地上波アニメとテレビ文化
地方ではアニメやってないという話をすると、いやこうすれば見れるじゃんとか、東京に出てきた人もいるとか、個別の話はそうなんだけど、でもそういうのとは何かが違うんだよな……という話。
インターネットによる可視化
これはインターネットができてから感じるようになったことだけど、同じ年代のアニメファンでも、見ていたアニメに大きな違いがある。
趣味の違いとかじゃなくて、そんなアニメあったの? それアニメ化されてたの? みたいな話。
違いがある、ということはもう少し前からわかってた。
具体的にはラッキーマンの時。
たしか単行本の帯だったかに、アニメ全国放送みたいなことが書いてあって、じゃあうちでもやるんだろうと、新聞のテレビ欄をチェックしていた。
だって長崎の本屋で売ってる本の帯に書いてあって、しかも全国放送って、まさか長崎でやらないとか思いもよらなかった。
全国というのは関東だけじゃないという意味で、九州で言えば、福岡で放送すればそれでOKらしい。
それは腹立たしいことではあったけど、何事にも、ある程度の地域差はあるわけだし、そこまで重大には思ってなかった。
90年台後半から、あんまりアニメやらなくなったなあ
って思ってた。
たぶん東京視点でいうと、深夜アニメが増えてきた時期。
その深夜アニメというのが、ほぼ長崎ではやってなかったから、アニメやらなくなったないなあ、という認識になってる。
時間帯が変わったんじゃなく、存在しなくなった。
エヴァンゲリオンのように、だいぶ遅れて放送が始まるケースもあったりしたけど、基本的には放送されない。
林原めぐみがあんなにアニメに出てたと、今の人には想像もつかないだろうなあ……っていうやつが、実はおれにもわからない。そういうアニメがほぼシャットアウトされてたわけで。
もちろん、東京はもっとたくさんアニメやってるというのはわかってた。
でもそんなにいっぱいやってるとは思ってなかったし、そんなに大勢の人が見てるとも思ってなかった。実情がわかってきたのは本当にここ数年の話。
思ってたより人口偏ってた
一番の誤算は、日本の人口がかなり偏ってるということ。
東京都だけでも長崎の10倍ぐらい人が住んでるけど、しかし実際には関東圏で考えるともっと多いし、他にも大都市圏がある。
そしてそのあたりでは優先的にアニメが放送されてる。
なので、一部の東京に住んでる人だけが見てたアニメだと思っていたのが、一部の地方の人間だけが見てないアニメの方が、表現として正しいらしいということがわかった。
漫画やゲームでは発生しないズレ
もちろん見たことない漫画もゲームは多いけど、店で見かけたり、噂を聞いたりはしたし、地域差を感じるようなものではなかった。
入荷が数日遅れるのは普通だったけど、それも都会の民とリアルタイムに連絡を取ってるわけでもないから、今になって会話するぶんには何の支障もない。
アニメだってビデオやDVDは同じように売ってるけど、それはテレビを見た上でファンが買うもので、買わないと見られないという性質のものじゃない。
ただ漫画原作でゲームになってる場合、途中にアニメ化が挟まってる場合が多くて、そこらへんに違和感をおぼえることはあった気がする。
娯楽とコミュニケーション
今みたいにネットがあったわけではなかったけど、ケーブルテレビは存在してたし、BSのチャンネルも少ないながらもあった。
ただそういうのは、自分の娯楽として視聴するのにはいいけど、文化にはならない。
例えばうちの場合でいうと、ケーブルテレビは引いてなかったけど、BSは見れた。
それでキャプ翼のアニメとか、ひょっこりひょうたん島の再放送とか、地上波でやってないのが見れたんだけど……
でも、その話を友達とはできなかった。
だってみんなBS見れないんだから。
ドリフの大爆笑は普通に地上波でやってて、うちでは親が見せてくれなかったってだけだけど、次の日の小学校では疎外感があった。
逆に自分しか見てない番組の話しても、疎外感あるに決まってるわけで。
ゲームや漫画の場合でもそれはあるけど、それはまあお金の問題があるのはみんなわかってるというか。遊びに行ったり、お互いに貸したりとかしてた。
BS付ける工事しろよとまでは言えない。
なのであくまで自分が見てただけで、コミニュケーションの手段にはならなかったし、そこから文化的な物が発生することもなかった。
だから、アニメが普通にテレビでやってて、見ようと思えば見れたこともうらやましいけど、その話を友達とできたことの方がうらやましい。
今にして思えば、手段はあったが……
推し番組を録画して自宅で上映会するとか、ビデオテープを流通させるとか。あるいは家にケーブルテレビ引いてるやつと共同宣戦を張るとか。
そういうことも技術的には可能だった。
現実的には小遣いもないのに大量のテープを買って、しかも友達の家までは歩くと一時間近くかかるやつもいるし、学校でテープやりとりするのは危険極まりない。
色々考えると現実的には無理。
でもそういう発想もなかった。
見れるか見れないかは家の都合だからしょうがないな、と。
あとあとオタクの集まりで話合わなくて困るとか、そんなこと想像できるわけがないし、またそれで親を説得できたりもしない。
無意識下のテレビ文化
テレビ文化というのが、ほとんど無意識のうちに形成されてるというのは、ヘデクパウダーの例を見てもわかる。
と、言っても知らない人の方がずっと多いわけだけど。
これは風邪薬の名前で、長崎のテレビでは昔からCMをやってたから、家にあるかどうかは別にして、長崎に住んでる人なら誰でも知ってるものだった。
頭いたーい、歯いたーい、熱あーる……というインディアンのアニメ風のCM。
どれくらいの知名度かというと、バファリンの半分がやさしさで出来てるの以上に知られていたと見ていい。
これが長崎限定CMだったと気付いた時の衝撃は、なんとも形容しようがなかった。たしかに他県の人からこの話聞いたことないけど、言わないだけでみんな知ってるものだとばかり。
今はそのCMやってないし、普段長崎で生活してても特に困らないけど、でも何かの拍子にこのネタが出てきたら、最近引っ越してきた人はたいそう困るだろうと思う。
なにしろ、それが長崎限定の話題だってことを、長崎人の方でも知らないことが多いから。
忘れたならともかく(それも考えにくいけど)、知らないという意味がわからない。
この人は子供の頃テレビをあんまり見させてもらえなかったのかな?
というあたりが想像力の限界。
もちろんそのCMがどうしても見たいと思えば、長崎からビデオを取り寄せたり、今だったらYoutubeでも見れたりするんだけど、テレビ文化というのはそういう見る見ないの話じゃないので。
現在の状況
ニコニコ動画、Gyao、AbemaTVと無料でネット配信するアニメも増えてきて、残りの半分ぐらいもNetflixとDアニメストアでカバーできる状態。
(そこまでやっても大都市の地上波アニメ全部はカバーできないんだけど)
一見すると好転しているようにも見える。娯楽として見る分には確実によくなってる。
ただテレビ文化という意味では、昔とあまり変わってないか、むしろ悪化してる。
今期の新作アニメの一覧見ても、長崎の地上波で見れそうなのは1割ぐらいだし。(NHKのとかは普通にやってるし、ゼロってことはない)
家が有料配信を契約してても、結局友達も同じの契約しないと話が合わないという事情は変わらない。
じゃあネット上の友達と話せば……となると、今度は時間差があるから、ツイッターでの実況はネタバレを見ないように避けなきゃいけないし、こっちが盛り上がった時にはもうその話終わってる。
テレビ東京の人口カバー率が上昇したのも困ったところで、自分のエリアが入ってればいいけど、そうでなければ話の通じない人口が増えるということ。
ちなみにテレビ東京以外のキー局でやってても、地方では放送してないケースが多々あるし、むしろその方が見るのは大変だったりする。
いまはいまで、大変だろうなと思う。
技術的にはなんとかなりそうなのがもどかしい
他にも色々問題があるのに、なんでこうもアニメの問題が気になるかというと、これは技術的になんとかなるだろって気持ちがあるから。
Amazonの配送に2日3日かかるというのは、実際その距離をトラックが走ってるんだからしょうがないけど、放送はなんとかできるだろうと。
電波が届くのに何日もかかったりしない。
チャンネル数に限度があるというのも、じゃあBSデジタルになって解決するのかなと思えば、これもあんまりやってくれないし。
地理的な要因は何もないはずなのに、地域的な差ができてしまっていて、それを解消しようという動きもないのが、どうにも納得のいかないところ。
ただ最近はテレビ離れが進んでるとも聞く。
AbemaTVあたりがもう少し力をつけて、これを見てるのが当たり前で、親もスマホを買ってやるのが最低限文化的な小学生だ、ぐらいになったら変わるかもしれないけど。