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【超能力捜査】コールドケース—血が解く未解決事件の真相

1973年7月16日、アメリカ・コネチカット州。白昼、ダウンタウンの立体駐車場で21歳の歯科助手、ペニー・セラが惨殺される。彼女は10年前に母親が亡くなって以来、父親と妹を常に支えてきた。高校の卒業アルバムの中では自身を、笑いと陽気な精神を持っていると表現している。

その日彼女は家具を買いに行くために仕事を休み、駐車場の最上階に車を停めたが、車を降りたところでロックする前に何者かによって車に押し込まれた。もがく中で彼女は犯人の手を切り階段へ逃げ出すが、追い詰められ心臓を刺されてしまう。

ジョージ・マザケイン刑事は、この事件の解決は朝飯前だろうと考えていた。この事件には、一部始終を目撃していた5人の目撃者がいる。血液型も分かっていて指紋もある。名前と住所以外は全て分かっていた。

事件から数時間以内には、付き合ったり別れたりを繰り返していたペニーの彼氏も容疑者として尋問。目撃者はラインナップの中から彼を選ぶが、彼には12人を超える証人がいて、彼がレストランで料理をしていたという確固たるアリバイがあった。

彼の釈放により、マザケイン刑事は、無作為の暴行であるという独自の結論を下す。おそらく前科のあるものの犯行だと。もしそれが正しければ、早期解決の望みはほとんどなくなってしまう。

70年代の技術は基礎的なものだったが、法医学チームはペニーの車から豊富な証拠を発見していた。後部座席のテッシュボックスに指紋が残っており、同じ型の血液がついたハンカチも見つかっていた。血液とは別に、自動車のボディをスプレー塗装する際に使用されるフロンガスと工業用グリースも残されていた。

スプレーペイントとグリース・・。車の扱いで手が汚れる者の犯行であることは容易に予想がついた。警察は、何百人もの地元の整備士を調べるが、指紋は照合できなかった。女性は外出を恐れ、一晩で街はゴーストタウン化する。数週間、数ヶ月が経ち、事件は行き詰まりを見せた。

マザケイン刑事は、多くの人が珍しいと考えるであろう決断をする。超能力者に依頼することにしたのだ。

「調査が行き詰まって、それを再開したいと思ったら、間違いなく霊能者に頼りたいと思うでしょう。」

彼はメアリー・パスカレラ・ダウニーに連絡を取る。彼女は超能力者であり、タイム・ウォーカーである。

彼女は多くの捜査に新たな次元をもたらしている。ほとんどの人にとって、時間は単なる概念であり、人生の断片を測る手段である。しかしメアリーにとっての時間とは、擬人化されており、それに話しかけることができる。

メアリーは言う。

「時間は現在、過去、未来と私達を取り囲んでいます。時間を変えることはできません。動かしたり遊んだりすることはできますが。現在と過去は利用できるものです。いわば大きな図書館のようなもの。糸を拾い上げてボールのように巻き始めるのと同じで、巻けば巻くほど大きくなって、より多くの情報を編集するのに時間がかかる。それは動くカメラのようなもので、写真を撮って保存するのです。それを注意深く聞けば、時間は言葉の図書館のようなもので、情報を与えてくれます。私にとっての時間とはどんなものか聞かれたことがありますが、たくさんの思考パターンが含まれる大きな海のようなものでしょうか。ボートが浮かんでいて、本当に欲しければボートまで泳いで乗り込み、そのボートからあらゆる情報を入手するのです。顔の印象があれば顔を描きます。」

メアリーの似顔絵は目撃者が見た犯人像に似ていたが、十分な証拠ではなかった。しかし彼女はいくつかの重要かつ不可解な手がかりを提供していた。

メアリーは言う。

「分かっていたのは、青がこの事件にとって非常に重要であるということです。何度も繰り返して、青がとても重要だと言っていたからです。」

マザケイン刑事は言う。

「青?私は独り言を言っていました。車は青だった。事件が起こったフロアに青はあるのか。いや、ない。青は何を意味しているのか。彼は青い服を着ていたのか。青い靴を履いていたのか。青い帽子をかぶっていたのか・・。」

確かに車は青で、ペニーのドレスも青だった。しかしそれだけでは犯人は特定できない。

メアリーは言う。

「オイルの匂いか、ガレージで感じるような匂いがしました。だからそれをその人に結びつけて、整備士に違いないと自分に言っていました。」

メアリーは整備士と関連づけたが、ペニーの彼氏の関与の可能性も、整備士が関与していた可能性も公表されていなかった。

そして彼女は3つ目の不可解な手がかりを提供する。

メアリーが言う。

「『Water』が何度も繰り返して出ています。新しい手がかりでした。その時点で、私は『Water』は重要な手がかりだと思いました。」

メアリーから犯人に繋がる直接的な手がかりが得られないマザケイン刑事はもどかしく思っていた。しかし彼女は事件の問題点についての洞察力を持っていた。

メアリーは言う。

「私は言いました。事件は何年も何年も何年も解決しないだろうと。犯人はごく普通の人間で、隙間をくぐり抜けるような人物だからです。だから何年も後になるでしょうが諦めないでくださいと言いました。血が解決するからと。その時は自分でもそれがどういう意味なのかは分かっていませんでした。」

マザケイン刑事は言う。

「私は、この男が犯罪を犯すまで待たなければいけないのか?と聞きました。彼女はそういうわけではないけど長い時間がかかると言います。私は、『あまり励みになることではないね』と言いました。」

事件解決はないように見えた。確かに上司と共有したい情報ではないだろう。そのことに触れた時、上司からは、古き良き時代の警察の仕事に戻れ、と言われてしまう。

上司の嘲笑を無視し、メアリーと協力することにした理由は二つあった。第一に、従来の警察の仕事では良い結果が得られなかったこと、第二に、ペニーの父親ジョンからのプレッシャーを受けていたことである。父親ジョンは毎週地元の新聞に広告を載せて、犯人を探し出そうとしていた。

マザケイン刑事は父親ジョンと共にメアリーの元を訪れる。

マザケイン刑事が言う。

「彼はこの事件を保留したくなかったし、誰かが自白をしてくるまで20年とか待つということはしたくなかった。誰かが毎日この事件に取り組んでいることを知りたかったのです。それが彼の使命で、それを全うしていました。」

彼らはペニーのお気に入りのコートを持参していた。物体を通してサイキックリーディングを行うプロセスはサイコメトリーとして知られている。

メアリーは言う。

「家に入る時、良い気分になるか嫌な気分になるかのどちらかです。誰かに会う時も、その人のことを気に入っているか、警戒しているかのどちらかでしょう。これはあなたを守るために手を差し伸べている自身のエネルギーなのです。視聴者にとっても同じ。誰かに会う時、用心深く家に入り、早く出たいと思った経験は誰にでもあるのではないでしょうか。それがサイコメトリーの世界なのです。エネルギーが語りかけているのです。」

メアリーはペニーがどのような女性で、何が起こったと考えているかを話し始める。

「唯一確かに言えることは、彼女と会ったことのない、何の関係もない人物による犯行ということ。彼女は間違った時間に間違った場所にいたということでした。ただ偶発的に起こった事件だったのです。」

この事件は偶発的なものだと考えていたマザケイン刑事の疑惑は確信に変わった。セッションの後、マザケイン刑事とペニーの父親は話す。

「私はセッションをどう思ったか彼に聞きました。快適だったか、それともインチキだと思ったかと。これらの情報を彼女はどこで入手したのだろうと言うと、彼は、『分からないが彼女は当たっている、彼女を信じます。もし助けになってくれるなら彼女に関わってほしい』と言いました。そこで、彼女が犯罪現場に行きたがってることを伝えると、彼は大賛成でした。ここまで来たのですから、その部分だけ未完了にしておく理由はありません。」

ペニー殺害から1年以上経っていたが、警察の捜査は何も生み出していなかった。マザケイン刑事はメアリーを犯行現場へ案内する。

「彼女は辺りを見回していました。そして、ひどい頭痛がすると言いました。私はそれが論理的に事件とどう関連があるんだろうと考えていました。」

メアリーは言う。

「駐車場に着いた時、犯人がどんな人物だったかがより明確になってきました。犯人が制服を着ているのが見えます。ガソリンの匂いがします。ガレージで働いていることが分かりました。油まみれの雑巾で手を拭いているのが見えます。Eの文字が書かれた名札をつけた制服が見えました。分かったことは、犯人はガレージで働いていて、おそらく整備士だったこと、痩せていて、筋肉質で、体重はせいぜい160〜165ポンドぐらい、頭に怪我をしていたことです。」

これにより、マザケイン刑事は答えよりも疑問の方が増えていた。主な疑問は、実際に何が起こったか、犯行当時この男が何を考えていたかということだった。

メアリーは言う。

「駐車場にいる間、ペニーがとても愛らしい女性だったことを意識していました。彼女は小さな虹のよう女性です。論理的で合理的、常識があって優しく理解力もある。彼女が生き残るために戦っているのが見えます。なぜ誰も彼女の声が聞こえなかったのか・・。彼女は叫んでいたはずです。」

マザケイン刑事が言う。

「宗教的な体験をしたようには言いたくないけど、もしかしたらそうだったのかもしれないし、そうじゃなかったのかもしれない。ただそう感じました。彼女は持っている才能から情報を得ていて、今までそんな経験はしたことがなかった。以前にも何人かの霊能者と仕事をしたことはあり、その後も何人かありますが、そんな風に、助けを得るという感覚を感じたことはありません。」

メアリーには、青が非常に重要であることが分かっていた。そして駐車場に近づいた時、駐車場が青いフロアなのだと感じた。しかし実際に行くとそこは青ではない。係員に確認すると、数年前まで各階のフロアを色分けしていたが、数字形式に変更したと言う。メアリーは正しかった。事件当時、その階は青だったのだ。

メアリーを駐車場に連れて行ったことで、いくつかの新しい手がかりが得られたが、どの超能力者にも限界はある。

メアリーが言う。

「私はあるポイントを超えて関与しません。同じような超能力者は多いことに気づくでしょう。私達は殺人事件を解決するつもりはありません。警察ではないからです。見逃したり、注意を払っていないことを知らせる情報提供者になるだけです。」

マザケイン刑事は捜査を続けるが、目立った進展が見られないまま数年が経過。1979年、彼は17年間の勤務を終え、限界に達したと判断し引退する。

「私は石の壁にぶち当たったのだと思います。この事件に集中してきました。メアリーも全ての手がかりを提供してくれました。しかし私は全てをまとめる何かが必要でした。そしてそれができなかった。言い訳をしているわけではありません。ただある地点に達したと言ってるだけです。自分が役に立っているとは感じられなかった。」

事件から5年以上が経過しても事件は未解決のまま。実際には、この事件に進展が見られるまでには、それから更に6年かかることになる。

ある女性が通報で、夫に、ペニー・サラにしたのと同じことをすると脅されたと言う。ペニーの高校の同級生だったこの男は逮捕され、ペニーの殺人罪で起訴された。

容疑者はペニー殺害の裁判にかけられようとしていた。この事件に5年間取り組んできた、マザケイン元刑事は独自の決断を下す。

「この男性は無罪だと分かっていました。すでに調べていたし、働いていたというアリバイがありました。」

裁判前日、驚くべき発表がされる。容疑者の血液型はA型。犯行現場で見つかった血液はO型だったのだ。訴訟は却下された。男性は完全に無罪となるが、被害を受けた彼の人生は決して同じものではない。免罪で告発された人が再び微笑みながら立ち去るのは映画だけの話である。

再びペニーの件はコールドケースとなり、数年が経過する。そしてこの事件や90年代初期の他の多くの事件にとって幸運なことに、コンピューター指紋データベースの作成により、アメリカの警察の様相は永遠に変わることになる。

新しいシステムにアップロードされた最初の指紋の一つが、ペニー・サラの車内で見つかったティッシュの箱からのものだった。新しいシステムのバックログのため、一致するものを見つけるのに3年かかった。

その男の名前はエドワード・グラント。そこに書かれた文字Eは、まさにメアリーが予言した通りエドワードを表す文字Eである。そしてある時点でエドワード・グラントは車の修理で生計を立てるようになり、メアリーの予測は再び完全に正確であることが証明された。

グラントは1994年に家庭内暴力で逮捕される。彼に前科はなかった。メアリーは、普通に生活をしている人物と予見していたが、彼女はどこまでも的中していた。グラントはクリーンで何の変哲もない市民だったのだ。

メアリーは、血が解決するから諦めないようにと言っていたが、彼女自身、血が告げる意味を知るはずもなかった。彼女が20年以上前にそれを予測した時、法医学DNA技術は存在していなかったからだ。

そして、殺人当日、グラントは近くの退役軍人局病院に、昔の頭部外傷の治療を受けに行っていたことが判明した。

マザケイン刑事は言う。

「この男の頭には3枚のプレートが入っています。30年後、メアリーは彼の頭痛を感じ始めていたのです。」

メアリーの予見は全て的中していたが、「Water」のビジョンは何だったのか・・。グラントはウォーターベリーという町の近くに住んでいたことが判明する。

グラントの血液と犯行現場に残された血液が一致。犯行から約26年後の1999年6月24日、エドワード・グラントはペニー・セラ殺害の容疑で逮捕され、その後懲役20年の判決を受けた。80歳になるまで仮釈放の資格はない。グラントは無実を主張し続けたため、殺害動機を知る由はないかもしれない。

この事件の悲劇的な皮肉は、犯人に裁きを受けさせるために人生の20年以上を捧げたペニーの父親ジョンがグラントが逮捕されるわずか8か月前に亡くなったことだった。

メアリーは最後に言った。

「ジョンが天国に行って、神にこう言っているのが見えました。神様聞いてください。もう何年も経っています。メアリーは解決すると言いました。だから解決してほしい。神は『分かった、解決する』と言いました。だから解決したのです。」


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