石のまち糸魚川〜ユース世代が守るジオパークの魅力〜
糸魚川ユネスコ世界ジオパークは、新潟県糸魚川市をエリアとするジオパークであり、日本で初めて世界ジオパークに認定された場所(のひとつ)でもあります。日本を二つに分ける断層である糸魚川―静岡構造線からは日本列島形成の歴史を知ることができ、雄大な山々との標高差による生態系も見所の一つです。また、地球の表面を覆うプレートの沈み込み帯でしか形成されない岩石であるヒスイが産出します。ヒスイは2016年には日本鉱物科学会によって国石に指定されました。古くから糸魚川の人々はヒスイに価値を見出し使用していて、世界最古のヒスイの文化発祥地でもあります。
北アルプスの山々や日本海の美しい景色を誇る糸魚川は東京から(北陸新幹線で)約二時間とアクセスが良く、文化・歴史・地質を学ぶことができ、学校におけるジオパーク教育に積極的など魅力的な点がたくさんある点から、今回足を運ぶことを決めました。
この度、糸魚川ユネスコ世界ジオパークにおけるユースの関りと今後の展望について、糸魚川ジオパーク協議会事務局の鳥越様と、フォッサマグナミュージアム学芸員の郡山様にお話を伺ってきました。
糸魚川ユネスコ世界ジオパーク事務局として、ユースとの関わりはありますか?
小中高生には学校にてジオパーク教育を行っているため関わりがあるのですが、糸魚川市には大学がないこともあり、所謂ユース(18-29歳)との関わりはほとんどないのが現状です。
小中高それぞれにおける学校でのジオパークの学習の状況を教えてください。
小中学校ではジオパークを舞台とし市教育委員会とも協力しながら授業を行っています。高校では学校側の要望に合わせて、ジオパークをフィールドに防災や自然などのテーマで授業を実施している学校や、フォッサマグナミュージアムを職場体験の訪問先としている学校があります。また、香港ジオパークと姉妹提携しており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行する前は、糸魚川の中学生が香港ジオパークでフィールドワークを行うなどの交流活動も行っていました。いずれも子どもたちが大きくなった時に故郷の凄さを知って戻ってきてくれるきっかけとなることを期待して取り組んでいます。
他の地域のユース参画はどうでしょうか?
多くはないですが、糸魚川を研究フィールドにしている大学生はいます。特に、糸魚川ユネスコ世界ジオパークは連携協定を結んでいる新潟大学の学生が多いです。
糸魚川ユネスコ世界ジオパークにユース世代の関心を引き寄せるため、又はユースの活動を活発化させるためにこれまでどのような施策を講じてきましたか。また課題は何だと思われますか。
研究者同士の交流は時々おこなっていましたが、あまり踏み込んだ施策はできていません。課題としては、糸魚川市には大学がないため、18歳以上の若者の関わりが薄いのが現状です。小中高の学校の中の取り組みを超えて、20代の方々の移住定住、関わりを増やしていくためのUターン、Iターン施策なども重要になると思います。
外部の組織に求める役割は何でしょうか?
さまざまなステークホルダーがジオパークに関わっています。ジオパークの要素を付加価値として観光や地域の物産と絡めてビジネスに活用していくことがより進んで欲しいです。現状では第一次産業や建設、サービス業、運搬業が中心ですが、その他の観光産業やネイチャーガイドがより価値の高い職種として認識され、雇用につながることも望んでいます。
ユースと一言でいっても、年齢や所属、国籍などは様々です。今後はどのような「ユース世代」に関わって欲しいとお考えですか?
糸魚川には温泉や自然科学博物館、フォッサマグナパークなど魅力がたくさんあります。観光客が糸魚川に立ち寄った際にジオパークに興味を持ってくれたり、逆にジオパークに興味のある方が糸魚川の文化的・観光的価値にも魅力を感じたりしていただけるなど、色々な方々に幅広く関わって欲しいと思います。研究者が研究の対象にしてくれるのも大歓迎です。
次世代ユネスコ国内委員会に期待することがあればお教えください。
まずは現地に足を運んでジオパークの魅力や地域の現状について深く知るところから始めていただきたいです。現地に住む学生と繋がり、その子たちとの関わりの中で、彼らが自分たちの住む地域の魅力や課題についての気づきや考えるきっかけを与えてもらえると嬉しいです。また、SNSでの発信等についても、ターゲットに対してどんな角度からどのような伝え方をするとより魅力が訴求できるのか、次世代ユネスコ国内委員の皆さんの意見が欲しいです。
【個人の感想】
小林:短い時間でしたが糸魚川ユネスコ世界ジオパークの自然や文化の魅力を感じることができました。インタビューではジオパークの教育への積極的な活用が印象的でした。一方で小中高ジオパーク教育が充実しているのにも関わらず、地域に大学がないことで若者が他の地域に出ていってしまい、ユース世代との繋がりが希薄になってしまうという課題を知り、現状のジオパーク教育と同時に、より学生がシビックプライド(都市に対する市民の誇り)を育てられるような機会が必要なのではないかと思いました。例えば、ジオパーク全国大会のユースセッションにて、複数のジオパークを超えた交流によって、各自の地域の良さに気づくことを実感したため、より外ヘ魅力を伝える機会や外部との交流の機会を作ることで、ジオパークの魅力を地元のユースにも、そうでないユースにも広げていけるような活動をしていきたいです。
細谷:東京から新幹線で2時間というアクセスの良さ、糸魚川市のジオパークそのものの地質学的特徴や自然、伝統文化、土地そのものの魅力を感じることができた取材でした。世界的に名高いヒスイの産地として、街の中や博物館の見学を通して長い歴史を通して形作られてきた大地の変遷を学ことができました。今後の期待や課題を含めて現地の方と、ユースの関わりについてディスカッションすることができました。次世代ユネスコ国内委員会として私たちがその魅力を発信し、現地の若者たちとの交流の機会も今後作っていきたいと思います。
【DATA】
日 時 2022年11月23日(水)
場 所 フォッサマグナミュージアム
話し手
糸魚川ジオパーク協議会事務局 鳥越寛子さん
フォッサマグナミュージアム 学芸員 郡山鈴夏さん
聞き手 次世代ユネスコ国内委員会 小林・細谷(2022年11月現在)
参 考 糸魚川ジオパークウェブサイト
いといがわベース