ブルー・ラクーン計画 #1200文字のスペースオペラ

一部の関係者しか知られていない事実だが、宇宙の一割は栗まんじゅうで構成されていると科学的に考えられている。


 その事実を世界で初めて論文に発表したノ・ビータ教授は全世界の研究者から失笑を買うという屈辱を受けた。さらにそのことを公表したことにより学会から追放されるという憂き目にあった。可愛そうなノ・ビータ教授は失意のうちに郷里に帰り、白菜農家の合間に栗まんじゅうの研究を続けたという。


 ノ・ビータ教授の悲劇から時を経て、地球政府機能完全停止、人類の宇宙進出、銀河覇権をかけた闘争を経て銀河帝国が誕生し、人類は新時代に突入した。そんなフロンティアな空気の中、宇宙空間を漂う栗まんじゅうを目撃したと主張する人物が相次いだ。銀河帝国当局は彼らの主張を精神異常とみなし、精神病院に送り込んだ。

 しかし、行方不明になっていた銀河帝国宇宙軍所属の高速巡洋艦「シャイアン」が未知の物質に覆われた状態で発見された事により状況は一変する。銀河帝国科学省は高速巡洋艦「シャイアン」にこびりついていた未知の物質を入念に科学的手法で検査を行い結果、未知の物質と栗まんじゅうの遺伝子データが一致することが判明した。そのデータを見た銀河帝国高官は驚愕の表情が三日間続いたと銀河帝国の公式記録には記述されている。


 このような事態を受けた銀河帝国科学省大臣スネア孔明は栗まんじゅう調査団を組織し、栗まんじゅうの捕獲及び、ノ・ビータ教授の遺産の調査を開始した。いわゆるブルー・ラクーン計画である。エリート科学者と銀河帝国軍人で構成された調査団は、宇宙の大いなる謎を解明するぞと、意気揚々と宇宙を旅立ち、やがて、成果は目に見える形でやってくることになった。調査団は古典的な宇宙底引き網漁の手法によって大量の栗まんじゅうを漁獲したのだ。充分なデータがとれるうえに、お釣りがつくほどの栗まんじゅうなので食糧にはしばらく困らなかった。調査団はホクホク恵比寿顔になったと調査団の航宙日誌にはそう書かれている。


一方、ノ・ビータ教授の遺産を求めて地球に向かった調査船はなかなか連絡をよこさないうえに、連絡が来ても定時連絡ばかりで銀河帝国科学省職員はやきもきさせていた。何しろ長い旅路だ。そういうこともあるのだろうと気に留めなかった頃地球に向かっていた調査船から悲壮な連絡記録が届く。

 調査団の連絡によると、地球の表面はケーキ類に覆われた死の惑星になっていたという。


終われ

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