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2020.04.11/2020.04.25 いちごジャム③

ジャムの手作りにこだわっていると、どこかで必ず「ペクチンの壁」に突き当たる。

「ペクチン」という成分について、正直僕もあまり詳しくない。とりあえず、ジャムの固さはペクチンのおかげ、というのが常識としてある。市販ジャムの原材料にも「ペクチン」の文字。果実等にもともと含まれる成分で、粉末ペクチンとして売ってもいる。

しかし、その「ペクチン」とは、一体どのような構造をした分子でどのような性質があって、それはどのように制御されるのかを、僕は全く知らない。それを知らなくてもジャムを煮ることはできるからなんだけど、なんとなくきちんと勉強していないことに対する劣等感みたいなものは常に持ちつつジャムを煮ている。たまにネットで調べたりするんだけど、イマイチ要領を得ないんだよな…食品化学の教科書的なものでオススメあったら教えて欲しいです。

ペクチンの性質、というかジャム作りにおける話題のひとつとして、果物の種類によって含有量が大きく異なる、というのがある。要するに、煮ると固く仕上がる果物と、そうでもない果物がある。固くなる代表格がレモンをはじめとする柑橘類で、外皮の白い部分にペクチンを多く含む。だからマーマレードは上手く作ると美しいゼリーができるのだが、他の果物でも同じようにできたらいいのに!と考えるのが人情だ。しかし、いちごはそれだけ煮てもあまり固まらない代表格。じゃあどこからペクチンを持ってくるかという話になる。で、前回や前々回のいちごジャムではレモンの外皮を煮出してペクチンを採ろうと頑張って、その挙句失敗した。

もうひとつ、「ペクチンといえばコレ」な、果物がある。

りんごだ。

りんごも品種により差はあるが、いわゆる加工用と言われるものの方がペクチン豊富な傾向にあると思う。これとか↓
https://note.com/uncountable/n/n6a49ff32a8af?magazine_key=m1eb0ad26118c

これはジャム界隈にいるとしばしば目にする、というかジャム界隈の外ではほとんど認知されてないと思うのだけど、そのりんごからペクチンを抽出して利用するという手法がある。

というわけで、レモンペクチンに限界を感じた僕は、ついにりんごペクチンに手を染めることにした。粉末ペクチンじゃないから一線は超えてないと思うんだ。 

近所の八百屋に傷んだキズりんごが格安で売ってたので(「鳥のエサにどうぞ」との札付きで)、これを使用することに。

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ちなみに、こういうりんごをジャムにするのも悪くはないけど個人的にはオススメしない。「傷んだ材料とか不味い材料でもジャムにすれは美味しい」とはジャム作りにおけるよくある誤解のひとつで、美味しい材料で作った方が美味しいジャムができるに決まってる。(もちろん、不味くてそのままでは食べられないけどせめてジャムにして美味しくいただく、と言うのは全然アリ。)

りんごペクチンの抽出と言っても、りんご刻んで水で煮て、濾過するだけ。注意点としては、煮るときにレモン汁等を加えて酸性に寄せる(酸性の方がペクチンが溶け出すらしい)ことと、濾すときに搾らないこと。

刻んで↓

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レモン汁を加えた水で煮て↓

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濾す↓

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濾液を冷凍保存しておいて、なんでもいいのでペクチン少なくて固まりにくいなーという果物を煮るときに、この濾液=りんごペクチン液を加えてしまえば良い。りんごの風味があるにはあるが、りんごの風味はどんな果物とも馴染むので、それほど問題になることはない。市販の「果物だけで作ったジャム」で濃縮りんご果汁を使っている場合が多いのも、たぶんそれ。

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今回とりあえず、いちご約500gに対してりんごペクチン液を2カップ使用。どのくらい使ったら良いものか、そもそもりんごを煮た時にもっと煮詰めておくべきだったのでは、とかよくわからない点が多々あるが、懸案事項は懸案として、まあやってみることだ。

りんごペクチン液がちょっと薄いかなという気がするので、とろみが出るまで少し煮詰める。そこにいちごのシロップ(砂糖をまぶして浸み出した水分、砂糖はいちごの50%)を加えさらに煮詰める。

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果肉を入れてさらに煮詰めて、良い固さになったら火を止める。

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いい感じに固まった、かな?ペクチンの効果としては穏やかな感じだろうか。 

味は、言われてみれば、という程度にりんごの風味はあるけど、まあ「美味しいいちごジャム」だ。当然苦味はない。むしろ少し酸味を効かせるのにレモンを搾ってもいいかもしれない(果汁のみ加える)。pHを低くした方がペクチンが固まりやすいし。


ということでもう1回。今度はレモンを搾って加える(果汁のみ)。

また、これは思いつき、というか流行りだけど、いちごは果肉→シロップの順に加えることにしてみる。「果汁もしくはシロップ後入れ」は、マーマレードを作ってたときに「材料の加熱時間を短くして風味の損失を極力抑える方策」として採用したもの。普通、いちごだけで煮る場合は、果肉だけを先に火にかけるのは不可能で、シロップだけを煮詰めるか、全部いっぺんに煮始めるかしかない。しかし今回はりんごペクチン液があって果肉だけ先に煮るのも容易なので、やってみよう。

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材料の比率は、いちご500g:砂糖250g:レモン半個:りんごペクチン液250gくらい。いちごは刻んで砂糖をまぶしておき、レモンは搾ってりんごペクチンと合わせて鍋に入れトロみが出るまで煮詰める。

いちごは4分割くらいで細かめに刻んだ。いつも言うようにこれは完全に好みなんだけど、刻んだ方が砂糖に漬けた時に水分は出やすいので、今回のようにシロップと果肉を分けたい場合には向いてる。

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りんごペクチン液が少し煮詰まったところに、いちごの果肉だけ投入。それでも加熱すると水分が出てくるので、灰汁を取りつつさらに煮詰めていく。

ある程度の良いところでシロップを半分加えて煮詰め、さらに残りを加えて煮詰める。なんなら3回に分けても良い。

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ていうかこれ、ほとんど常に水分が少ない状態で煮続けることになるので、焦がすリスクがめっちゃ高い。粘度が高く、常に鍋底をかき回していないといけない。緊張感ある。灰汁を丁寧に取っていたら焦げたというのはありがちな失敗だが、それは鍋の中身すべてが犠牲になることを意味しており、気が抜けない。

ただ、一方で仕上がりの加減がわかりやすい気もする。果肉を後から加えると果肉から水分が出つつ煮詰まっていくので、いまいち変化が捉えづらい。今回のようにシロップを後から入れる分には見た目で明らかなので、火を止めるポイントも測りやすい。

そうして出来上がったいちごジャム。

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これ…これは、いちごジャム以外の何者でもない。他に言いようがない。もはや、いちごジャムのレシピはここに完成したのではないか。ここまでやると「買えばよくね」となるのがジャム煮の醍醐味である。


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