韓国ドラマ:なにもしたくない
慌ただしく過ぎていく日常。このタイトルに共感できる人も多いのでは。主人公イ・ヨルム(キム・ソリョン)が田舎に移住し、何もしない時間の中で少しずつ再生していく姿が描かれる。都会の喧騒から離れた田舎での穏やかな時間を描きながらも、ただの癒しドラマに終わらないのが本作のポイント。
心地よい距離感で
イ・ヨルム(キム・ソリョン)は、仕事内のパワハラセクハラに始まる人間関係、長年付き合った恋人との破局、親との死別などが一気に重なり、なにもしないことを選択するために賃料の低い田舎に移住することにする。その先で出会う司書のアン・デボム(イム・シワン)は、静かで親切でミステリアスな魅力を持ちながらも、心に傷を抱えている。この二人の心の距離が少しずつ縮まる過程が、無理のないテンポで丁寧に描かれる。
自然が映し出す心
通勤時の車窓からの景色を見る余裕も無い満員電車も、乗る時間帯を変えるだけで広々とした車内から季節の移り変わりまで感じられる。風景はただ美しいだけではなく、登場人物の心を映し出す「鏡」として機能している。広がる空や海、山々の緑が、ふたりの心を穏やかに包み込む。特に風や水の音が際立つシーンでは、ドラマを見ているだけで自然に癒される。
なにもしない贅沢
ヨルムが社会生活において常に忙しく過ごしていたの対し、田舎では「なにもしない」様子が描かれる。図書館で出会う人々との交流、破格で借りたビリヤード場で見る映画、1日1万ウォンの節約生活。この作品の根底にあるメッセージは、焦らなくていい、無理をしなくてもいいということ。何もしない時間の中で見えてくる新しい自分に気づき、次に進むための力を蓄えるのだ。
サスペンス要素
表面上は穏やかで癒し系のストーリーのように見えるが、サスペンス要素が物語に緊張感を加える。デボムが抱える過去の秘密や、ヨルムへの住民からの嫌がらせなど、ただのスローライフドラマではない予想外の展開が展開していく。静かな日常の中で、少しずつ浮かび上がる暗い影が話のスパイスとなる。(ストーリーに緩急がつきすぎて私はなくてもいいなと思いました…)
新しく生きる
ヨルムが「なにもしない」時間を過ごす中で、少しずつ自分を取り戻していく姿が描かれる。逃げることではなく、立ち止まることで自分と向き合い、街の人との交流を通じて成長していく。デボムも、自分を特別扱いせず、似たスピード似た距離感を持つヨルムと出会うことで閉ざしていた心を少しずつ開いていく。この再生の過程が、心にじんわりと染み入る。