた『パスト ライブス/再会』のOnly On U-NEXTでの配信スタートです!
長い長い年月を経た男女のそれぞれの人生、心の機微の描写という面でも心から素晴らしい作品なのですが、私、この作品のビジュアルが猛烈に好きなのです。美しい。美しすぎます。しかも登場人物の心象をそっと伝えてくれて心つかまれる…すべてのシーンを切り取って部屋に飾りたい…。
その好きっぷりについては劇場で拝見した時にnoteに鼻息荒めに書いておりますのでお時間ありましたら。
個人的には映画っていろんな見方で楽しめるのが良いと思っていて、シンプルに遊園地みたいにワクワクどきどきする作品も、泣ける映画も笑える映画も、発見や学びがある映画も、社会に問題提起する映画も、それからひたすらに動物や子どもたちが可愛い映画も、大好きです。
が、とりわけ好きなのが画面デザインに「ふわぁぁぁ!なんてうつくしい!!!」と感動できる映画でして、『パスト ライブス/再会』はストーリーの共感性だけではなく、画面デザインという文脈でも私の心を鷲掴みなのです。
というわけで今日は、私が「切り取って部屋に飾りたい偏愛映画」を、『パスト ライブス/再会』に加えて5作品、紹介させてください。例えばどのお部屋に飾りたいか、という私の妄想もあわせてどうぞ。
『運命は踊る』(2017)をリビングに飾りたい
ご存じでしょうか、第74回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員グランプリ)を受賞した作品です。ミステリータッチで進行するドラマと呼応するかのような緊張感のある室内カットの連続におもわず唸ることうけあい!
後半の主な舞台となる戦地の検問所のシーンも、予想のつかないアングルの連続で緊張感が継続し、目を離せません。どれも考え抜かれた完成度の高い構図、つい弛緩しがちなリビングルームに飾ってピリッとしたい気分です。
『2重螺旋の恋人』(2017)をゲストルームに飾りたい
緊張感があると言えば、こちらも。フランソワ・オゾン作品のなかでは語られることが少ない作品かもしれません(私見です)。
かなりフェティッシュな作品で、冒頭のシーンから人の体への視線が独特なのですけれど、サムネイルにもなっているこのカット、同様の構図が複数回使用されます。このパッと見は凡庸にさえ見えるシンメトリーの“敢えて”の構図の使い方が強烈で、精神分析医とクライアントであるところのふたりの関係性も暗示していて、非常に興味深い。奥に鏡があるのも、意味深なんですよねぇ!
表の顔と、あわせ鏡だからこそ伝わるホンネ。あえてゲストルームに飾りたくなる作品。まぁ、ゲストルームなんてないのですけれどね、わが家。
『マイ・プライベート・アイダホ』(1991)をスマホの待ち受けにしたい
こちらは上記の3作品のような、ピシッとキマった画面デザインではなくて、どちらかというと揺らぎがあって。ふわふわと定まらないふたりの少年たちが男娼をしながら行く、ある意味で現実逃避の旅の風景。どこか掴みどころのない夢をみているような人生のあわいを映し出すような曖昧さが本当にきれいで。若きリヴァー・フェニックスとキアヌ・リーヴスの魅力もあって、忘れがたい美しさです。
このふたりの小さくて繊細な世界を、手元の小さな世界に大切に置いておきたい。ので、部屋ではなくスマホの待ち受けにしましょうか(といいつつ、実はだいぶ前からロック画面に設定しています)。
『ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ』(2001)をドレッシングルームに飾りたい
オールタイムベストとか最愛映画を訊かれると好きな作品が多すぎて選ぶのがとても難しいのですが、これを挙げることが多いです。犬の名前の候補に「ヘディ」も入れましたし、ミュージカルも観に行きました(私が観たのは山本耕史さん版ヘドウィグ)。なくなってしまった渋谷の映画館シネマライズの思い出とも繋がっています。というわけでただただ好きな作品なのです。プラトンの「愛の起原」と絡ませたテーマも、ヘドウィグが魂から絞り出すような音楽も、ド派手な美術も、キャストも、全部。
これは自分のアイデンティティを構築する場所という意味で、ドレッシングルームに。いや、ドレッシングルームないんですけれどね、わが家。
『ラストナイト・イン・ソーホー』(2021)を寝室に飾りたい
最後はもう「寝室と言えば!」みたいになっちゃいますが!
不穏で怖くて、そして美しい映画です。画面の作りこみ方でいうと、エドガー・ライト監督は『ベイビー・ドライバー』にしてもそうですが、構図とか画面デザインというよりも、動きの見せ方やカメラワークのメリハリにこだわられてるのかなっていう気がしていますし、切り取って絵になるというよりも映像だからこそ映える感じもありますが。特にこういうの観ちゃうとですね…↓
でも、構図にもハッとするようなカットも多くて、60年代ロンドンの不穏さをしっとり(ねっとり?)と見せるシーンは出色です。間違いなく美しくて恐ろしい夢をみられるはずです!笑
以上、私の画面デザイン偏愛映画でございました。
いつか日本映画版も出来たらいいなと思いつつ、毎回noteのターンが回ってくるとその日の思い付きのテーマで書いてしまう計画性のなさので、いつになることやら…。とはいえその時まで引き続き映画をたくさん観て楽しんで、引き出しを充実させておこうと思います。
Copyright 2022 © Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved/©2017 Pola Pandora , Spiro Films , A.S.A.P. Films , Knm and Arte France Cinema/©2017 - MANDARIN PRODUCTION - FOZ - MARS FILMS - PLAYTIME - FRANCE 2 CINÉMA - SCOPE PICTURES / JEAN-CLAUDE MOIREAU/© New Line Productions, Inc./©2000 FINE LINE FEATURES. ALL RIGHTS RESERVED/© 2020 Focus Features LLC and Perfect Universe Investment Inc. ALL RIGHTS RESERVED.