🎋 映画監督 布施理恵子の手帳　『かぐや姫』製作記　第二部　１〜１０まで

第二部

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「軽尾さん！」

わたし。

「はい⁈」

くまプー。やだ、軽尾さんに対して何か、ツオく出ちゃった。いいや。

「美香ちゃん、もしかして今、おヒマめですか？」

でもわたしもマジ！何かアドレナリン、ドッパッパしてるんでおじゃる！

「おヒマめ？おヒマってったらぁ…なあ？どんなんなんだろう？」

くまプー、奥様に。しかしここは奥様！イッシッシッしてますよー！イッシッシッて！

「おヒマったら、おヒマなんじゃない？」

テーブルに方頬杖ついて。何かマダムンムン！

「うーん…」

ありゃ？くまプー、変な顔。まーた気が乗らないんでおじゃるか？でもお姉ちゃんの時とはまた違った顔です。うーん…わたしまで考えちゃいますぅ。とっとっと…ストップしてはなりません！

「もしかして、美香ちゃんもけんびりっじに行く為に、お勉強真っ最中です？」

先ずはそこ、カイメーしときますよー、はい！

「うん？いや…美香はケンブリッジとかそういうのは…うーん…」

やったー、まずはハードル一個飛んだ布施理恵子！偉いでおじゃるぞ！

「では…美香ちゃんさえオッケーなら…？」

ここぞとばかり、はいー、首傾けてスマイルですよー、はい。ね？いいよね？プーさん。おやつねだる女の子になってしまうんでおじゃる。

「うーん…」

ありゃりゃ？まーた気が進まないくまプー。でも、くまプーが“うーん”って唸ったと同時に奥様のけたたましい笑い声が！

「アッハッハッハ！いいんじゃない？ちょうどいいちょうどいい！美香、毎日毎日どこプラついてんだかわかんないんだし。アッハッハッハ！」

「ちょっと…母さん…」

ありゃりゃのりゃ？何か違うとこ入っちゃった？わたし。

6/26

「では…そーとーおヒマめって事で…」

クールに呟くんでおじゃる、クールにアンリ・ジョルジュ・クルーゾーのエーガに出て来るよなわっるーい女のシトみたいに！

「そーとーおヒマったら…りえちゃん、本当にウチの美香、かぐや姫にする気なのかい？」

こんがらがった目と眉毛のくまプー。なーんか空気が違うんでおじゃる、お姉ちゃんの時と。で、お姉ちゃん見たらニコニコ、なーんか意味深なニコニコ。なーんでおじゃるか？理恵子におせーてたもれ？ねえ、ミケ。何かズルいんでおじゃるよ、おとーさんとお姉ちゃん。ん？ミケ見ると、何かコイツはコイツで何か考えてるんでおじゃる。ミケってミケって名前の割にアタマいーんでおじゃるよ…何かこっちもただならぬ雰囲気でおじゃる！でもんーなの気にしてらんないわー！さっきのビリビリは超常現象的にサイコーのビリビリだったんでおじゃるでおじゃる！ね？ミケ！

「もー、お姉ちゃんが無理なら。わたしどももー、切羽つまつま…」

ピシッとミケのしっぺが！いったーい！もー！

「うーん、そう？うーん…」

やっぱり考え込むくまプー。でも不思議。何にか引っかかってるんでおじゃるか？

「何かその、問題でも？」

クルーゾーの悪女のよーに迫る布施理恵子！行け行け！わたし！エシシシ、何か悪女演じんのって楽しー。

「もー！いいんじゃない？後は美香とりえちゃんの話にして！わたし達があーだこーだ、いいわよー！もー！優柔不断！」

奥様！なーんかわたしより悪女っぽいんでおじゃる！やっぱホンモンには勝てまへん、ホンモンには…って奥様は悪女ではないと信じたいですけど…そ言えば昔、『奥様は悪女』ってドラマがあった…いや違ってるんでおじゃる！魔女！魔女！『奥様は魔女』！でも魔女と悪女って何がどー違うんでおじゃるか？

「ゆ、優柔不断？このう…何て事言うんだ、君は！ボカァね！優柔不断で決め兼ねてるんじゃないよ！だって“かぐや姫”だろう？映画だろう？だってウチの美香ちゃんが…皆様を感動させる演技とか…って出来るかなぁ？ウチの美香ちゃんが…」

ありゃま。何とまあ、おとーしゃんな迷いです事。そして、くまプーのクセになーんかエーガ作りに関してマジメでおじゃる。ヤッバ！こーんな心の声聞かれたら、布施理恵子、即クビでおじゃるな、即クビ！

7/3

ハッハッハッハッハッハッハッハッハッ

わたし、わろた。おとーしゃんとおかーしゃんの話を割くよーに。ミケとお姉ちゃんがギョッとして理恵子を見ましたです、はい！

「そーんな事は一切心配なさらずに！軽路さん！そこんとこは、はーい！監督とせーさく陣の腕で何とかなるんでおじゃる」

またミケのピシャッが！イテテテテー！もー！なーにー？わたしが何か悪い事言いましたかー？

「お、おじゃる？な、何とかなる？りえちゃん、随分と軽く…驚いたな！流石は監督さんだなぁ！『フルートと私』の、監督さん…」

くまプー、びっくりしてんだか呆れてんだかわかんないんでおじゃる。でも、いっか。はーい、あと、任せておいてー！理恵子に任せてよ！ね？ミケ！ウチら本気出すとンーごいもんね！ね！ね！

「ハッハッハッハッハッハッハッハッハッ」

今度は奥様の高笑いが。うーん、やっぱこっちには敵わないんでおじゃる。か、貫禄が！

「ほらー！もう、りえちゃんに任せなさいな！どんな風になるか、後は観てのお楽しみー！」

ありゃ？奥様？何か若い女の子みたいに。何かモドってるんでおじゃるか？若い頃の奥様に？なーんか楽しそうなんでおじゃる。

「じゃあ決まりね。もう！いいわ、まだブチブチ言って…わたしが何とかするわ。辺見！」

「はっ」

「美香ちゃん、連れて来て」

ワオ、急転直下でおじゃる！やったー！辺見、連れて来て来てー！お話するのー！美香ちゃんとー！と…次の瞬間

「待って！」

あれ？お姉ちゃん？何でおじゃるか？

「美香、わたしが連れて来る」

お姉ちゃん…なーんかとっても素敵な笑顔！なになになにー？なーんか…すっごい素敵なんですけど！お姉ちゃん、辺見さんを止まらせて、席を立って静々と…あー、行っちゃった…一同、水を打ったよーにシーンでしたよー、シーン！

“お姉ちゃんがこのお姫様演じたら、遠藤藤子に勝るとも劣らない絵になっただろな”

なーんて…口をアホみたいに開けて、心ん中で呟く布施理恵子でした…

「そーかもね…」

「ゲッ！」

ミケには聞こえてた？ううん！違う違う！この化け猫ちゃんは人のココロが読めるんでおじゃる！げに、恐ろしや恐ろしやー！しかし恐ろしやなのはここからですよー！次の対決は妹ちゃん！妹の美香ちゃんを説得せねばねばねばー！です、はい！

7/9

お姉ちゃんがいなくなって。何かジョーキョーがほぼエーガみたい。お姉ちゃんがいなくなると、奥様が。

「でもね、りえちゃん」

「はっ？何でおじゃるか？」

そして3度目のミケのピシャッ！イチチーッ！もーやー！もー！

「理恵子！いい加減にして！お言葉遣いが酷すぎ！」

「はっ？はいー！」

するとおとーしゃんとおかーしゃん、ウフフとわろた。ありゃ？笑ってくれてるんならいくない？ミケー。

「ウフフ、あのね、りえちゃん。後はもう、美香ちゃんとりえちゃんのお話でね、いいと思うの。けどね…」

「はっ！はい」

何でおじゃるか？何かイヤーな予感が…

「はっきり言って、手強いわよー。あの子」

「ゲッ！」

ピシャッ！いちーっ！もーやめてー！ミケ！

「て、ててて、手強い？」

ンフフフフ、と奥様、意味深ー。何がどー手強いんでおじゃるか？理恵子におせーて！

「まだお姉ちゃんの方が…でも…いいわ。まだあの子がやるかやらないか判らないし。と言うか…やる？あの子？」

奥様、旦那様に。すると旦那様、ウーンッと唸った！すっごい大きな声で！

「美香ちゃんか…ウーンッ！だって久美ちゃんがやる予定だったのに…」

奥様、フセ、ミケ、３人あんぐり。なーんだ、まーだ久美ちゃんに拘ってたんでおじゃるか？やっぱ久美ちゃんのファンなんでおじゃる。でもちょっと可愛い、このプーさん。

「ハァーッ！もういいわ。とにかく！何と言うか…あの子は誰に似たんだか…」

布施監督…

「はい？」

あ…来た…妹ちゃん…あれ？隣に立ってるお姉ちゃんがなんか素敵。笑顔がとても。わたしを呼んだのは…お姉ちゃん。確かにお姉ちゃんの声だった。でも…わたしの動いた目の先には…妹ちゃんに真っ直ぐ！

そして…

何とも不思議、摩訶不思議…妹ちゃん、なーんかポカーンとしてる…あら、まだまだ女の子。10代の女の子。つい昨日まで小学生か幼稚園児だった？何だろ？不思議じゃないですかー⁈なにー⁈この子ー⁈何か変ですよー！こんな女の子に会った事ないー！そしてわたしのノー内テアトル、何か万華鏡を覗いたみたい！花がチラチラ、そして鏡がその花の絵柄を増幅させて…こんなの久美ちゃんの時にもなかった！何だろ？何？この子は？この子の内面から、何か万華鏡の煌びやかなエーゾーがわたしに迫って来てるんでおじゃる！

「美香、監督とお話…」

美香ちゃん、お姉ちゃんに促されて、わたしの正面に座った…お姉ちゃん、美香ちゃんの側に立って手を前に。お上品…何かわたし…すんげー所にいやしません？ミケー！

「あ…美香ちゃん」

わたし、呼び掛ける。

「…」

返事がない…ポカーンとしてる。

「お久しぶりね」

わたし。

「…」

まだポカーン。ありゃ？だ、大丈夫？美香ちゃん！

「あのね…」

いよいよ切り出すんでおじゃる！

7/14

「今ね、わたしたち、とっても大変なの」

「…」

ポケー、です。何にも答えません。

「それでね、急にこちらへね、お邪魔しちゃってるの」

「…」

ポケー…な、何かハンノー欲しいぞよ、美香ちゃま！

「もう知ってる？わたしたちの映画に松浪久美ちゃんが出る事になってたんだけど…」

ポケー…と、というか、わたしの話、聞いてないんじゃ…

「久美ちゃんね、出られなくなっちゃった」

ちょっと笑う、布施理恵子。相変わらず、美香ちゃんはポケー。

「それでね、今、主人公のね、お姫様…そう、かぐや姫をやるのよ、わたしたち」

ポケー…は、反応が…こりはこりでフセリエ的にピンチだわー！何？この子のタイプは⁈今までで接した事のないタイプなんでおじゃる！こ、こりが…奥様が仰ってた、“手強い”って意味かしら⁈こっちが『かぐや姫』やるってってんのだきゃら、ワーッ！とかキャーッ！とか、へぇ…とか、何でもいいからハンノーが欲しいんでおじゃる！

「エヘヘ、でね、久美ちゃんの演じる予定だったかぐや姫の役をお姉ちゃんにお願いしようって思ったの」

ポケー…でも今度は美香ちゃん、お姉ちゃんを見た！クルッて頭をお姉ちゃんに向けました！んで、びっくりした顔してました！なーんだ、やっぱ『かぐや姫』のエーガに関心持ってたの？エッシッシッシッ、そうでごじゃろう、そうでごじゃろう！お姉ちゃん、でも妹の顔見て、残念なよな困ったよな顔、しました。

「でもね、今聞いたの。お姉ちゃん、大学の留学でそれどころじゃないって。結構しつこくお願いしたの。でも、やっぱり…って」

わたし、俯いちゃった…お姉ちゃんの『かぐや姫』…結構素敵かも…ぶるんぶるん！ダメダメダメなんでおじゃる！変な事考えるなー！布施理恵子！真っ直ぐちょくしん！

「それでね！」

ハッと顔上げて。すると皆んな、わたしを見ました。

「美香ちゃん！わたしたちの『かぐや姫』になって！かぐや姫を演じて欲しいの！」

と言った直様！

「エーッ‼︎」

顔中、ニガニガ！やりたくないって一発で伝わっちゃった！

「ゲッ！」

こりにはわたしも必殺の“ゲッ！”で応えるしかなかったんでおじゃる！

7/17

シーン…はい、シーン…だりも何にも言いませんでしたです、しばらく…し、ししし、しかし頑張んなきゃ！

「そ、そそそ、そんなに嫌？」

フセ。

「…」

すると美香ちゃん、わたし、ジンセーに今まで見た事なかったよな、女の子の干柿みたいな顔！見せましたー！こりゃーゼツボー的だわー！

「えっ？な、ななな、何がそんなにイヤ？」

おずおずおず…エーガに出るってそんなにイヤ？そんなにエーガ嫌い？

少し半開いたお口。すると…

「何かー、字ぃ覚えんのとかー」

ありゃりゃのりゃ？この言葉の割に…声は小さいんでおじゃるが、何か綺麗な声。高くてトーメイで…何？この子⁈っとっと！いかんでおじゃる！声色気にすんじゃなくて、言葉のナイヨーを注意せねばねば！

「アッハッハッハ」

ここは笑ってヨユーかますんでおじゃる。

「大丈夫。カンペって言って、見える所に字ぃ書いたの見える所に貼るから、それ読めばいいだけよ！」

OK、OK！エーガで習ろた、『リーサル・ウェポン』に出て来たジョー・ペシ様みたいに指で輪っか作ってOK OK！トドメにスマイル撃ったぞよ、ドキューン！すると…

「ちょっとちょっとりえちゃん！何だい？そんないい加減な撮り方してるの？君達は！」

って今はカンベンしてーな！こりはくまプーの横槍でおじゃる。

「エヘヘへへへへへへへへへ。ねえ、ミケ！」

くるしーからミケに振るんでおじゃる！けりど…ミケ見ると、ありゃりゃ？何かヨユーなんでおじゃる…しかも何か…とっても温かい目で美香ちゃんを見てる…こ、こりは…おっとっと、トーゼンの如くミケからはシカトされたんでおじゃる。

「だ、だから、字ぃの問題は大丈夫よー！」

また指で輪っか作った、オッケー！オッケーオッケー！字ぃなんか気にしなくってもオッケオッケ、オッケーよー！

「エーッ！」

「ゲッ！」

…ほとんどさっきのジョーキョーと流れがおんなじなんでおじゃる…てか、振り出しにもどた…

「じ、じじじ、字ぃの事の他にも、何かイヤ？」

…あれ？でも何か、むしろそれ、聞きたい…何だろ？不思議。エーガ監督として、何かそりは、はい、とっても聞きたい！って…

「だって何かー、じゆーがなさそー」

美香ちゃん、口をとんがらせた…そ、そ、そりは…

「ウフフ、それはそうね！美香ちゃん！」

…心とは裏腹にヨユー見せ見せのおねーさんエーガ監督！でも、本気に、ちょっとそれが言えた。んで、本気で微笑めた。そう…そうね、美香ちゃん！って…この時、何かわたしと美香ちゃん、心の距離がちょっと縮まった…気がしたんでおじゃる。美香ちゃん、今、自分の時間、じゆーにしたいもんね！ねー！そーよー！うん！それはそう！

7/19

わたし、ヨユーかましてホーッホホホすると、美香ちゃん、ゲッ！て顔した、ゲッ！。そしてまたポケーって。

「ウフフ、いー勝負…」

なぬ⁈ミケ、今何と言っておじゃりましたか⁈このう…ほくそ笑んでるんでおじゃる！おっととと、今はこいつに構ってる場合じゃないんでおじゃる！

「じゆー、うん。それはそう。美香ちゃんの時間だもんね。うん。それはそう。でも、そこ。そこを何とか…美香ちゃん。わたし達に貰えないかしら？そして…絶対、その貰った時間、決して、無駄にはならない…そう…そうだったな…久美ちゃん…」

そう…そうそう…久美ちゃんのこの歳の時も、こうして、面と向かって…そうそう…ふんわり思い出して来た。そして、それはもうずっと前の事…今は？久美ちゃん、お嫁さんになった…フルートを胸に抱きしめて…そう…そうそう…そんな絵を撮りたかった…わたし？ん？それはわたしのポートレート？ううん、久美ちゃんのポートレート。ん？でも、何だか混ざるな…そして…それは思いの外、皆んなに愛されて…皆んなの物になった…

「理恵子」

「ん？えっ⁈はい！」

ミケの声。

「美香ちゃん、困ってるよ」

あり？ミケの顔、天使様みたいに優しい…何で？んて、いけません！まーたどっかに飛んでたんでおじゃる。

「美香ちゃん、どうかしら？わたし達からの提案。それはきっと、あなたにとって素敵な宝物になるはずよ。じゆー、そうね、うん。それも素敵。けど、じゆーって使わなくちゃ！それはわたし達の…いや、ちゃーうて、わたしの、布施理恵子の勝手なガンボー。あ、もう、ガンボー言っちゃって…だから、ガンボー、もっと言うね。美香ちゃんは、そう、もう“かぐや姫”なのよー」

ミケ、プー、奥様、お姉ちゃん、皆んなダーッとしてしまいました。プーなんか額を手ぇで押さえちゃった…

けど…
美香ちゃん、ポケー…
あり？わたしのハナシ、聞いてた？
不思議なんであります…

「監督ー」

おっと！美香ちゃん！

「なーに？」

わたし、いつの間にかあった紅茶をスプーンでクルクル。

「かぐや姫ってー、アレでしょー？」

「ん？そー、アレアレ」

「なーんでわたしが“かぐや姫”なのか、よっくわかんなーい！けどー、あー！松浪久美ー！結婚だって！マジ信じらんなーい！えー？久美ちゃん、かぐや姫演じるはずだったのー？すんげー、エヒャヒャヒャヒャ！」

エヒャヒャヒャヒャ？ゲッもでーへんかったで！ンゲー笑い方しよるんでおじゃる！

「美香！」

おとーしゃん、怒る。けど、怖くないど。優しいんだな、もう、娘には。

「プッ、本当にいい勝負！」

ミケ、呟き聞こえてるんでおじゃるよ、もー…

「やっぱヤー！」

「ゲッ！」

とーとつに出演拒否！

「何？やっぱヤー？」

「うん、ヤー！だってさ、つまんなそー！」

「ゲッ！」

…それ言われたら元も苦もないよー！

「“かぐや姫”ってだって昔話じゃん！つまんなーい！」

…ス、ストレートでおじゃる。た、確かに、つまんねーかも…

「美香！いい加減にしなさい！布施監督に対してなんて口の利き方するんだ！」

…こ、こりが怒ってもあんま説得力がないんでおじゃる。娘に対して甘々なのが声の強さでバレバレなんでおじゃる！

「だってー！」

ぶーたれ。絵に描いたよう。でもわたし、プッと吹き出しちゃった。

「かぐや姫ってどんな話だったっけ、エッヒャッヒャッヒャ！覚えてないんですけどー！布施監督ー、だってわたし、お姉ちゃんと違ってバカだよー」

「何を言ってるんでおじゃるか！」

…みーんな、シーン…

美香ちゃん、ポカーン…

わ、わたし…本気で怒っちゃった…何でだろ？なので、俯いてしまいました。カチンコ、一瞬でした。

「ば、馬鹿なんて…自分の事、馬鹿なんて、絶対言っちゃダメ…」

わたし、美香ちゃんを見れず、呟く様に言いました。

「あー、こりゃホンモンだわ。理恵子が怒った。本気で怒った。わたしですら、見た事ない。ねえ、美香ちゃん」

ムカッと同時にえっ？ミケ？何？慶子が美香ちゃんに語り掛け始めた…

7/21

「ねぇ、美香ちゃん」

ミケ、この女の子に語りかける。それが…いっつものミケじゃないみたい！でも美香ちゃん、相変わらずポケー。

「美香ちゃんが“かぐや姫”になんか興味ない方がいいのよ」

あ、あああ、あり？だ、だいじょーぶなんでおじゃるか？ミケー。

美香ちゃん、ポケー。

「エヘヘヘヘ、たっしかにねー！御伽話なんてねー！興味持たないよねー！」

く、くまプーと奥様を見ると、ミケを見守ってるんでおじゃる！こ、こりは…

美香ちゃん、ポケー。

「でもさ、美香ちゃん。ウチらの作ろうとしてる“かぐや姫”にはねー、ピンク色の竹とか出て来るんだよー！」

エヘヘヘヘ、とミケ。け、ケーコー、なーんかあなた、今すっごく楽しそうよー？えー！なになにー？何でー？

「ピ、ピンクの竹ー？」

こりまた、あり？み、美香ちゃんが食い付いたんでおじゃる！

「そう！ヘンテコリンでしょ？エヘヘヘヘ」

笑った顔が猫みたいなんでおじゃる。けど、ありあり？猫って笑いましたっけ？わっかんなーい！エシシシ、まぁいいわ！シメシメなんでおじゃる！美香ちゃんがハンノーしたの！ハンノー！

「もーっとね、色んな事考えてるのよー、わたし達。“かぐや姫”の最後って、月から御使いが来るでしょ？そのラストシーンをね、今ウチら、オペラみたいにしようって考えてるの！」

「オ、オ、オペラ⁈」

コレコレ、プーさん。静まるんでおじゃる。オーッホッホッホ、ねぇ、ミケ。そーなのよねー！ねー！驚いたか！エッシッシッシ！そうなんでおじゃる！こりからは妾達は、たーいへんな電気紙芝居を作るのよー！エッシッシッシ！観たい？観たーいー？エシシシのシッ！行け行け、行くんでおじゃる！ミケ猫ニャンコ！

「はい。エヘヘヘヘ、そうなんです、軽路さん！全部アイディアは布施の方から出た物なんですけど、はい…久美ちゃんじゃなくって残念だった…軽路さん、わたし達、頑張ったんです、久美ちゃん主演！って」

くまプー、ミケを見る。その目の優しい事優しい事…あ、あり？わたし…ちょっと涙が…ポロリ…一方奥様を見る。やっぱやさしー目。お姉ちゃん、同じ。やさしー目。

「久美ちゃん、結婚する事、それは…とても素敵な事です。けれど、わたし達、この“かぐや姫”…ねぇ、美香ちゃん？久美ちゃんの代わり、それって癪かも知れない。けれど…本当は久美ちゃんが遊ぶ予定だった、ウチのフセリエ・ランドに遊びに来ない？」

何とまー！か、かかか、カックいー！何とカックいー口説きかたするんでおじゃるの、三田慶子！で、でもフセリエ・ランドって何でおじゃるか？

7/27

「フセリエ・ランド〜？」

ソ、そりゃあハテナでおじゃるよ、ね、ね、ミケー。あり？でも美香ちゃん…何きゃ笑ってる…んー？何でだろ？そしてなーんかモジモジしてるんでおじゃる。んー？何でー？

「そう！フセリエ・ランド！美香ちゃん！きっとディズニー・ランドより面白いよ！ウッフフ！ねえ？理恵子！」

ありゃま！ねえ？ミケ！ってわたしの専売特許だったのに取られちゃった！

「そ・そそそ・それはそのう…ええ！はーい！そうでーす！ウチの三田の言う通りですよー！あ、あ、あ、遊びに来なーい？美香ちゃーん！」

こりはもうミケの走らせた電車に乗るんでおじゃる！

「遊びに〜⁈エヒャヒャヒャヒャ！」

「こら！美香！何て笑い方するんだ！りえちゃん、けいこちゃん、ごめんね！」

いえいえいえいえいえいえいえいえいえいえいえ‼︎

フセミケ、同時に！何と！ウチらみたいな分際が軽路さん、謝らせちゃった！てか、それは美香ちゃんのホンポーさによるもの！全く末恐ろしきおなごなんでおじゃる！

「こら！美香！ちゃーんと布施監督達のお話を真面目に聞きなさい！何だい！字を覚えるのが嫌だの自由が無くなるのが嫌だの！あのね、美香！お父さん、ちょっと今日は本当に恥ずかしいぞ！もう…すみません、どうぞ…」

やだ、くまプーにまた謝られちゃった…怒られた美香ちゃん見ると、全くどこ吹く風！お口も半開き。でもそーなんでおじゃる。おとーしゃん、そんなに優しく怒ったって、女の子は言う事聞かないんでおじゃるぞよ。

「いえいえ！軽路さん！無理言ってるのわたし達ですから！でもね、美香ちゃん、映画を作るってね、とっても楽しいよ！今まで見た事ない世界に、わたし、美香ちゃんを招待したい！面白いか面白くないか、それは美香ちゃんが感じる事だから、保証も出来ないんだけど、美香ちゃんが感じてるよりかは、面白い世界だと思う。そりゃあね、自由を少し貰う…あなたのね、やらなきゃいけない事、ううん！やって貰わなきゃならない事はある。けれどね、それがとっても面白い事に繋がるの！作るって、ねえ？理恵子！そういう事なんだよ！美香ちゃん！」

はらー…ミケ、あなた…何かとっても素晴らしい事仰ってるわあ…わたし、美香ちゃんみたいに口半開き。美香ちゃん見ると、美香ちゃんも口半。でも後の皆しゃまは…とっても穏やかに微笑んで…ミケってマジ凄ーい！

7/30

美香ちゃん…どう？ウチのミケの言葉、何きゃ伝わった？でもハンノーが相変わらず読めねーんでおじゃる…

「三田さん」

「はい？」

ゲッ、美香ちゃんが何と、ウチのミケに話しきゃけた…

「わたしー、だって何かー、でもー、あれー？何か、何言おうとしたか忘れちゃったー」

あらー…わたしも含めて皆んなズッコケ…でも、あり？ミケだけピシッと背筋伸ばして、美香ちゃんに向かい合ってるんでおじゃる。ズッコケてもなく…笑顔で美香ちゃんを見てる…

「エヘヘへへへ…忘れちゃった？」

ミケおねーさん、大人ー…

「三田さん」

「はい？」

あり？また同じフレーズ。

「わたしー、だってー、うーん…何かー…かぐや姫ってー、何かー、エーッ？わたしがー、かぐや姫ー？意味わかんなーい！でもー、何かー…」

頑張れ、美香ちゃん！何故かわたし、心ん中で美香ちゃんを応援してた？何で？でも、何きゃ言いたいの、美香ちゃん、何きゃ伝えたいの、それは判りました。

「わたしー、エーッ？かぐや姫ー？」

そしてクルッと、お姉ちゃんを見ました軽路美香。

お姉ちゃん、ニコッ。

「何でー？わたしがかぐや姫なのか意味わかんなーい！けどー、エーッ？監督ー、わたしー？エーッ？何でー？」

まさかのわたしに質問！ど、ど、どーしよ…

「うん、美香ちゃん、かぐや姫。うん。さっき決まった。うん、ついさっき。うん」

面倒くせーからウンウン頷いとこっと。

「ついさっきー？何でー？」

「エーッ？だってあなたの事探してたんだもん」

「探してたー？」

「そう。ずっと。ただわたし達、何か忙しさにかまけてて、大切な事頭になかったの」

「大切な事ー？」

「そー、大切な事」

「何ですかー？それ、エヒャヒャヒャヒャ」

何か自分でも美香ちゃんと話してると話が宇宙方面に飛んでってるんでおじゃる。ま、いっか。だってこのお姫様、宇宙人なんだもの。

「エーッ？それはー、だって美香ちゃーん、かぐや姫って宇宙人なんだよー」

一同凍りつく、と。もー知らない！

「は⁈かぐや姫って宇宙人なんですかー⁈エヒャヒャヒャヒャ！」

「こら！美香！いい加減にしなさい！」

くまプー、目に手を当てて。いいじゃないですかー、おとーしゃん。他でもない、だって軽路家の皆しゃんとフセミケだけなんですから、ここにいるの。ねー、ミケ。あり？ミケ、ケンケンしてない…わたしの事も穏やかに微笑んで見てる…

「そーじゃん、美香ちゃん。だってー、最後に月からお迎えが来て帰っちゃうんだから。それにー、何で赤ちゃんのかぐちゃんが竹の節の中に入れられてたのか意味わかんなくない？」

「エーッ！エヒャヒャヒャヒャ！そーかもー！エヒャヒャヒャヒャ！」

「だからさ、美香ちゃん。意味わかんなくていーじゃん。フセリエ・ランド、意味わかんなくっていーじゃん。美香ちゃんは意味わかんなくっても、もーいーよー。面倒くさ」

するとピシッ！イッターい！ミケのシッペが！

「エヒャヒャヒャヒャ！」

美香ちゃんだけ爆笑！後の皆んなは俯いてるんでおじゃる。でももーいーよー、面倒くせ。

「布施監督、マジおもしろーい！何ー？何かー、マジ監督って、うちゅーじーん！」

ムカッ！宇宙人のそちに言われたくないんでおじゃる！