🐉衣装歴史学 其の一、坂本龍馬 八十五

八十五、

寺田屋の捕物で捕手が十数。これが坂本のいた現場を押さえた。

良く通った坂本評として田中光顕の、奇妙過ぎて理解に苦しむ、といった物がある。もう数回引用しているから今更引っ張って記さないが、兎角理解出来なかったのは坂本が例えばで新撰組、その端につけられているのも構わず、“連れ”（まあ便宜上お龍として）と大っぴらに“イチャイチャ”していた、と。

それが日常ならば容易に宿している場所、会談している店、押さえられても仕方がない。

その“奇妙さ”に少し踏み入れる。

坂本がそこまで当局、詰まりは徳川から問題視されていた所以が、結構な曖昧さで。

曖昧さ、と何かに絡め取られて、では頭っからシンプルにすると、勝スクールからの放校は詰まり池田屋襲撃及び第一の京政変劇の長州主導の地下組織と関係していた、と。この点は意外とどの“坂本ファン”も切り離したい所。同情はする。

坂本の無防備さと挑発的なそれは、遊び半分にやっていた？

捕手が絶対自分には手を出せない、と踏んでいたから、そうでなければ上記は出来ないだろう。その物陰の端達が絶対自分に手を出せないと踏んでいたからのある意味挑発行為で。そうとしか思えない故の、又上記引用の田中光顕、明治御一新後に大元勲となる若き田中にも判らなかったある謎があっての、首傾げな回顧で。

寺田屋の捕物は、言うまでもなく、京都奉行の下ろしで。これは又、新撰組や見廻組の様な半ば自警団とは全く違う。令状、罪状、出本（被害等の届出）、奉行所を動かすにはそれが必要で。

という事は京の治安上の何かで坂本に嫌疑が向いていた。この捕物劇は長州征討の二期に差し掛かる前。京の政変劇から蛤の変事からは大分時を経てる。

勝スクールからは放校されたが、庇護者は西郷であって、この時期では西郷は朝廷・そして徳川とも密であり、その端なら、それが土佐の脱藩者と言えども手を出すに憚られると考えるのが筋だろう。

この坂本の捕縛劇には、結果長州も薩摩も現実だが活劇調に“駆け付けた”。

要するに、で、京の奉行方は坂本が“アンタッチャブル”な存在である事重々承知の上で捕縛に踏み切った。その“アンタッチャブル”さ、というのは京の奉行方が

薩摩・長州と事を違えても、この不審者を捕る、と。

これも通った話で、坂本はこの捕物劇で銃を発砲している。その奇天烈さもやはり坂本物語を大いに華付けるし、この時期時代、捕物劇暗殺劇は数え切れないぐらいにあった、血塗れの京だが銃火器で急場の立ち合い演じたのは彼だけだろう。

以前にも書いたが、銃の出元が高杉であれ誰であれ、武器の、西欧式の新鋭の武器を懐中に携帯していた、と。如何に武器の往来の多い界隈に出入りしていたか、の証左ではあり。

京の治安部署が相当に恐れた物は何だったのか？
それは江戸下ろしだったのか？
“徳川”がこのいち浪人を恐れたのだろうか？
又、第二期の長州戦に入る前の密偵狩、長州事情通の取締り………

又、取締り方の怖れ方と同様に…
坂本の命、安否に血相を変えた西郷
坂本の身辺警護を付けてまで気を遣っていた長州
そこまで、坂本の“何”に心配をした？
単なる“志士”だからではないだろう。

📜衣装歴史学｜💻WEB文芸誌『レヴェイユ』／編集者　柳井一平｜note

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