2018.06.23 あんずジャム①
あんずは軽く水洗いしたら皮は剥かずに半分に包丁を入れ、手で捻るようにして半割にし、種を除く。
重量の半分の砂糖をまぶし、ときどき混ぜながら1時間おく。
中火にかけ、灰汁を丁寧に取りながら適当な固さになるまで煮る。煮詰まってくると焦げやすいので常に鍋底をかき回す必要がある。このとき好みに応じてヘラで実をつぶす。
瓶詰めして煮沸する。
こんな感じであくまでもスタンダードなレシピで作ったのが、こちらの写真、の左。
右は、これ。
https://www.1101.com/store/oragajam/2015/recipe_oa.html
そう、「糸井重里直伝のレシピ」だ。
今年のあんずではこれをやってみようと心に決めていた。以前ほぼ日で購入したあんずジャムが完全に美味だったからで、その元となったレシピである。
「本気めんどくさ仕込み」との触れ込みで、上述のようなスタンダードなレシピに比べると手間をかけている。一番の違いは材料をオーブンドライ、つまり100℃以下の温度のオーブンにいれて少し乾燥させる点。
というわけで、あんずシーズン到来を記念して2つのレシピでどっちがどれだけ美味しいのか比べてみようと思いたって煮たのが、写真の2つのあんずジャム。
今回はあくまで比較がしたかったので、同じあんずを使った。ただ、家庭の鍋のスケールで「同じ材料で作る」というのはとても難しい。パック単位でも熟し方に差があったりするからだ。
そこで、ひとつのあんずを半割にして、片方は普通のレシピ、片方は本気めんどくさ仕込みに使うことにした。これならば、ほぼ完全に同じ材料で作っていると言ってよいと思う。
いや、ランダムに分けても結果に大きな違いが出るとは思わないが、なんとなくそれだと試行をある程度繰り返さないと信頼できる結果が得られない気がする病気なもので…
まぁ、もともと工程の中であんずを半割にするので、別に手間ではない。続けて2回煮ることにはなるが、そもそもうちの鍋では1回で煮るには多い量だったので、別に手間ではないのだ。
で、結果はというと、普通のレシピの方が美味しかった。
酸味と甘みのバランスがよく、クセがなく後味がスッキリとしている。固さも程よく口当たりがなめらかで、ヨーグルトに入れてもパンに塗っても使いやすい。
写真をよく見るとわかるが、色も普通レシピ(左)の方がきれいに仕上がっている。
つまり、普通のレシピでかなり理想的なあんずジャムを作ってしまった。
ただ、この結果だけを受けて「本気めんどくさ仕込みのレシピはよろしくない」という結論は導かれない。むしろ「本気めんどくさ仕込み」の「本気のめんどくささ」が、ここから始まる。
正直なところ、オーブンドライの工程が加わる程度のことなら、マジめんどくさっていう程のこともないなと侮っていた。
いや、実際に手間は大したことない。マーマレードを煮ることを考えれば手間のうちに入らないと言っていい。
ただ、オーブンドライは新たに「勘」の入り込む余地を生んでしまった。
これが、めんどくささの根源だ。
要は何℃で何分オーブンに入れるかということなんだけど、最適な条件はそのときどきの材料によっても異なってしまう。レシピに「ときどき覗いてみて判断してください」としれっと書いてあるが、これこそ「勘」である。
ちなみに今回は100℃で1時間に設定したが、ときどき覗いて判断しようにも初めてでは判断材料もなく、とりあえず丸1時間オーブンに入れた。
失敗というわけではない。普通のレシピに比べて濃厚な香り、豊かな風味があり、これはこれで相当に美味い。ただ、色が悪くなってしまったのと、酸味も濃縮されてしまってとても酸っぱい。おそらく「勘どころ」を逸してしまったのだ。
そして「勘」とは複雑系の中で試行錯誤の経験から導かれる最適解だ。それは毎回の試行を反芻することでしか醸成されない。
煮ているあいだ灰汁がほとんど出なかった。普通のレシピではかなりもこもこ出てきたのに。
これは灰汁が無くなったというよりは、煮はじめる時点で水分が少ない(粘度が高い)ため浮いて来なかったのではないかと考えている。材料は同じなのだから、普通のレシピでは取り除いた灰汁も成分として含んだまま仕上げたことになっているのではないか。
もちろんそれが「豊かな風味」を作っている可能性もあり、実際に普通のレシピはとてもあっさりと仕上がっている。(これも美味い)
購入したほぼ日のあんずジャムもこの「豊かな風味」に惚れたのであって、それを除いてしまっては本末転倒である。
とは言え、泡として浮いてきた灰汁は丁寧に取っておかないと見た目の美しさを損なってしまう。
また、オーブンドライ後のあんずは、煮る時間が非常に短い。はじめから水分が少ないのだから当然といえば当然だが、それにしても10分弱しか煮ていない。それでも少し煮詰め過ぎた感じになり、風味も濃いが酸味も濃縮されてしまった。ちなみに普通のレシピでは煮た時間は20分程度で、余裕をもって火から下ろすタイミングを判断できた。
総合すると、色の悪さと酸味はオーブンの時間が長く乾燥が進み過ぎたこと、それに起因して煮詰め過ぎたことが原因ではないか。
例えば30分に縮めれば変色を防ぎつつ濃厚な香りを残し、かつ煮る際の取り扱いも容易で酸味や甘みのバランスも良くなるかもしれない。間をとって45分くらいが最適なのかもしれない。「ときどき覗いて判断」するにしても何をもって判断すれば良いのか。
温度はどうか。少し低め、95℃とかの方がよい?
むしろ105℃で短時間という線は?天板の位置は?
と、いろいろやってみなくてはいけないのか…
これは、本気でめんどくさい。(ニヤニヤ)
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