光を掴む
憧れという感情は、湖の水面に映る月の光のようにどこか遠く、手に触れることができないものだ。何かに憧れた瞬間、その対象はこれまでの自分の世界にはない特別な輝きを放ち、目を逸せない。
光を見ているうちに水面に広がる波紋のように、妬みという感情が現れることがある。いつの間にか自分の足元がひんやりと冷たくなり、その輝きがこの手に届かないことに気付く。妬みは、ほんのちいさな歪みから始まり、静かに、確実に心の奥底に沈んでいく。光がある場所には影が生まれる。憧れと妬みは表裏一体だ。
いくら切望しても、憧れる人とそのままそっくり代わることは出来ない。その人が見ている景色や感じている風や香りは、私のものではないから。でもその光を見つめることで、自分自身の輪郭がはっきりと見え、そこから新しい自分が始められるのだと思う。陰陽どちらの感情も自分の一部である、ということを受け入れる。そうやって新しい光が生まれていく。誰かの光になっていく。