社内処刑人ー真犯人予想と完走した感想ー
随分と間が空いてしまいましたが社内処刑人が最終話を迎えたので、1話をみて行った真犯人の予想の答え合わせをしながら、完走し終えた作品から思ったことを綴りたいと思います。
まず初めに。。。いや~予想を見事に外しました(笑)。
1話から最終10話まで一貫して副島が犯人だと思っていましたが、冴木部長だったとは。。。ただね、1話から副島か冴木部長のどちらかとは思っていたんですよ。だから、黒幕が副島で冴木部長は手駒なのかと思っていました。二人は5年以上の長い付き合いで、ただの男女の仲ではなくお互いを利用し合っていると思っていましたが、冴木部長があそこまでサイコパスだったのは本当に想定外でした。。。女性のサイコパス、いわゆるソシオパスという存在も珍しいのではないでしょうか。女性の中でも特に頭脳プレーが得意で殺人も辞さないソシオパスが登場するドラマって海外でも少ない印象です。
9話の最後まで引っ張って10話で見事に視聴者を欺くストーリーが、最後まで社内処刑人らしい展開でとてもスッキリした気持ちです。
主役である「深瀬のぞみと浅見ほのか」、その一蓮托生であった「副島陽太」が希望に満ちた綺麗な終わりを迎えられて、ほっと胸を撫でおろしています。
そして、最後まで突っ込みどころ満載なセリフが散りばめられていましたが、ここでは敢えて紹介しない事にします。
気になる方は観てください。もう真犯人をばらしているので、どうかとも思いますが、犯人を知った上で最初から観るのも味わい深い面白さがあります。
さて、真犯人予想の結果はここまでにして、最後まで鑑賞した感想を綴りたいと思います。
本作品はどの登場人物もキャラが濃いため、演技としての振れ幅がはっきりしていました。大体どのキャラにも二面性があり、コミカルとシリアス、善人と悪人としての顔を持っています。だからこそ人間は多面性があって、あいつは悪人、あいつは善人と一括りには出来ない難しさや、憎み切れない愛嬌とか、人は状況が変われば心も変われる可能性を上手く表現していたように思います。
そして、多くのキャラが二面性を前面に出してきたストーリー展開にも関わらず、その中でコミカル要素が薄い人物が真犯人だったと今ならわかります。物語を引っ掻き回すキャラたちは二面性が良く出ていましたが、真犯人の冴木とその駒の英子だけはコミカル要素が皆無でした。
また、それに加えて犯人を追うのぞみとほのかもボケ殺しのコミカルデストロイヤーで、二組のコンビが上手く対比していたように感じます。
特にコミカルデストロイヤーのシーンは秀逸で、何度見ても笑えます(笑)。
次に本作のストーリー展開ですが、毎回のラストが『えーっ!!!そうきたか!!!』と思わせる匂わせシーンで『to be continue。。。』となるサスペンスならではの展開でした(笑)。それにしても話数と放送時間に限りがあるからか展開が思った以上に早かった。でも、思い返すと必要な伏線は全て散りばめられ、後半の6話からは解答編として過去と現在に繋がる謎が上手く描かれていたと思います。まぁ、予算的な問題からか、敢えて人物にフォーカスしたいからか副島の過去編は突っ込みどころもありつつ、猪塚さんの演技が光っていました。迫真のシーンは敢えて背景や小道具が無いからこそ際立ったように思います。
そして、本作のストーリー展開で特に面白さを感じたのは、前半1~5話と後半6~10話の構成の対比です。とにかく演出がにくい。
この作品は後半6~10話が前半1~5話をなぞっていくような演出が散らば芽られています。
特に5年前である後半の「咲希と英子のシーン」が、前半の「のぞみとほのかのシーン」を同じシチュエーションでリフレーミングします。「咲希と英子のシーン」を観た瞬間、「のぞみとほのかのシーン」を思い出させます。ここで、過去と現在の違いを強く印象付け、ストーリーをより深いところまで落とし込んでいるように感じました。
前半と後半で二組とも同じシチュエーションや同じセリフで進行したけれど、全く違った結果を生んでいるという皮肉さが、人間のもつ光と闇をクローズアップさせる大きな効果を生んでいたし、各登場人物たちの人間性と関係性を色濃く表現していたように思います。
英子の性悪で弱い人間性があるからこそ、のぞみの悪人になり切れない強さと優しさと、ほのかの大切な友達を守りたいという強さと優しさが際立ちました。同じセリフなのに込めた意味が違う、立ち振る舞いが一見同じでも醸し出す雰囲気が違う。。。だからこそ、同じセリフを受け取った咲希とほのかのその後の行動が違ってくる。この対比が未来を良い方向に変えると印象付ける演出になっていました。
そして、1話と10話も本当に良い演出でした。10話が1話をリフレーミングしたことによって、1話の始まりがあったからこそ10話のハッピーエンドな終わり方が際立っていました。
そんな「のぞみとほのか」「咲希と英子」それに他のキャラも、それぞれに良かったんですが、私は特に「のぞみ」を演じた中村ゆりかさんが一番光った演技をしていたと思います。もちろん、他の方たちや制作陣の演出もあってのことですが。。。
のぞみは一貫して復讐を主軸に動いてはいますが、ほのかに対する感情が揺れているシーンに惹きつけられました。優しさゆえの葛藤や思わせぶりな態度、ほのかのために感情を抑えられず突き放したり、時に突発的な行動に走ったり。。。「のぞみ」という強い女性の中にある、5年前に捨ててきた「望」としての自分が交錯するシーンが何度もありました。
「のぞみ」として姿を変えることで立ち振る舞いや声を変えたとしても、話し方や優しさがにじみ出た声の抑揚が変わらない、変えられなかったところが、余計に本当の「望」を思い起こさせます。復讐という唯一の生きる意味から解放され、本当の「望」と今の「のぞみ」が上手くリンクしていく過程に、とても胸を打たれました。
また、特に私が好きだったところは、今回、何度か顔が見えない後ろ姿のみのシーンがありましたが、複雑な感情が渦巻いている様が良く伝わりました。人は相手の表情を見ることで相手の感情を読み取ります。だから、後ろ姿で思いを伝えること、更に画面越しの視聴者に伝えることは難しいことだと思います。「のぞみ」は後ろ姿のシーンがあったからこそ、徐々に心境が
変化する過程を描けたのではないかと思います。
こういった繊細さがあるからこそ、「のぞみ」は社内処刑人として白馬不動産に入社したものの、結果としてのぞみは誰一人として処刑しませんでした。それは、「のぞみ」のもつ優しさ、根本的な残忍性がないためで、その対となる真犯人の冴木は残忍性があるが故の真の社内処刑人でした。
悪人になり切れない、でも優しいだけでもいられない「のぞみ」は、すごく人間らしくて愛おしい存在です。
さて、これからDMMで最初から見直しです。
今回は残念ながら真犯人を外してしまいましたが、次回、ゆりかさんが出演するサスペンスの真犯人は絶対当てて見せます(笑)。
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