圏外

 10年くらい前まで電車に乗っていると田舎を通る時やトンネルでよく圏外になったものだが、最近では全く圏外を見なくなった。
 今回はスマホが圏外になる廃集落「蔵玉集落」の話をしたいと思う。千葉県には特に君津市にいくつも廃集落が存在しており、過去の記事で3つの集落について取り上げているが、圏外になったのは石射太郎山北の山中に位置する台倉集落くらいで後は4Gくらいで済んでいた。しかし、蔵玉集落は車で乗り入れられるほど道が整備されてはいるものの相当に山奥であるため、近くに基地局がないのかもしれない。道中の写真はないが、薄暗い切り通しとトンネルを抜けて橋を渡り、峠道を登って行った先にある。あまり有名ではないが、厳密に言うと蔵玉地区にある林道小仁田線の終点近くに位置する3軒の集落のことを指しており、地区内には人が居住している。トンネルの手前までの民家は人がいて腰が90度に曲がったおばあちゃんが歩いていた。また、この手の廃集落には珍しくグーグルマップで検索できる。

集落内の熊野神社
普通に開いてしまった
弁当屋の廃墟

 当たり前だが、3軒ともしっかり戸締まりされていて管理されている様子。人が住まなくなったのはここ数年だと予想できる。集落内でさえ圏外なのでかなり不便だっただろう。弁当屋はどう考えても立地が悪すぎるし、手前の2軒より年季が入っている。わざわざ行く場所ではないが、あと半世紀も経てば湯ヶ滝や台倉同様歴史を感じる廃集落に成熟するのではないかと思う一方で、その頃には日本の人口は一億を割っているに違いないのでこの時代の廃集落なんて珍しくもなくなっているだろう。
 ちなみに林道や酷道の類いを通るのはそこに廃墟があるからであって特に好きではないのだが、集落を抜けて真っ直ぐ行くといよいよ未舗装の小仁田線の終点に辿り着く。終点の手前にはバリケードがあってその先は橋で林道加勢線と繋がる予定らしく工事中になっている。幻の加勢集落はその林道沿いにあるらしい。駐輪できるスペースを求め林道の交差点を転回して立ちゴケしていたら車が来てこの先は通れるかと聞かれたが、行ってもいないのに工事中なので無理っすねと適当に答えた。多分行けると言ったら行けなかったじゃないかと思われるし、行けないと言ってもあそこまでわざわざ来たのだから結局行くだろう。男はそういう生き物だ。

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