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【超能力捜査】犯人の住所を霊視し事件解決【ゆっくり解説】
1991年7月29日、アメリカ・メリーランド州の田舎町。養鶏業を営む55歳の女性、ミルドレッド・ルイーズ・ウィリアムズ(通称ルイーズ)が突然姿を消す。
ルイーズは年老いた母に、正午には戻ると言って仕事に出かけた。しかし帰って来なかっため、母は孫にあたるルイーズの娘ダーンに電話をかける。ダーンは、探してみるが、恐らくあちこち飛び回っているのだろう、心配いらないと言う。
ルイーズの娘ダーンは32歳で、夫ビリーと息子と3人で近所に住んでいる。彼女は母ルイーズのことを全く心配していない様子だったが、年老いた母は心配していた。ルイーズは約束に遅れることはなく、そこへ行くと言ったら必ず姿を現したからだ。
その日の19時半、ダーンはルイーズの赤いトラックで実家に姿を現し、スーパーの駐車場でトラックを見つけたと祖母に伝える。恐らくルイーズは飲みに行って、飲酒運転をしたくなかったのだろうと。
午前0時になってもルイーズからの連絡はない。祖母は孫に警察に連絡するように念を押し、彼女が連絡しなければ自分がすると言った。
ダーンは警察に電話をしたものの、母親が男性と家を出て、祖母がヒステリーになって騒いでるけど大丈夫だ、といった内容だった。もちろんこの件を警察が気にかけるはずもない。
楽しいことが好きでパーティにもよく顔を出していたルイーズは、2ヶ月前に夫を癌で亡くしていた。
ルイーズは8人兄弟の中の1人である。兄弟達は何かがおかしいと感じていた。彼女がいなくなった日は家族バケーションが計画されており、これまでルイーズが不参加だったことは一度もない。
消息不明から2日後、ルイーズの兄弟デールとロバート、その妻はルイーズの住んでいる町へと向かう。
最初に彼らの目についたのは、ダーンがスーパーの駐車場から運転してきたルイーズの赤いトラック。車は洗車されたばかりでとても綺麗だった。兄弟は違和感を覚える。
ルイーズは金庫に多くの現金をしまっていたが、金庫は開いていて現金が無くなっていた。警察が来るのに十分な理由だ。しかし警察が来た後も、家出ではなく犯罪という流れにはならなかった。警察は行方不明者としての調査はしたが、何も手がかりは得られない。
ルイーズの兄弟は自分達の手で解決しようとする。病院や老人ホームに電話をかけ、森の中を歩いて探した。郡内のあらゆる場所を探したが何も見つけられない。行き詰まりだった。ダーンとその夫ビリーはテレビ出演し、涙ながらに助けを求める。
失踪から数日後、デールはある超能力者が行方不明の警察犬を発見したという記事を目にする。彼は他の家族にすぐに電話して言った。これが解決方法なのかもしれないと。
地元の超能力者、デボラ・ハイネッカーは超能力捜査においては新人である。
彼女は言う。
「私は対象物や被害者の所持品に焦点を合わせることができます。するとビジョンが見え始めるのです。音声が聞こえることもあります。自分自身が被害者になることを許すと、厳密に何が起こったのか、より良いビジョンで見えてきます。」
デボラはルイーズの住む町を訪れることに同意する。が、その前に、ルイーズの写真と所有物を家族に送ってもらう。
「焦点を合わせると、335という数字が入ってきました。白い馬も見えます。それから、ルイーズがバケーションか何かに出発しようとしているのも見えてきました。金属の屋根の建物もはっきりと見えます。」
3日後、家族はデボラを空港まで迎えに行く。が、彼女からの質問には誰も準備ができていなかった。
「335という数字に、誰か何か心当たりはありますか?」
「ダーンとビリーの住所だ・・。」
ルイーズの姉妹の夫の1人がつぶやく。が、ダーンとビリーもそこにいるため誰も何も語らない。
ロバートはこう証言する。
「ルイーズがいなくなる2週間前、遺言書を書き換えるとビリーに言ったことで、娘夫婦は大騒ぎでした。彼らは最近、息子をルイーズに会わせなくなっていました。その報復として彼女は、遺産相続から娘を外すと言ったのです。彼女が消息不明になってから、ビリーが私の目を見たことはありません。心の深い部分で悪い予感がしていました。」
デボラのビジョンどおり、家族にはノースカロライナ州で集まる1週間のバケーション計画があった。家族全員がそこで再会する予定だったのだ。
しかし白い馬と金属製の屋根のある建物については、ミステリーのまま。少なくともこの時点では・・。
兄弟達はデボラを、彼女が見た335という数字の住所、ダーンとビリーの家へ連れて行く。家の近くのフェンスの中には白い馬がいた。
不安な気持ちになったデボラはロバートの妻を呼ぶ。
「正直言ってビリーが怖いから、彼と2人きりにしないでほしいと言いました。彼女も同意していました。最初から私を彼と2人きりにさせるつもりはなかったようです。」
中へ入り、キッチンに行くとデボラはひどい頭痛を感じる。
「何かで頭を殴られた感じでした。」
彼女のその言葉はビリーを震撼させ、不安にさせたようだった。
「ダーンとビリーが、私に家の中にいてほしくないと思っているのを感じました。彼らはソワソワして私を急いで出そうとしているのも感じます。そこで外へ出ると土の小道がありました。この道を歩いて行きたいと私は言いました。警察犬を発見した時と同じレーダーを感じたんです。犬は森の中にいると確信したあの時と同じ感覚を。ただ引き寄せられるんです。」
ビリーはデボラにその小道を進んでほしくないようで、その先は蛇がたくさんいるから行かないほうがいいと慌てて止める。これはデボラが再度そこに行くことを決めるのに十分な理由にもなった。
デボラの直感は、兄弟達の高まる疑惑と一致していた。彼らもまたダーンとビリーが何かを隠していると思っていたのだ。
デボラは自宅に戻ってからも、ルイーズの件にフォーカスしていた。
「電動丸のこの音が聞こえていました。そして流砂の中に押されたような感覚を感じます。引きずり下ろされて、泥が口の中に、顔に入ってきます。泥に溺れていくのを感じました。ものすごい恐怖でした。」
彼女の直感では、ルイーズは殺されたのだと感じていた。彼女はロバートの妻に電話をかける。
「家族間の揉め事を起こしたいわけではありません。ただ私の直感では、ビリーがルイーズを殺害したように感じます。遺体は家の裏の池の中か、その隣に埋めたと思います。」
兄弟も同じ考えだったが、それを証明するのを手伝ってほしいと言う。地域ではビリーは教会に通う善良な市民で通っていて、典型的な殺人容疑者のイメージとは程遠い。彼は良い仕事につき、家も家族もあり、安定した人生を送っていた。
家族はデボラのビジョンを警察に伝える。しかし警察は彼女が飲み仲間と家を出たという仮説を信じたまま、耳を貸す様子もない。
数週間が経過し、兄弟達もデボラも、ルイーズはビリーに殺されたとの確信が強まって行く。しかし遺体または確かな証拠なしでは警察に捜査の強化を説得する手立てはない。警察はデボラのビジョンを信じなかったが、家族は彼女の言葉により、これまで以上に団結し、自分達の手で調査を進めていく。
ルイーズが消息不明になった3ヶ月後、事件は新しい側面を迎える。新しくゴーディ刑事が配属されてきたのだ。
彼は言う。
「この件は再フォーカスすべき要素があると感じていました。行方不明ではなく、犯罪に巻き込まれた可能性があると思ったのです。」
彼は超能力者を捜査の助手として捉えていて、デボラと協力して捜査を進めることにする。
デボラは言う。
「このケースを考えなかったことは1日もありません。要は、どうやってビリーを逮捕へと導くかというものでした。」
警察はビリーとダーンを注意深く観察し始める。ビリーは神経が高ぶりイライラした様子で、妙な言動をした。警察がビリーとダーンに嘘発見器のテストを受けるよう依頼すると、彼らは同意する。
1991年12月12日、嘘発見器のスケジュールが組まれる。しかしビリーは、妻はテストを受けないと言い、そのすぐ後、自分も受けないと言い出す。彼は話すことがほぼ困難になっていた。支離滅裂で動揺し、明らかに恐怖を感じている様子。
デールは言う。
「警察の手はすぐそこに回っていることを彼も気がついていたのでしょう。あとは時間の問題ということを。」
嘘発見器にかけられることを拒否したことも怪しいが、それだけでは警察は動けない。疑わしき点は多くあったが、物的証拠はゼロだった。
デボラは言った。
「彼女はドロドロした土の中にいると感じると警察に話しました。ダーンとビリーの家のすぐ裏に池があったので、そこに行ってほしいと。」
警察はダーンとビリーの家に行き、2人の刑事が裏の池の方へ歩いて行った。その間、州警察の1人が家の前で待っていると、突然ドアが開きビリーが自供をし始める。こうしてルイーズ失踪から5ヶ月後、ミステリーは解決される。
ビリーによると、7月29日、ルイーズが彼らの家を訪れた。その時家にいたのはビリーのみ。2人はダーンの相続について揉めていた。ルイーズがダーンを相続から外すことを再度告げると彼は激昂。そこにあったハンマーを手に取るとダーンの頭部を打ちつけた。そして倒れたルイーズを、絨毯が汚れないようすぐに移動させ、家の裏にある池の隣に遺体を埋めたと言う。彼はトラックを洗った後、スーパーの駐車場まで運転していく。そこで彼女が誰かと落ち合うように見せかけるために。
デボラが家に来た時、遺体を埋めた場所に近づくと彼はパニックになる。彼らが帰ると遺体を掘り返し、電動丸のこでバラバラにした。そして薪小屋の床板の下に埋め直す。その小屋には金属製の屋根があった。デボラのビジョンに出てきたものとリンクする。
ビリーは、妻ダーンはこの犯罪に一切関与していないと言う。
のちに、犯罪に使われた武器と遺体が発見される。血飛沫の跡も家の中で見つかった。ルイーズがキッチンで殴打されたのは明らかだった。絨毯をめくると、デボラが指摘した位置で彼女の血液が見つかる。彼女が頭痛を感じると立ち止まった場所で。
ビリーは第二級殺人罪で懲役20年の有罪判決を受ける。通常は懲役30年だが、逮捕後に彼は妻が遺体を隠すのを手伝ったと自白。彼の自白なしではダーンの逮捕に行き着かなかったため、懲役20年となる。
ダーンは母親が消えた第1日目から全てを知っていたのだ。その間、ルイーズの兄弟達はあらゆる場所にポスターを貼って回り、遺体が見つかったと聞けばそこまで運転して行った。その3ヶ月間、何度車中泊をし、ガソリンスタンドでシャワーを浴びたことか。
ダーンは従犯者として5年の有罪判決を受ける。しかし運命の残酷な展開により、釈放時に母親の相続を受け取ることになった。
デボラは警察からの信用を得る。
ゴーディ刑事は言う。
「デボラは極めて重要な役割を果たしました。彼女なしでは事件解決には至らなかった。彼女の予測が犯人を自供させるキーとなりました。」
ビリーは、家族も警察も怖くなかったが、デボラが怖かったと自供している。彼女が自分を捕まえると知っていたからだ。
超能力者のビジョンに耳を貸さなかった警察の1人も、超能力者を信じるかと今聞かれたら、彼らの話を喜んで聞く、と180度見方が変わっていた。
デボラは、この件は法廷できちんと裁かれる予感がしていたと言う。
デールは言う。
「デボラと会った時、私達家族は闇の中にいました。彼女は全ての灯りを灯してくれました。」
裁判所で、ビリーの母はルイーズの母にハグをし、"I love you."と耳元で囁くと、ルイーズの母は"I love you,too."と言った。
「彼女に対しては恨みを持っていません。彼女は何もしていないから。恨んでいるのはビリーで、彼の母親ではありません。」
ミステリーは解決したが、安らかな最後を迎えなかったルイーズの死を家族が克服することはない。