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山に向かって歌え

「山さ向がって歌え(うだえ)」
と話しかけてきた祖父の言葉。

歌の練習してないなぁ〜と思う度、
この言葉を思い出す。

我が家は父と祖母は歌がうまく、
祖父は残念ながら・・な歌いっぷりだった。
だが、我が祖父は努力、努力の方で、
1%でも可能性があるなら諦めない人。

祖父は40代で脳梗塞を患い、右半身が不自由だった。
左手で箸を握り食事をし、杖をつきながら犬の散歩に行き、スクーターを乗りこなして老健施設にお風呂に入りに行っていた。
わたしの記憶では、物心ついてからも二度、三度脳卒中を起こし、その度枕元で
「はー、おらだめだごった。」
(もう、俺はだめだと思う)と弱音を洩らしていた。
の、割には復活は早く、歩く練習、字を書く練習、くるみを握りながら手指を刺激し脳を活性化させる(と、信じて)を毎日こなしていた。その他独自の健康法も数々。

そんな努力家の祖父がある時カラオケに目覚める。
カラオケ機を購入し、毎日マイクを握り練習する。
お世辞にも上手いとは言えなかった(笑)


わたしもその頃部屋でひたすら歌っていたので、祖父から練習のアドバイスをいただいた。
うちは田舎。
自宅の裏は山。
ちょっと歩けば山、山、山。

「山さむがってうだえばもっとうまぐなる。」
と、言うのだ。


ちょっと言ってる意味わかんないな。


てな感じで聞き流していたけど、
なぜか今でもふとこの言葉を思い出してしまう。


今こそ「山さむがってうだえ」ば、
わたしはホイットニー・ヒューストンになれるのかもしれない。


なれたらいいな。


とにもかくにも、うちの祖父の生き様はわたしの憧れで尊敬してやまないのである。

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