「Ergo The End」基板設計に手を出した🔰がキーボードを自作した話_設計編
自作キーボード歴「半年!」、電子工作・回路設計「経験ゼロ…」。
だけど「どうしても、基板から自分だけのキーボードを設計してみたい」というあこがれやら、欲やらを凝縮した結果、
左右分割キーボード 「Ergo The End」が爆誕してしまった(笑)
実に3か月弱という、それなりにクイックな爆誕であったのだが以下、経緯を記したい。
「基板設計はさすがにハードル高そう・・・」
「でも本当の意味での自作キーボードでEnd Gameを目指したい・・・」
そんな方々の目に留まればと思います!
色々と欲が出てきてしまい基板設計を決意
昨年「ここからはじめる自作キーボード」に付属のhifumi制作をきっかけに、自キ活の沼地に足を踏み入れた。
肩こりがひどく、姿勢悪いこともあり分割キーボードは試してみたかった。
・TRRSケーブル1本で、左右が結合さてるの、イイ!
・親指クラスターの操作感
寧ろ仕様上のただならぬロマン(笑)に惹かれてしまい、corneやLily58を購入・作成した。両キーボードとも操作性、デザインともに大変気に入っており、いまでも日替わりで使用中。
使っているうちに・・・
・思ったよりも親指で押せるキーが多いぞ
・IRISやErgo Doxといったロマンあふれるデザインに出会ってしまった(笑)
・ErgoDashは理想に近い・・でもホットスワップ対応にしたい
・TRRSケーブルを親指クラスターあたりから生やすとかっこいい?(笑)
色々な欲が出てきたしまった・・・
この欲と折り合いをつけるには、何かを妥協するかさもなくば、基板設計?ということで、後者の道を選び、自キ活沼の深淵に向かう運びとなった。
何から始めてよいのやら・・・という悩みはこの1冊がほぼ解消してくれたので、初めて自作を考える際は是非一度、手に取ってもらいたい。
自作キーボード設計入門 foostan[著]
妄想をレイアウトに詰め込む
まずは、Keyboard Layout Editor(KLE)で妄想のキー配列を考える。キーキャップのサイズをしていして、あとは好きにレイアウトを動かすことができる。これが結構楽しくて、時間が溶けるので困りものである(笑)。
デザインのこだわりポイントは大きく2点である。
1点目は、左右分割、基本デザインはErgodoxをリファレンスして「corneやLily58でそぎ落とされていたキーたち?」を取り戻してみた。
ただし数字行はカット、しっくりきていたcorneを踏襲し、レイヤーキー置き場は斜度15°、サムクラスターは斜度30°程度とした。
サムクラスターもカラムスタッガードな配置にしてみた(ergonomicな効果は未知数だが・・・)。
2点目は、キーサイズをMAX1.5uとしたことだ。
corneやLily58の使用感に合わせたり、パーツが増えるスタビライザー使用を避ける狙いがあった(Ergo doxやErgoDashには2uキーが使用されており、見た目のオリジナリティを出していきたいという、些細な反骨精神もあったかも・・・)。
KiCadなんて手も足も出そうにない・・・と思ったら、意外とそうでもなかった(回路図作成)
電気的な回路の設計、PCBのデザイン、その他PCBの寸法を起点としたケースやプレートのデザイン、それらのプロジェクト管理、発注用のデータ変換など、すべてが可能な恐ろしいまでのソフトウエアである。最新のVerは6.0.5とのことだが、後述の理由で5.0.2をインストールした。
基板作成の流れを単純化すると以下4つのステップである。
恥ずかしながら「基板」と「回路図」の違いも分かっていなかった私でもなんとかやれたので、習うより慣れるのが早いの世界だと思う。
きちんとした電気回路設計の知識を学んだ方にはお叱りをうけえるかもしれないが、私なりの習熟方法①~④を書いておく。
今回ゴールは「キーボードの基板設計」ということが重要である。
最小手でゴールにたどり着くために・・・
①まずは動いているキーボードの回路図やPCBを見るとことから始めた。
Corneのfoostan氏もLily58のkata氏も、多くの自作キーボードのPCB、回路図のデータはGitHub上に公開されている。ありがたいことにである。
KiCadではこれらの回路図を表示、編集することもできる。
次に②各種プラグイン等を使って作業を簡便化することが可能である。
具体的には次の2つを活用した。
・Keyboard Layout Editor(KLE)からフットプリントを自動配置
・PCBの自動配線
自動配置のプラグインが最新VerのKiCadでうまく動作せず、KiCadをデグレさせた。
これだけでも、グッとハードルは下がる。ただし、発注前のチェックは必須であり怠った私は一度泣きをみた(笑)。
③は印刷して寸法やパーツのクリアランスを確認することである。原始的ではあるが、結構やっておいてよかったし、楽しいからおすすめである(笑)
・キーボードレイアウト確定時
・フットプリント確定時
・ケース、プレート作成時
私は上記のタイミングで紙に印刷した。
ちなみにKiCadは、簡単な設定で実寸印刷ができる。
今回、基板裏Promicro配置かつ、ホットスワップ対応、サムクラスターでの1uと1.5uのキースイッチの組み合わせ配置など、スイッチ周りのパーツのクリアランスがシビアなことをやってしまった。初心者が完全に背伸びした感が否めない・・・。
スチレンボードに紙を貼って穴をあけ、実際にソケットやキースイッチをはめてみるということもやってみた。このモックアップは結構楽しかったからおすすめである(笑)。
最後に上記モックアップのアドバイスも含めて、④日本最大のキーボードコミュニティDiscord(Self-Made Keyboardin Japan)の皆さんには、数々の助言をいただいた。
ほぼ週刊キーボードニュースでおなじみの、びあっこ氏が運営されており、質問や雑談、目の保養になるPhotoShareなど、制作を忘れて時間が溶けていく(笑)、楽しいコミュニティである。
発注!基板到着!設計ミス発覚!再発注!
モックアップで物理的なチェックを経て、基板設計終了ということでElecrowでWEB発注を行った。
個人的に「基板発注したことあるぜ」というだけで、なんかよきだなーとか、ちょっと会社の人に自慢したりとか(笑)能天気なことを考えているうちに海を越えて基板がやってきた。
(実際は発送を待つ間、スイッチソケットやダイオードの発注、ケースの設計やらファームウエアの設計やら、ちゃんと真面目に時を過ごしていたので、別途記事にしたい(笑)。)
早速、各種パーツのはんだ付けを開始、上述の基板裏ツライチもいい感じでLED表面実装も足取り軽く、いざUSBデバイス接続!時点でミスが発覚した・・・。
サムクラスターのあるキーがずっと押されたままの挙動となってしまう。
それ以外のキーは反応しない。
ファームエアは問題なし(ほかのキーボードで試しに挙動確認)。
まず、1であるが軽く心霊現象に近いということが、おわかりいただけただろうか・・・(笑)。フットプリント上はパッドは離れているので、スイッチの押下やジャンパ線での接合をしない限り導通はありえない。
が、回路図とPCB配線で2つほど奇跡が重なって、隣のパッドを経由して、導通する状態の配線となっていしまっていた。
キーボード的には没だが、回路的には正しいので、DRC等でも見抜けず、しかしながら目視確認と回路図の理解があれば見落とさないミスであった。
2についてはもっと単純で、ダイオードのフットプリントと回路図のアノード、カソードの番号が逆転してしまっていた。フットプリントの逆につければ導通する。
※回路図のシンボルによっては規格が色々あり、アノード、カソードが逆のものも存在するようで、初心者がはまるポイントのようだ。
ちゃんと自力で原因究明ができたので、良しとしよう・・・単なる確認不足だけども・・・
明日へのモチベーションも持てたことで、泣く泣く、基板は再発注とした。
没基板は上述のような状態なので、アウトレットも厳しそうだったので、ホームインテリアとして丁重に供養・・・R.I.P。
これはこれで気に入っている。
そんな苦い経験で成長しつつ、意外と早くちゃんと動くものができあがった。
発注リードタイムの関係で装甲(ケース(笑))が非装着ではあるが、左右分割キーボードとしての動作は問題なさそうである。
紆余曲折あっただけに灌漑深いが、その期間なんと3か月である。
正直、半年ぐらいを覚悟していた。
ひとまず🔰としては、それなりに善戦できたのではないかと思う。
キットとして頒布するようなレベルだと、至らないポイントは沢山思い浮かぶ。
ケースまで組めたら、こだわりポイント偏として限りなく自慢にみちた記事(笑)をお届けしようと思う。
もうRev2のことを考え始めている、沼のEnd Gameはまだ遠い・・・。