色褪せない名作『スワロウテイル』

2021年11月11日 18:26

こんにちは！映画部・齊藤です。

先日11月6日にとある音楽LIVEがU-NEXTで独占生配信されました。
その名も『YEN TOWN CLUB presents 映画「スワロウテイル」25th Anniversary YEN TOWN BAND SPECIAL LIVE in KURKKU FIELDS』。

そうです。いわずと知れたあの伝説の映画『スワロウテイル』に登場する
架空バンド「YEN TOWN BAND」が25年の時を経て、1日限りのライブを開催したのです。
今回のLIVEは『スワロウテイル』の監督を務めた岩井俊二監督指揮のもと、
小林武史氏のプロデュースするKURKKU FIELDSの会場で、CHARA氏他豪華アーティストを迎えたスペシャルLIVEとなりました。

ある日のこと、本LIVEのプロモーションについて社内会議を行っていた時でした。
このLIVEをどのようにして映画ファンに届けるのか、熱い議論が行われていた最中、映画部・部長の林さんから私に対してこんな一言が…。

林さん「ところで、『スワロウテイル』って観た？」

前置きで偉そうなことを語っておきながらも、
実は私、『スワロウテイル』を観たことがありませんでした。

林さん「それならLIVEもあることだし、『スワロウテイル』についてnoteで書いたら面白いね！」

と、そんなきっかけで今回筆を執らせていただいたのです。
林さんは本作の大ファンだそうで、当時20代だった林青年は今は亡き吉祥寺バウスシアターで本作を鑑賞し、大感銘を受けたとか。
吉祥寺バウスシアターといえば、地元ということもあって閉館するまで私自身もよく足を運んだ思い出の映画館の一つです。
小学校1年生の時、初めて自ら「観てみたい！」と父にお願いし『ハリーポッターと賢者の石』を観に連れて行ってもらったのはいい思い出。

奇しくも当時の林青年と同年代になった今、バウスシアターの件もあり、
「これは何かの運命では…？」と勝手にシンパシーを受けたのです。

部屋の明かりを暗くし、TVの音声出力をサウンドバーに切り替え、近所迷惑にならない程度の爆音に。気分はさながら「バウスシアター」(自宅)で鑑賞いたしました。

むかしむかし
円が世界で一番強かった頃
その街は移民たちであふれ
まるでいつかのゴールドラッシュのようだった
円を目当てに円を掘りに来る街
そんなこの街を移民たちはこう呼んだ
円都ｰイェンタウンｰ

伊藤歩さん演じるアゲハの語りから始まる本作。
イェンタウンを舞台に一癖も二癖もある個性的な登場人物たちが錯綜する群青劇。

鑑賞後、放心いたしました。
様々なメッセージが劇中にはあったと思いますが、それ以上に印象的な映像や音楽に圧倒され、感想という感想が直後には出てこなかったのです。
鑑賞前は熱量の冷めないうちに観終わったらすぐに執筆しようと意気込んでいたものの、整理するための時間が明らかに必要で、そのまま「一体なんだったんだあの映画は…」と就寝いたしました。

荒削りの映像やざらついた音楽、イェンタウンの住人の独特な言語、全てが私にとって初めての体験で、当時バウスシアターで鑑賞した林青年もきっと同じであったのだろうと思いを馳せながら、「見終わった後、しばらく席を立てなかったよ」と林さんがおっしゃっていたことを思い出しました。
言うなれば「不思議な夢を見た」感覚に近いんでしょうか。
鑑賞後数日たった今もこうして文字を打ち込んでいるのですが、邦画でここまでの唯一無二の映像体験をしたのは初めてでした。

まるで東南アジアのスラム街のようなイェンタウン。日本とは思えないような舞台ですが、劇中では車を少し走らせると同じ世界線に当時の秋葉原や新宿の都会の街並みがありました。
ありえない設定と分かりつつも、その描写がどこかリアルで、少し恐怖さえ感じたのです。

イェンタウンに住む人々の生活水準は決して高いものではありませんが、
それでも彼らからは崇高な精神とあふれ出んばかりの強力なバイタリティーが画面を通じてひしひしと伝わってきました。

鑑賞した人と語り合いたい映画に、また一つ出会うことができました。

『YEN TOWN CLUB presents 映画「スワロウテイル」25th Anniversary YEN TOWN BAND SPECIAL LIVE in KURKKU FIELDS』を見逃した方は今週土曜日11月13日21時半までチケット購入できますので、見逃し配信でぜひご覧ください！

岩井俊二監督監修のLIVEティザー映像も要チェックです。

U-NEXTでは『スワロウテイル』のみならず、岩井俊二監督過去作品も配信中ですので併せてお楽しみいただければと思います。