🟣冒険ロマン『紫卵』第四章 アメジストを目指して⑩
第四章 アメジストを目指して⑩
「何かさ、沢田って、例えばこの高速が途中で崖になってても…そのまま行っちゃいそう」
光、前を向く、と。
「ええっ⁈そーんな馬鹿じゃねぇよ」
おう、そこまで馬鹿でもねえ。自分で言って自分で納得。
「賭ける?」
すぐグルっとこっちを向いた光!その顔がもう…はい、ギャンブルが好きなんですね…困ったなぁ。俺、こういう女、本当嫌いだ。
「賭けるって何をですかー?」
この高速が途中で切れてる訳ねえだろう?だったら何を賭けるんだ?
「まず、幾ら?」
そのニコニコが怖いんだよ。ニコニコって感じじゃねーな。何て言ったらいいんだ?形容する言葉が見つからねー。
「ああん?幾らって…一万円でどうだ?」
面倒臭えなあ!もう!
「バッカじゃない?いい?百万。百万ね!」
「ひゃ、百万?バッカじゃない⁈」
必殺、言葉尻返し。イェイ、キマッた。
「賭けるの?賭けないの?」
「賭けるも何も、どういう賭けなのか訳判らねえ。冗談もそろそろ止めようぜ」
オーディオに手を伸ばした。大体、こんな“ジ・エンド”みたいな物騒な曲が流れてるから…
「ふふ…怖い?」
ドキッと。いや、ギクッにしておいてくれ。
「怖いだあ?あにがよ?」
俺も俺であにに怖がってるんだ?しかしヤバい。何か知らねぇが、光のペースだ。
「あなたさ、この高速道路ってのは比喩。ひゆって言葉判る?例えばって事、簡単に言うと。だから…あなたはわたしの賭けに乗ったら100パ負け。ウフフ、それに本心で怖がってる。言葉遣いが無茶苦茶な馬鹿で物の価値も判らない豚だけどだけど、少しだけ脂身みたいな知恵がある。ウッフッフっ!何が何だか判らない?それをあなたはとても怖がってる。でも賭けってそういうものよ。何だか判らなくても、一手乗る。それを出来るのが、オトコ。いい?オ・ト・コ。だから躊躇してるあなたはぜんっぜん男らしくない。それに何?お金に関心ないって嘯いて。嘘じゃん。お金に関心がないなら、男気出して賭けなさいよ」
こういう…あったまくんなーっ‼︎でもよ、光、てめえで言った様に俺には洗い終わってもまだこびり付いてる油みたいな知恵がある、あるんだ。けど…光、こいつ人を見るなぁ。んで、正確だ。いや?正確かどうかは判らん。ただ一端のモノサシ持って考えて言ってる。単なる育ちは良いのに賢しい女狐、って訳でもねえな。
そんで、こうやってこいつは男を挑発して手玉に取ってジンセー渡って来てんだ!コンチクショー‼︎
「光ちゃんよ、賭けは何だかよく判らねえ。よく判らねえな。つまり?この賭けは何だ?俺がこのまま突っ走ってって、落ちるか落ちねえか?つまり比喩?えっとー…俺がシェンを救けに行って、えっとー、アメジストか、あれ取り戻してだ、んでー、えっとー、何?光ちゃんはよう、俺が落ちる方に賭けるの?」
言葉を大事に大事に。何か知らねえが、ギャンブルはもう始まってる様だ。
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