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2020.04.03 いちごジャム②

手作りでありながらアヲハタ感を目指すジャム作り垢はこちら。

誤解の無いように申し上げておきますが、僕はアヲハタをはじめとする大手ジャムメーカーや大規模に工場生産されるジャムを強くリスペクトしています。果物という生きた原材料を相手に品質を一定に保ちつつコストを抑えることの難しさは、手作りすればするほど身に染みる…。

一方で自宅手作りの良さは、細かいことは気にしないで好きなように煮れば美味しい!ということに尽きる。いちごは、そういう意味で最高の材料、つまり誰がどうやって作っても間違いなく美味しい。

『森のほとりでジャムを煮る』という小説に、次のような一節がある。
「厳密に比べれば煮詰まり具合とか、仕上がりの色なんかが違うのだろうけれど、家庭用に作るものなのだからそこまで考えなくて、好きなほう、やりやすいほうでいいと思う。もちろん、こだわることを否定はしないけれど。」(小鳩子鈴『森のほとりでジャムを煮る2』)

自宅手作りジャムの、これが真理だよね!

『森のほとりでジャムを煮る〜異世界ではじめる田舎暮らし〜』は、いわゆる「なろう小説」として生まれ書籍化された(漫画化もされてる)小説。上の一文はブルーベリージャムを作るシーンで主人公のモノローグとして挿入されているもの。ブルーベリーやいちごは特に、好きなように作っても絶対美味しい材料だ。

『森ジャム』で主人公が異世界転生して最初に作るのがいちごジャム。僕は初めてこのいちごジャムのくだりを読んだとき、本当に感動した。こんなにも、ジャムを煮るということにおける心の動きを見事に描いた作品が存在するなんて。主人公マーガレットのジャム煮に対する姿勢が、僕のそれと完全に一致している。他にもこの作品にはジャム煮描写における共感ポイントが、それはもうたくさんある。著者の小鳩子鈴さんが本当にジャムをよく煮る人なのは間違いなくて、でなければあんずの実に残った枝を折り取る快感など思いつくはずもない。もはや自分が書いた文章なんじゃないかと錯覚しそうになるが、いや僕はこんなにきれいな文章書けないなと思い直してようやく我にかえる。

ちなみに、『森ジャム』には当然ジャムがたくさん出てくるけど、物語に直接的に関わることはほぼない。そこが異世界だったとしても、そこに新鮮なフルーツと砂糖と鍋がある。だから煮る。それによって物語が動くことはないけれど、しかし欠くことのできない存在、いわばジャムは風景として描かれる。そういう世界観が素晴らしい。

話を戻す。

いちごジャムなんて誰がどうやって煮ても美味いし、好きに作れば良いのだけど、当方なぜか使用感の良さにこだわってアヲハタ感を出していきたい、ということだった。こだわることを否定はしない。

前回のいちごジャムではレモン果皮の煮出し汁を加えペクチンにより固まることを期待したが、結果としてはイマイチ。味は良いけどそこまで固くならなかった。原因としてありそうなのは、
① ペクチン量が足りない
② pHが高すぎてペクチンが固まる条件に入らない
あたりだろうか。どちらもいっぺんに解決できそうな簡単な方法は「レモンの量を増やす」に違いない。とりあえずそれでやってみよう。ただ、その分酸っぱくなってしまうので、砂糖は増やした方が良いだろう。

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栃木県産とちおとめを半割りに刻み、砂糖に漬けるが、今回は砂糖をいちごの重量の60%とした(いつもは50%)。

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ちなみに『森ジャム』の主人公マーガレットもゴロゴロ丸ごといちご派ではないようで、とりあえず半分か4分の1に刻んでいた。さらに鍋で潰すか潰さないかはお好みで、とのこと。また、砂糖は50%で、これくらいがしっかりとした甘味に仕上がってちょうど良いし、何より計算しやすいから、だそうです。

いちご約450gに対して、レモンを思い切って2個(やや小さめだけど)搾る。外皮は刻んで煮出す。

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いちごから浸み出した水分とレモン汁、レモンの外皮を煮出した汁を鍋に入れて煮詰める。

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いちご果肉は木べらで適当に潰しておいた。これを鍋に加え、さらに煮詰める。

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灰汁は丁寧に取る。じつは前回記事の分ではほとんど灰汁を取らないで作ってみたのだけど、やっぱり瓶詰めした時の見た目が悪くなってしまうので、きちんと取った方が良い。さらに瓶詰め時に泡を含む部分を先に取り分けてしまうと、瓶詰め後のビジュアルが格段に美しくなる。基本的にいちごは煮ると大量に泡が出てくるので、それをきれいに取り除くのはちょっと根気がいる。

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さて、見た目は良い。レモンを増やした効果もあって、バッチリ固まっている。

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しかしレモンが多くてさすがに酸っぱすぎるかもしれないなーなどと思いつつ味見すると、なんと…!

…あれ…?

苦い。

完全に、レモンの外皮の風味が強烈に効いてしまっている。これは…失敗と言っていいのでは…。だって、酸っぱいならまだしも、苦いいちごジャムはないでしょうよ…。口にした瞬間の意外性に、もはや笑うしかない。

しかし、いちごジャムはいちごジャムなのだから、いちごジャムの味がしなくてはいけないのである。固まったのは嬉しいのだけど、そのために味を犠牲にしてはどうしようもない。この「固さと味のトレードオフ」は、レモンを使う限り、もはやどうにもならないという感がある。あきらめて粉末ペクチンを投入するしかないのか…。

ジャムを失敗すると、めちゃくちゃ落ち込む。単純にがっかりするのもあるけど、ジャムは失敗すると鍋ごとなので、大量の不良在庫を抱えることになる。その「失敗したジャムを消費する」というタスクが加わり、たいへん気が滅入る。いちごジャムなんて誰が作っても美味しいとか言っておきながら、このザマだ。

と、がっかりしながら一生懸命消費してたんだけど、ふと思いついてやってみたこれ↓

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これは、申し訳ないけどかなりアリ!めっちゃ美味い!苦味、甘味、酸味がチョコレートのアイスと絶妙にマッチして、ちょっとしたレストランの食後のデザートの趣すらある。いやまあ、このためだけに苦いいちごジャムを作る気にはならないけど。

しかし行き詰まった。これからどうしよう。




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