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選択的尿酸再吸収阻害薬(Selective Urate ReabsorptionInhibitor:SURI) ユリス錠:ドチヌラド

特徴

新規の尿酸再吸収阻害薬です。適応症は痛風と高尿酸血症です。
近年、尿酸の排泄機構、特に尿酸トランスポーターの解明が進み、腎臓の近位尿細管 において尿酸の再吸収には URAT1(Urate transporter 1)が、分泌には ABCG2(ATP-binding cassette sub-family G member 2)や OAT1(Organic anion transporter 1)、OAT3(Organic anion transporter 3)等が働いていることが明らかとされました。また、尿酸は腎臓だけでなく腸管からもABCG2を介して分泌されることも示されています。
したがって、URAT1阻害作用が強く、 かつ ABCG2、OAT1 及び OAT3 に対する阻害作用との乖離が大きい URAT1 選択的な尿酸再吸収阻害薬を開発することで、効率的に尿酸の排泄を促進し、血中尿酸値を低下させることが期待できます。
ドチヌラドは選択的な URAT1 阻害作用を有し、さらに肝障害の原因と考えられるミトコンドリア毒性や CYP2C9 阻害による薬物相互作用の少ない薬剤を目指して創製された、新規の選択的尿酸再吸収阻害薬(Selective Urate Reabsorption Inhibitor:SURI)です。

有効性と安全性

PhaseⅢとしてベンズブロマロン、フェブキソスタットをそれぞれ対照薬として14週後まで観察した非劣性試験、58週後まで観察した長期投与試験を行っています。

ベンズブロマロン非劣性試験

ベンズブロマロン非劣性試験
ベンズブロマロン非劣性試験

フェブキソスタット非劣性試験

フェブキソスタット非劣性試験
フェブキソスタット非劣性試験

長期投与試験

投与前値からの血清尿酸値低下率は、34週間投与では2mg/日で46.73%、4mg/日で54.92%、58週間投与では2mg/日で47.17%、4mg/日で57.35%でした。血清尿酸値6.0mg/dL以下の達成率は、34週間投与では2mg/日で89.11%(229/257例)、4mg/日で97.50%(39/40例)、58週間投与では2mg/日で91.30%(84/92例)、4mg/日で100.00%(13/13例)でした。
副作用の発現頻度は21.8%(72/330例)でした。主な副作用は痛風関節炎12.7%(42/330例)、関節炎2.1%(7/330例)及び四肢不快感2.1%(7/330例)でした。

注意点

なお、
尿路結石を伴う患者
重度の腎機能障害患者(eGFRが30mL/min/1.73m2未満)
重篤な肝疾患を有する患者、AST又はALT 100IU/L以上の患者
上記の該当する場合は臨床試験から除外されています。

投与にあたり、尿中尿酸濃度の上昇に伴う尿酸結石の発生を防ぐ目的で、尿のアルカリ化を適宜考慮する必要があります。

尿酸降下薬であるため、痛風関節炎(痛風発作)発現時に血中尿酸値を低下させると痛風関節炎(痛風発作)を増悪させるおそれがあります。投与前に痛風関節炎(痛風発作)が認められた場合は、症状がおさまるまで適応対象になりません。

雑感

ベンズブロマロンは尿細管における尿酸再吸収を阻害することで、血中尿酸濃度を下げる目的で用いられますが、肝機能障害やCYP2C9に対する薬物相互作用を考慮すると、リスク・ベネフィットのバランスが悪い薬剤でした。

ドチヌラドの存在意義はそこでしょうね。

臨床試験の症例数から考えて、発症頻度が低い重篤な副作用を検知できていない可能性があるため、医薬品リスク管理計画書(RMP)の【重要な潜在的リスク】に肝機能障害が記されています。

https://www.pmda.go.jp/RMP/www/670242/7d4aa297-6b97-453e-b7dc-bb3b6b7d4104/670242_3949005F1022_002RMP.pdf

今後も経過を見る必要はありますが、患者さんと医療側の「負担感」は軽減されますね。


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