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ヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体 ミチーガ皮下注用60mgシリンジ:ネモリズマブ(遺伝子組換え)
アトピー性皮膚炎のそう痒治療薬
本剤はアトピー性皮膚炎(以下、AD)に伴うそう痒を治療する薬剤です。
適応は 13 歳以上とされています。
ネモリズマブは、インターロイキン31受容体A(以下、IL-31RA)を標的とするヒト化抗ヒトIL-31RAモノクローナル抗体です。 ADは、増悪・寛解を繰り返す、そう痒のある湿疹を主病変とする慢性の皮膚疾患です。ADの執拗なそう痒は、集中力の低下や睡眠障害をもたらし、生活の質(以下、QOL)を著しく低下させます。
また、そう痒に伴う掻破は、皮膚症状を悪化させ、更にそう痒が増強するという悪循環(Itch-scratch cycle)を繰り返すとともに、皮膚感染症や眼症状等の合併症を誘引するなど、ADの病態形成にも関与しています。
ADの皮疹部ではTh2細胞が活性化しており、主にTh2細胞から産生されるサイトカインであるIL-31は、ADの主な起痒物質の1つとして知られています。 IL-31は、知覚神経の細胞体を含む後根神経節やAD患者の皮膚に分布する神経終末に発現しているIL-31RAに結合すると、オンコスタチンM受容体(以下、OSMR)とヘテロダイマーを形成し、 下流のヤヌスキナーゼ(以下、JAK)/シグナル伝達兼転写活性化因子(以下、STAT)シグナル伝達系を活性化することで、そう痒のシグナルを中枢に伝達します。
また、IL-31は、後根神経節細胞の神経線維の伸長を選択的に促進することで皮膚の感覚過敏の一因となっている可能性が示唆されています。 更には、IL-31は各種細胞からサイトカイン、ケモカインの産生を誘導することや角化細胞の分化を妨げ、Filaggrinの産生を低下させるとの報告があり、 AD病態での炎症惹起及び皮膚バリア機能の破綻にも関与しているものと考えられています。 ネモリズマブはIL-31と競合的にIL-31RAに結合することによって、IL-31受容体への結合及びそれに引き続く細胞内へのシグナル伝達を阻害することから、AD患者のそう痒に対する新たな治療薬として開発が進められてきました。 国内では、2011年より中外製薬が第Ⅰ相試験、第Ⅱ相試験(国際共同治験)を実施した後、2017年より第Ⅲ相試験を実施し、 2022年3月に、「アトピー性皮膚炎に伴うそう痒(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を効能・効果として製造販売承認を取得しました。
IL-31RAを標的とするヒト化抗ヒトIL-31RAモノクローナル抗体である。
IL-31と競合的にIL-31RAに結合することによって、IL-31の受容体への結合及びそれに続く細胞内へのシグナル伝達を阻害し、そう痒を抑制することが示された。(in vitro、サル)
本剤はそう痒を治療する薬剤であり、本剤投与中も皮膚症状に応じた治療を併用する必要がある。
経口ステロイド剤を服用している患者において、本剤投与開始後に経口ステロイド剤の減量が必要な場合には、医師の管理下で徐々に行う必要がある。
既存治療を実施したにもかかわらず中等度以上のそう痒※を有するAD患者を対象とした国内第Ⅲ相試験において投与開始16週後のそう痒Visual analog scale(以下、VAS)変化率の最小二乗平均値は、 ネモリズマブ群-42.84%、プラセボ群-21.39%であり、プラセボ群に比べてネモリズマブ群で有意に改善した(P<0.0001、混合効果モデル)。 ※そう痒VAS(0~100)が50以上、かゆみスコア(0~4)が3(中等度)以上。
重大な副作用として、重篤な感染症、重篤な過敏症があらわれることがある。主な副作用は、アトピー性皮膚炎、皮膚感染症(ヘルペス感染、蜂巣炎、膿痂疹、二次感染等)、上気道炎(各5%以上)であった。
製剤の特徴
1回 60 mg を4週間の間隔で皮下投与します。
室温保管可能であることは、意外と大きなメリットですね。
デュアルチャンバーシリンジという、二室式のプレフィルドシリンジが構造上の特徴です。
施設基準
安全性と有効性を評価するための製造販売後調査等が課せられていることから、当該調査を適切に実施できる施設であること。
アトピー性皮膚炎の病態、経過と予後、診断、治療(参考:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン)を熟知し、ミチーガについての十分な知識を有し、アトピー性皮膚炎の診断及び治療に精通する医師が当該診療科のミチーガに関する治療の責任者として配置されていること。
医師要件
成人アトピー性皮膚炎患者に投与する場合
5年以上の皮膚科診療の臨床研修
6年以上の臨床経験を有し、そのうち3年以上はアトピー性皮膚炎を含むアレルギー診療の臨床研修
小児アトピー性皮膚炎患者に投与する場合
5年以上の皮膚科診療の臨床研修を行っていること
3年以上の小児科診療の臨床研修 かつ 3年以上のアトピー性皮膚炎を含むアレルギー診療の臨床研修を含む6年以上の臨床経験を有していること
医薬品情報管理
製薬企業等からの有効性・安全性等の薬学的情報の管理や、有害事象が発生した場合に適切な対応と報告業務等を速やかに行うこと等の医薬品情報管理、活用の体制が整っていること。
副作用への対応
重篤な過敏症等の添付文書に記載された副作用に対して、当該施設又は近隣医療機関の専門性を有する医師と連携し、副作用の診断や対応に関して指導及び支援を受け、直ちに適切な処置ができる体制が整っていること。
雑感
アトピー性皮膚炎のそう痒を改善することで、QOLを改善するだけではなく、皮膚の掻把によって悪化に陥るスパイラルを食い止める目的で使用されます。
従って、外用薬を中心とした治療は継続した上で適応が判断されます。
1つ気になったのは、重篤な有害事象に 「アトピー性皮膚炎の増悪」 という項目があったことです。
明確な結論は示されておりませんが、導入前のいわゆる wash out において、前治療を考慮せず外用ステロイド剤をstrongに固定したことで、いざネモリズマブを導入した経過で疾患そのもののコントロールが不良になったのではないかと考察されています。
前治療で very strong や strongest クラスのステロイド外用剤を使用していた症例数は把握していないようです。
少々、臨床試験デザインに「甘さ」がみえるような気もしますが、アトピー性皮膚炎で苦労されている方の希望になるとよいですね。