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最近の私的“みっけもの”。映画、映画、ドキュメンタリー映画、映画本。

9月までは結構暑い、っていうことは知ってた。でも暑すぎやしませんか、今年!先日NHK「クローズアップ現代」(U-NEXTでも配信中)で「気候変動関連死」について採りあげられていて、本当にいのちに関わるところまで来ちゃったのかぁ、と。ここで踏みとどまって、われわれの“暑いけれど楽しい夏”と地球の未来を守っていきたいものです。映画部の宮嶋です。

そんなわけで暑すぎてあまり活動的になれていなかったりもしているのですが、相変わらずエンタメ摂取だけはしております。

特にこの夏の日本映画界隈、話題作『ラストマイル』の38.5億円突破のニュースや、『ナミビアの砂漠』『ぼくのお日さま』などフレッシュな若手監督の作品が出色だったり、ミニシアターから『侍タイムスリッパ―』が大規模拡大公開されたりと(『カメ止め』以来と現象のこと)、グッドニュースが続いて嬉しい限り!

そんな中で、私が最近観たラインナップから、いわゆるメジャー作品ではないけれど「見つけちゃったなぁ!」「いいもの観たなぁ!」と思った作品を備忘録的にリストアップしてみます。読んでくださるかたの心に「お?気になるぞ?」と引っかかる作品があれば嬉しいです。


映画『ヒューマン・ポジション』/劇場公開中

作品公式HP:https://position.crepuscule-films.com/

ノルウェーの映画なんですが、とにかくショットが端正(大好き画面デザイン偏愛系映画です)!言葉での説明は少なく、でも話が進む中で過不足なく情報が与えられ、だんだんとキャラクターへの理解がうまれる、おとなの映画です。

人間の営みを淡々と映し出すタイプの作風ですが、主人公が職場復帰したばかりのジャーナリストということもあり、彼女の仕事を通して、そして取材対象を通して、「人の暮らしと社会」「人のありかたと制度」の接点がじんわりと、彼女の生活と地続きのものとして、そっと浮き上がってくるのも良いです。

そしてこのポスタービジュアルの素敵さ!配給のクレプスキュールさんは世界からまさに「みっけもの」を見つけて日本に紹介してくださる配給元さんなのですが、加えて宣伝物のクリエイティブもいつも唸るほど最高なのです!


映画『レオノールの脳内ヒプナゴジア』/配信中

U-NEXT作品詳細ページ:https://video.unext.jp/title/SID0148729

配信中映画からはこちら。サンダンスで審査員特別賞に輝いたフィリピンのコメディ映画です。

このポスターも、何ともシュールで可愛いでしょう!中身ももちろん、奇想天外というかなんというか…

ストーリー
かつて映画監督として活躍した72歳のレオノールは、ある日落下してきたテレビが頭に当たりヒプナゴジア(半覚醒)に陥ってしまう。未完のアクション映画の脚本を執筆中だった彼女は、フィクションと現実が交じりあった物語の世界へと入り込んでいくが…。

U-NEXT作品詳細ページより

ということで設定自体は既視感があるものなのですが、リアルと、劇中劇と、死者たちと…境界線があいまいなことでメタ目線にも揺らぎがあって、先の読めなさが楽しい!メインシークエンスのざらっとした映像の質感も、ラストに近づくほど効いてきます。

しかも72歳のおばあちゃん主人公、自分が書きかけているアクション映画の世界観の中でオロオロと逃げまどったり、武器を手に戦ったり、いやいや違うなとシナリオを書き直したり…笑

そのすべてが愛らしいのです!

脚本・監督のマルティカ・ラミレス・エスコバルはこれが長編第一作とのこと。実は都会的な会話劇も撮れそうな予感もさせてくれているので、次はどちらに向かうのか?注目したいです。

そして、“Leonor Will Never Die”という英語題に『レオノールの脳内ヒプナゴジア』という邦題をつけたかた!好きです!!

ドキュメンタリー映画『場所はいつも旅先だった』/配信中

U-NEXT作品詳細ページ:https://video.unext.jp/title/SID0077140

あの、マイリスト、新規入荷作品をどんどこ追加しちゃっていて、ちょっと前に観たかったものがずんずん奥に行っちゃう現象ありません?私はあります。これ、それでした。

何気なくSNSを見ていたら、どなたかがこの映画のことをつぶやいてらして「うわー、マイリストに埋もれてる子だ!今が観るべき時!!」となった次第です。

COW BOOKSの松浦弥太郎さんの監督作品。ご自身がカメラを携えて撮られたのであろう、いくつかの旅のドキュメンタリーです。

ご著書はもちろん拝読したことがありますが、映像も撮られるのね、と思ったらこちらが初監督とのこと。でも、さすがです。目線に感性の豊かさがあふれているし(私なら見逃してしまいそうな美しさがたっぷり)、心惹かれたものを撮るということに慣れていらっしゃる感じがするし、そして何より、旅を、旅人であることを愛していることが伝わるんです。そうだ、「旅行」じゃなくて「旅」って感じがするんだよなぁ!

私個人としてはあまり旅にでるタイプではなくて、というか、犬と暮らすようになってから「できるだけ犬を置いていきたくない」という理由で国内しか行かなくなってしまったのですが、さすがにこの作品には旅心を刺激されてしまいました。観光とか、目的のある旅行じゃなくて、純粋に「旅」がしたくなる映画です。


映画本『ウィメンズ・ムービー・ブレックファスト

出版社公式HP:https://www.filmart.co.jp/books/978-4-8459-2320-5/

めっけもん、というにはテッパンかもしれません。シネフィル御用達、信頼のフィルムアート社さんから出ています。こちらの映画ガイド!前作『USムービー・ホットサンド』もそうでしたが、今回も情報量が常軌を逸しています(誉めてます)!

今回は「女性」というキーワードで、映画の中の女性キャラクターを「恋愛」「青春」「仕事」などさまざまな側面から、映画の作り手としての女性監督を映画史のなかから線で紹介、そして映画の外側からはキュレーターや批評家といった切り口で紹介。

編者であるグッチーズ・フリースクール降矢聡さん・吉田夏生さんのおふたりはもちろんコラムや論考の執筆陣も豪華ですし、パッと数えたところパリテになってるのも嬉しいところ。

今までイマイチ食指が動かなかった作品も、こうして自分と地続きの「女性」という切り口で紹介していただけると「なるほど、そういう見方ができる作品なのね!」となるので可能性が広がって楽しいです。

一気読みしましたが、知っている作品についてはともかくとして、未見の作品についてはこの本を読んだから「わかった」というものでもないので(映画本ってそういうものですよね、やはり映画そのものを観なければ!)、これをベースとして興味が惹かれたものから観ていきたいなと思っています。



さて、ちなみに、というほど小さな話ではないのですが、というか、かなりどでかい話なのですが、われわれU-NEXT、「Max」との協業を発表いたしました。

洋画はもちろん、海外ドラマ、ドキュメンタリーなど、今までに増して豊富なラインナップでお届けできるようになります。

エンタメファンの皆さんと素敵な作品の出会いの場を作れるよう、引き続き頑張ります。どうぞご期待ください!


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