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サラバ青春

2007年、春。

私のひとり暮らしが始まった。

高校卒業までを大阪で過ごした私は、東京にある芸術系の大学に通うため上京した。
はじめてひとりで住んだ家は埼玉県の所沢駅が最寄りの新築の学生マンションで、駅から徒歩6分、3階建の1階で6.5畳の1Kの部屋だった。家賃は確か6万ぐらいだったと思う。

東京の大学と言っても1年生と2年生は所沢の航空公園駅が最寄りの所沢キャンパスだったので、東京住まいではなかったが、なんとなくダサく感じたので大阪の友達には東京に住むと嘘をついた。

大阪から所沢への引っ越しは母親と二人、車で荷物を運んだ。当時好きだった「Mr.Children(以下「ミスチル」←この後でてくるのか?)」とか母親が好きだった「サザンオールスターズ(以下「サザン」)を流しながら、片道6時間ぐらいの運転を二人で交代しながら東京(埼玉)へ向かう。
推薦入試だった私は、高校在学中に早々に運転免許を取得していたのだが、これほどの長距離運転は初めてだった。
そんな中、道中、ひとり暮らしや大学生活に胸躍らせながら運転していた私は、スピード違反で白のクラウン(覆面パトカー)に止められ、先日取得したばかりの免許の点数を引かれてしまったのだった。
(それ以降、安全運転を心がける人間になりました。)

無事に新居にたどり着いた頃には日も暮れかけていて、家具や家電もなくダンボールだけの部屋を残して、所沢の駅前へ母親との最後の夕飯を食べに出かけた。その後、「西友」で布団や竿竹、箒と塵取りなんかを購入。

翌日、朝から車で立川の「ビックカメラ」に行って、型落ちのテレビ、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジがセットになった「新生活応援セット」なるものを買い、無印で安いベッドも買った。
母親はその日の昼過ぎに大阪に帰っていった。

生まれてから18年間、ずっと一緒に生きてきた母親からの自立は意外とあっさりしていたように思う。

そして、はじめてのひとり暮らしが始まった

大学が始まる1週間前から新生活を始めた私は、次の日もやることは決まってなかったのだが、疲れてたので、その日は早々に寝ることにした。

ひとり暮らし初日は朝起きると少し寂しかった記憶がある(それ以来、ひとり暮らしで寂しいと思ったことは一度もない)
とりあえずその日は、近くの「ドン・キホーテ」で8000円ぐらいの自転車を買って、家から大学までの道のりを確認した。
思い返せば、大学の入学式までの何にも予定のない1週間は、ひとりでいろんなところに行ったな。

まず、大学デビューに向けて服やカバンを買おうと、当時のファッション雑誌で度々その名を聞いた代官山へと足を運んだ。しかし、代官山はあまりにも物価が高過ぎた。全然手が出せない。とはいえ所沢から代官山までの電車賃もバカにならないので、なけなしのお金でビームス×ポーターのポーチを買った。今思うと何故ポーチなんか買ったのか、、、。

おしゃれタウンは物価が高すぎるので、次の日は横浜の海の近くのアウトレットモールへ。
所沢から横浜、当時はまだ副都心線がなかったのでアウトレットに行くには代官山以上にお金も時間もかかったが、さすがアウトレット、東京のおしゃれタウンと比べたら断然安い。
そうして大学に着ていく服を揃えたのであった。

おしゃれな食器を揃えるために自由が丘に行ったこともあった。
自由が丘の食器の店やキッチン用品店など何一つ知らなかったし調べもせずに、ただおしゃれなイメージがあったので自由が丘に降り立ったのだが、どこで買っていいかわからず、しかし何としてでも自由が丘で食器を買う!という思いから100円ショップでお皿やコップ、包丁なんかを大量に購入した。
帰りの電車は食器類が重すぎてとっても大変だった。
言わずもがな所沢で買うべきだったと後悔している。

入学式直前の最後の何もない日、思い立って所沢から川崎まで自転車を漕いだことがある。
地図上では所沢から東京を南下して多摩川を越えれば川崎市なのだが、距離にして30km弱あった。
その日はとても気持ちのいい陽気で、イヤホンして音楽を聴きながら(昔の話です)東京を自転車で駆け抜けることの喜びを噛み締めていた気がする。
高校を卒業したばかりで少しセンチメンタルな気分も残っていたので、チャットモンチーの「サラバ青春」を聴きながら桜がまだ残る多摩川の河川敷を走ったのが、我ながらエモいシチュエーションだなと思う。

今思えば、本当はこの時が青春の始まりだったんだ。

大学に入学して

大学に入学してからの話は触りだけ。
そこにはいろんな人間がいて、毎日が刺激的だった。
ただみんなに共通して言えることは、自分が好きなものを胸を張って話せる人達と場があった。
少なくとも始まりは、みんなデザインや本や映画や音楽が好きだった。
授業終わりに所沢の部屋に集まって宅飲みしながら語ったり映画を観たり、大学生からしたら当たり前のことかもしれない。
でもそんな些細なことが「ミスチル(やっと出た)」ばかり聴いてた私に音楽を教えてくれて、「スターウォーズ」しか語れなかった私に映画を教えてくれた。

おかげさまで、そんな自分でも少しは音楽とか映画について語れるようになった。だが、今でも「ミスチル」も「スターウォーズ」も大好きである。

はじめて借りたあの部屋を離れて、もう10年以上。
誕生日、新所沢の喫茶店のバイト終わりに家に帰ると友達がベランダにいっぱい隠れてて祝ってくれたこと。かなり近所迷惑だったと思う。
恥ずかしくなるほどキラキラした大学生の誕生日って感じだけど、ひとり暮らしでも人の愛を感じられた大切な出来事だ。

今は全く知らない誰かが住んでるあの部屋で、たしかに私は青春を謳歌していた。



「サラバ青春」を使った、その年に流れていたリクルートのCM

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