R6予備論文民法 再現答案
自己評価:D
第1 設問1(1)
1 Cの請求が認められるためには、①C所有、②D占有が認められる必要がある。Dが現在乙土地を占有している点については問題がない(②充足)。
2 では、C所有が認められるか。
(1)乙土地を所有していたAは、失踪宣告により死亡したものとみなされる(民法(以下、法令名略。)31条)。これにより相続(896条)が発生し、乙土地はBとCの共同相続となる(898条1項)。
(2)Cとしては、Aの「乙土地をCに相続させる」旨の遺言が遺産分割方法の指定に当たるとして、乙土地がCの単独所有になると主張することが考えられる。かかる主張は認められるか。
「相続させる」旨の文言は、社会通念上、特定のその文言通りに遺産分割をするよう指定しているものと考えるのが自然である。したがって、「相続させる」旨の文言は、特段の事情のない限り、遺産分割方法の指定であると解する。
本件でも、Aは「乙土地をCに相続させる」との遺言をしているから、乙土地をCが相続するよう遺産分割方法の指定を行ったと考えるのが自然である。
よって、乙土地はCが単独で相続したことになる。
(3)以上から、乙土地のC所有は認められるとも思える。
3 ここで、Dとしては、Cは乙土地所有をDに対抗することができないと反論することが考えられる。
たしかに、C持分の売買については、無権利者からの譲受けとしてDはCに対抗することができない(177条)が、法定相続分を超える部分の譲渡については、Cは登記を備えていなければ第三者であるDに対抗することができない(899条の2)。
よって、Dの反論は認められる。
4 以上から、Cの上記請求は認められない。
第2 設問1(2)
1 Aは、失踪宣告の取消し(32条1項)によってFが売買契約によって得た乙土地の所有権を失い(32条2項本文)、乙土地の所有権がAにあるとして乙土地の明渡しを請求する。
2 Fは、失踪宣告後取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない(32条1項後段)として、Aの主張は認められないと反論する。かかる反論は認められるか、「善意」の意義が問題となる。
契約当事者双方が善意でなければならないとすると、取引の安全を害するおそれがあるとも思える。しかし、契約当事者のうち片方が善意であれば失踪宣告された者が取消しを主張することができないとすると、失踪宣告された者の保護に欠ける。
そこで、「善意」とは、契約当事者双方が善意であることを必要とすると解する。
本件では、EはAが生存していることについては知らなかったものの、FはBからAが生存していることを伝えられており、Aの生存について知っていたから、EF間の売買契約において契約当事者双方が善意であったとはいえない。
よって、「善意」の要件を満たさない。
3 以上から、Fの反論は認められず、Aの上記請求は認められる。
第3 設問2(1)
1 GのJに対する500万円の不当利得返還請求(703条)は認められるか。
2 Jは、本件誤振込みにより500万円の「利益」を得ている。また、Gは本件誤振込みにより500万円の「損失」がある。これについての因果関係も問題なく認められる。
3(1)では、Jは「法律上の原因なく」利益を得たといえるか。
(2)不当利得制度の趣旨は、正義・公平である。そこで、「法律上の原因」の有無は、形式的・一般的には正当視される財産的価値の移動が、正義・公平の観点から、実質的・相対的にも正当視されるか否かによって判断される。
(3)GとJには面識がなく、GがJに対して債務を負っていたという事情もない。そうだとすると、本件誤振込みはそもそも形式的・一般的にも正当視されない。
よって、「法律上の原因なく」といえる。
4 なお、J名義口座からは本件誤振込みの後に出金が行われていないから、Jはいまだ「利益」を得たとはいえないのではないかとも思える。しかし、組戻し手続はJの承諾を得なければすることができず、K銀行が強制的に組戻し手続をすることはできない。そして、口座に金銭が振り込まれている以上、Jはいつでも金銭を引き下ろして自由に使うことのできる状態にあったのだから、「利益」を得たといえる。
5 以上から、Gの上記請求は認められる。
第4 設問2(2)
1 GのLに対する500万円の不当利得返還請求が認められるか。
2 まず、Lは500万円の「利益」を得ている。Gの「損失」も明らかに認められる。
3 ここで、Lの利得はJの一般財産からの弁済であるから、Gの損失との間には因果関係がないとのLの反論が考えられる。
因果関係の有無は、相当因果関係があれば足りると解する。不当利得制度の趣旨は正義・公平にあり、厳格に解するべきでないからである。
J名義の口座は、ここ数年間残高は0円であって、本件誤振込みにより現金500万円の利得を得なければ、LはHから債務の弁済を受けることもなかった。
よって、相当因果関係が認められ、Lの反論①は認められない。
4(1)Lの利得はHに対する債権の弁済の受領であり、「法律上の原因」があるとのLの反論が考えられる。
(2)「法律上の原因」の有無は、上記基準によって判断する。
(3)Lは、債権の弁済としてJから500万円を得ているから、かかる財産的価値の移動は一般的・形式的には正当視される。
もっとも、LはJが誤振込みによって500万円を得たことについて悪意の上で500万円を受領しているから、Lについては保護に値せず、実質的・相対的には正当視されない。
よって、「法律上の原因なく」利益を得ているといえるから、Lの反論②は認められない。
5 以上から、Gの上記請求は認められる。
・全体的に書き負けている印象。
・何について善意なのか、悪意なのかをしっかり明示することができなかった(特に設問1)
・設問1については相続関係の条文引くのが全然できていない。主張を法律構成するために日頃から条文を引いていく癖をつけたい。
・要件を順に検討していくよう意識することは今後も続けたい。