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伝えたいと思ったこと【1】

ニッポンものづくりフィルムアワード」一次選考通過45作品から受賞した作品の上映授賞式に行ってきました。
本アワードが目的とする「今、会いに行きたい作り手の声」「産地の活性化」にフォーカスされた素晴らしい作品ばかりでした。受賞作品は結果発表からご覧いただけます。

その中から、特別賞を受賞した【シミズ時計店〜時を紡ぐ店〜】は、涙が頬を伝ったまま拭うことも忘れて魅入ってしまいました。撮影や編集は荒削りでしたが、冒頭から、制作者本人のナレーションで語りかける優しい声に引き込まれ、時計技師である清水さんの「思い出の時計を再び動かす」手仕事、親の代で戦争によって店が全て焼かれたことなど歴史的背景、大切にしている道具、動かない時計を動かすには。

後継ぎになられた息子さんは、前職は海外でも3DSG映画作品を制作していたクリエイターという驚くべき経歴。コンピューターと違って「Redoできない」実物を扱う仕事について語る言葉、好きです。今まさに自分が仕事で悩んでいるテーマでもあり、今まさに、祖父の形見である止まったままの腕時計を、シミズ時計店さんへ、託したいと。
制作者はファッショナブルな若い学生でした。受賞コメントは繊細な声から発するには予想もしない、日本の未来ごと楽しみになるような、芯の通った言葉でした。

時計技師の清水さんご本人へ、授賞式が終わってすぐ駆け寄り、時計修理のお願いをしました。そして、祖父の時計に手紙を添えて郵送させていただきました。

ひ孫の誕生をとても喜んでくれました

祖父が亡くなってから20年以上が経ちました。残る記憶は、棺の中の祖父の頬を撫でた、硬い皮膚の感触が指に残っているだけ。家族が動揺するほど泣いたらしい私本人の記憶も感情も記憶の脳から取り出されたまま、ただ、私は祖父がこの世にいないことが、もうずっと淋しいまま。

もし、形見の時計が動いてくれたら嬉しい。

記念品の竹箸と箸置きのセット

記念品は、ニッポン手仕事図鑑が取り組んでいる「後継者インターシップ」を通して誕生した後継者が制作した【日奈久竹細工 桑原竹細工店】さんの『竹箸』と、【小代焼 ふもと釜】さんの『箸置き』がセットになったものでした。後継者が先細り、衰退した工芸品や特産品のある産地で、若者が職人になることを志し、継承されていく。または直接の後継者にならなくても、使うこと、伝えることで日本の優れた手仕事を残すことになるという、ニッポン手仕事図鑑の試みを、ずっと、応援しています。

ニッポン手仕事図鑑の編集長が、授賞式あとのご挨拶にて話していたこと。「個人の発信では、小さいなと思うかもしれない。でも、会社で、学校で、隣の人へ、工芸品の魅力について伝えてほしい。」と。ひとりの感想は小さくても、どうか誰かに伝わり、伝わった貴方にとって大切な出逢いとなりますように。

ニッポン手仕事図鑑の大牧編集長が執筆し、オークラ出版から2冊目となるニッポンの職人さんを紹介した本が、発売中です。私は31人の職人と作品などのイラストを担当させていただきました。対象年齢は小学高学年ですが全てルビがあるので、ひらがなを読めるお子さんにも楽しんでいただけます。職人さんについて楽しく知ってほしいし、職人さんを目指すきっかけにもなってほしいけれど、職人さんを伝えることに関わる仕事も、たくさんあるよ。自分が働くことの本質とか意義って何だろう?とか…

ニッポンものづくりフィルムアワード」5年ぶりの開催でした。
この5年間の中にコロナ禍があって、人と会うことは困難が多くて苦しかった。「握手で」再会したことの笑顔と共に、私の背中を押す、働くことへと循環します。

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