2019.09.15 桃ジャム(あかつき)
桃のジャムって言うと「すごい贅沢!」みたいな反応が返ってくることが多いのだけど、現実的には一玉500円するような桃は使わないので言うほどではない。なお僕の感覚で「言うほどではない」というのは1kgあたり1000円を超えないという程度の意味で、1kgあたり1000円と言ったらルバーブとかあんずとかの相場である。高価な材料といったら筆頭はやはりブルーベリーの1kgあたり2000円(そのかわり手間はかからない)。
で、桃はだいたい一玉200〜300g、ジャムにしてもいいかなーというのはそれが3玉入って300〜400円、せいぜい500円なので、意外なことにジャムの材料としてはむしろ安い部類だ。
ただ、桃ジャムがなんとなく贅沢に思える感覚も理解できる。生食がこんなに美味しいのに煮てしまうという点に、本能的な「もったいなさ」を感じてしまう。値段は言うほど高いわけではないのに。
それでも僕は桃を煮るし、なんなら煮るべきだと常々主張しているのだけど、その理由はごくシンプルで、桃を煮ると美味しいからに他ならない。どのくらい美味しいかというと、じつは僕の手作りジャム、というかジャムというものをあんまり積極的に食べない妻が「桃ジャム美味しい」と言ってパクパク食べる程度には美味しい。桃に砂糖を加えて加熱することで、豊かな香りが引き立ち、渋味が消え、口当たりは滑らかに、要するに幸福感を凝縮したような食べ物になるのだ。もちろん、ガリガリで多少エグミのあるくらいの桃を生で食べるのが好きなんだよ!という方もいらっしゃるとは思うが、それはそれとして、桃を煮ることによる世界の広がりをぜひ体験してほしい。
桃にもかなり多くの品種があるが、僕がジャム用に使いやすいと思ってるのは「あかつき」だ。香りは良いけど甘過ぎないし、果肉が固めでジューシー過ぎないので取り扱いが容易。皮の赤みも強く、種の周りの果肉が赤いこともあって、ジャムにしてもきれいな色が出る。何より比較的安く、たくさん手に入りやすい。
というわけで福島県産あかつき。
皮をツルッと剥く技として、30秒くらい湯通しするっていうのがあるが、あんまり上手くいったためしがないので、普通に包丁で剥いた。果肉は刻んだそばから変色するので、レモン汁をまぶす。
剥いた皮は取っておいて、100ccくらいの水で煮出す。
皮の色が煮汁に移る。これを使ってジャムもピンク色にするわけだ。なんで色を付けるのかというと、「かわいいから」で、それ以上の理由はたぶん無い。皮を煮出してペクチンを取るというのもあるかもしれないけど、そんなに変わるかなぁという気がする。
砂糖は果肉の重量の40%を量り、はじめに半量を入れて煮はじめる。皮を煮出した汁も入れるので、特に時間をおかずに点火しても問題ない。
今回、果肉をざっくりとくし切りにしただけだが、結果的にはもう少し細かく刻んでも良かった。果肉が固いためにあまり煮崩れない。後で鍋の中でヘラを使ってザクザクやったが、はじめから狙った大きさまで刻むほうが楽だと思う。ただ、空気との接触面積が大きいほど変色しやすいことを考慮すると、なかなか加減が難しい。まぁその点、固いあかつきは変色しにくいというのもジャムに向いてる。
灰汁がけっこう出るので丁寧に掬う。いつも言うように灰汁を取り切らないと瓶詰めしたときに泡が残り美しくない。
と言っても火にかける時間はそんなに長くないので、あんまりゆっくり灰汁を取ってる場合でもない。10分ほどぐつぐつ煮たら、残り半分の砂糖を加える。
ここからまた10分程度ぐつぐつ煮る。仕上がりの固さをイメージして、鍋の中の様子を見ながら勘で火を止める。
はい完成。ちょっと実残りが多いけど、まぁこれはこれで美味しそうだから良しとする。実際美味い。桃ジャム全般に酸味は弱く甘みが強いのだけど、今回そのあたりもバランスよい仕上がりだ。
ただ、「勘で火を止める」とかカッコつけておきながら仕上がりがゆるい…。もう少し煮詰めてもよかった。果肉が煮溶けないことも影響してるかなーとは思うので、やはりもっと細かく刻み、且つ鍋の中で軽く潰すことで繊維が出るようにすれば、もう少し固さが出るのではないか。
今回は果肉の部分とシロップが分かれてしまっており、プレザーブスタイルとかゴロゴロ果肉ジャムとか言うと聞こえは良いが、こういうのは食パンにつけようと思ったときにすごく使いづらい(大きい果肉は転がり落ち、シロップはとにかくたれる)。なんなら果肉を刻む手間を惜しむがためにそういう売り方をしてるんじゃないかと穿った見方をするほど、僕は食パンから果肉が転がり落ちシロップをたらしてテーブルを汚すのが許せない。大人なんだから気をつけろと言われると返す言葉もないが、とにかくジャムを名乗るからにはもう少し粘性がほしい。今シーズンもう1回はチャレンジしておきたいなぁ。
色はきれいなかわいいピンク色でかなり満足。ちなみに、少し前に福島県産白鳳で作ったのがこちら。
味はこれもかなり美味しかったのだけど、色はほのかーにサーモンピンクくらいで、まぁそれはそれで桃っぽくはあるんだけど、やはりあかつきのピンクは魅力的だ。
それと、こちらは鍋の残りをただの炭酸水で割ったピーチフィズ。
なにこれめっちゃ美味い。