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【新しい経済】英国発の新手法SIB。官民連携の切り札。

2月も2週目になりました。代表の河合です。

前回は「インパクト投資」がテーマで、そもそもインパクト投資とはなんなのか?を解説してきました。
弊社主催のインキュベーション事業「UNERI Social Impact」でメンターを務めていた一般財団法人KIBOWディレクターの山中礼二氏からもお言葉を頂き、とても嬉しい気持ちです。

インパクト投資を日本で牽引してきた山中さんを始めとしたKIBOWのみなさま、今後ともよろしくお願いいたします。

①ビジネスには3つのタイプが存在している
②認知度6.1%「インパクト投資」が導く未来
SIBで訪れる資本主義の最定義(⭐️本日はここ⭐️)
④米国で注目!ゼブラ企業の存在

みんなの投資で社会を変える、SIBとは?

「SIB(ソーシャルインパクトボンド)」とは、社会的インパクト投資の1つであり、2010年にイギリスで始まった行政が民間のノウハウ・資金を活用して事業を行う成果連動型業務委託の仕組みです。
社会課題解決に役立てる新しい社会的投資モデルになっています。

日本を始めとした先進国では近年、人口減少と少子高齢化が起因し、行政支出を押さえなければならない傾向にあります。
また、社会保障費の増加が問題になっています。2025年に約149兆円にも膨れ上がると予想されています。

例えば、社会保障費の36%を占める医療費の場合、65歳以上の高齢者を対象とした高齢者医療費が65%を占めており、高い質で社会課題を解決していくことが求められています

このような状況と似た課題を抱えていたイギリスでは、この解決策としてSIBという仕組みが2010年から注目されました。

それでは、実際にイギリスではどのような事例が起きたのかを見ていきましょう。

※「ボンド(Bond)」という名称ですが、債券ではありません。一般的な債券の特徴である「元本保証」や「市場での流動性」がなく、実際に債券が発行されたケースもないです。

行政コスト54億円を削減した英国のホームレス支援事業

イギリスでは、ホームレスの医療費やシェルター運用費に、1人当たり年間670万円、国全体で324億円のコストが掛かっていました。
この問題を解決する為、行政は民間投資家から5億円の資金を投入し、専門のNPOに事業を委託、この資金を元に800人のホームレスの社会復帰を実現しました。

全員が社会復帰を達成した場合、行政が負担すべき約54億円のコストが削減されることになります。

この新しい仕組みこそが、ソーシャルインパクトボンド、通称SIBと呼ばれているものです。

SIBを開発した英国Social Financeのトビーエクルズ氏による世界初のSIB紹介動画も公開されているので、合わせてご覧下さい。

続いて、SIBの仕組みを詳しくみていきましょう。

※英国内の社会的投資市場(社会的インパクト投資/SIB込み)はその規模もインパクトも年々大きくなっています。投資家サイドは、機関投資家だけではなく個人投資家も参加するようになりました。また、企業の社会的投資を推進するために、BigSocietyCapitalが合計1500万ポンドのマッチング投資を企業に提供するビジネスインパクトチャレンジというキャンペーンを2014年に始めています。

SIB実施までの流れと関係者

行政が抱えている課題を民間と連携して解決していきます。

行政の他には、中間支援組織、民間投資家、事業者、評価機関が互いに連携して運営していきます。

〈SIB実施までの流れ〉
①行政と中間支援組織が、民間資金を導入したい社会課題を一緒に決め、成果報酬型契約を結びます。
②そこに民間投資家が投資を行います。
③その後、中間支援組織が解決力のある事業者を選定します。
④事業者は、投資資金を元に事業を実施。
⑤期間終了後、評価機関が事業の成果を判定。
⑥(目標達成の場合)行政は、コスト削減分の中から、投資家へのリターンと事業実施コストが投資家に支払われます。
⑦(目標未達成の場合)行政から投資家への支払いは発生しない。
肝:行政としては、コスト削減とリスク軽減が両立できる。
引用:官民連携の社会的投資モデル ソーシャル・インパクト・ボンド

図式化すると、以下のようになるのですが、初見の方にとってはとても複雑です。

スクリーンショット 2021-02-15 午後9.33.05


しかし、今後の日本をはじめとした先進国で、社会課題を解決する切り札としてSIBは注目されています。
中でも鍵になるのが「中間支援組織」です。
ここは、行政とタッグを組んで「どの社会課題を扱うべきか」「その事業者に決めるのか」といった部分を握る団体です。その中間支援組織を含めた場合の図が以下のようになっています。

スクリーンショット 2021-02-15 午後9.32.24

日本でSIBが推進できるかどうかは、「行政側の覚悟の問題」に尽きる、というのが私の見解ですが、数年後は日本各地でSIBが導入されることになるでしょう。
参考までに、日本では 2017 年度に神戸市と八王子市で導入され、また厚生労働省によるモデル事業も開始されるなど、本格的な導入が進んでいます。

税収増加分で連動報酬を狙う世界初のモデル

既存のSIBにおいては、行政のコスト面に注目し、その削減に応じて連動報酬を発生させる仕組みでした。一方で、コストではなく税収の増分に注目し、アップサイド(税収の増加分)に応じて連動報酬を発生させる仕組みをとっている事例もございます。

こちらは、シングルマザー創業支援事業という名称で、行われています。
シングルマザーが起業する事で、税収がどれぐらい増加するのか、という「攻めのSIB」モデルになっています。
ダウンサイドではなく、今回のアップサイド事業をモデルケースとし、他の地方自治体においても、行政、民間企業が連携し、社会課題解決をするアップサイドSIBの導入が増えることを我々も期待しています。

行政の公的事業を民間事業者が実施する時代に

SIB、ソーシャルインパクトボンドの内容に関して、少しは理解して頂けたでしょうか?まだまだ日本では浸透していない概念ではありますが、少しでもご関心を持っていただける機会になっているなら幸いです。
昨今では、株式会社のようなNPO、NPOのような株式会社が急増している実感があります。つまり行政が挑むべき課題に既に事業で実施している起業家(受益者からお金がもらえず、社会の負の便益を解消している事業を実施する事業者)が日本にも多数いまるという事です。
「SIBは、クラウドファンディングと並ぶ金融分野のイノベーションだ」とノーベル経済学賞受賞者のロバート・シラー氏はみなしています。
日本ではいまだ数件程度の事例があるのみですが、課題先進国と呼ばれる日本にこそ、SIBが求められているのではないでしょうか?
我々も、受益者からお金が貰えないが社会にとって重要な課題である分野に挑む起業家を増やす役目を担いつつ、弊社もその1つの風穴を開けていける存在になれるよう励んでまいります。

P.S.
また現在UNERIでは、スタッフを募集しています!
一度話を聞いてみたいという段階でももちろんOKですので、お気軽にお問い合わせ/ご応募いただけると嬉しいです。


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