芸術の秋ですーサントリー美術館「英一蝶」展と出光美術館「物、ものを呼ぶ」
3連休真っ最中です。お天気もよし。
芸術の秋を堪能すべく美術館はしごしました。
まずはサントリー美術館で開催中の「英一蝶」展。
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2024_4/display.html
江戸美術関連の展覧会で作品は目にしたことあるけど
体系立てて生涯の作品を辿って観るのは初めて。
狩野派に師事し、その後風俗画を手掛けるようになるという
背景は知ってても
全容は意外と知らなかった。
いきいきとして市井の人々を描いた作品の印象が強く
軽妙さの中にも確かな技術に裏付けされた繊細な美という
イメージはそのままだけど
ただそれだけじゃない多彩な作品群に驚いた。
本展では三宅島に流されるまでの風俗画として名を馳せた
「多賀朝湖」時代、三宅島で流人生活をしながら製作を続けた
「島一蝶」時代、三宅島から戻り名を「英一蝶」に変えてからの時代と
3つの章に分けて作品を展示。
多賀朝湖時代は浮世絵に連なる庶民の生活を描いた作品の中にも狩野派の流れを受け継ぐような花鳥画や山水画の屏風絵もあって
多種多様。しかもそれぞれ技術が高い。雑画帳の中には南宋画を思わせるような牡丹の絵や牧谿の影響がありそうな猿の絵などもあり
何でもできる人って感じだった。
人物の描き方も女性は菱川師宣の立ち絵の構図に表情は独自の作風、
少し岩佐又兵衛の感情表現や伴大納言絵巻に登場する人物にも共通する
躍動感があったり、いろいろな時代の趣向を取り入れて独自の画風を生み出していったみたい。
三宅島時代には島の神社や寺に伝わる神仏画や江戸からの依頼で画
材を取り寄せて描いた作品など
流人生活をしながら描いたとは思えないほどいきいきとした作品が多く
悲壮感は感じられない。
流されても依頼があるなんてファンが多かったんだなぁ。
将軍の代替わりによる恩赦で江戸に戻ってからは名を「英一蝶」とし
風俗画からは一線を引き古典的主題を引用したり仏画を手掛けたり
本格的な作品が多く残ってる。狩野派の流れからなのか雨宿り屏風などは
久隅守景なんかも少し彷彿とさせる。
釈迦十六善神図は鮮やかな色彩と神々の描き分け、衣の繊細な表現、
全てにおいて高い技術があり画業を突き詰めてる感じがする。
一方で残した俳諧からはどこか世の中を達観しているところもあり
精進してるところを人に見せたくないのかなぁという印象もある。
京都に生まれて江戸に下ってから画業を始めたという点で
都生まれの美意識と江戸っ子の粋を兼ね備えた画人という気がした。
とてもとてもいい展覧会でした。展示替えのある後期も行きたいと思う。
神田伯山師匠のミニ講談付き音声ガイドもよかった。
お次は出光美術館。
帝劇ビルの建て替えにより当面の休館が決まった出光美術館の所蔵品を4つの期間に渡って
展示する企画展の4回目の「物、ものを呼ぶ」というタイトルで
絵画を中心に展示。
コレクションの始まりとなった仙厓の作品から伊藤若冲、酒井抱一、田能村竹田などの江戸期の文人画を含む作品群と
国宝にもなった伴大納言絵巻も展示。
数は多くないけど高い鑑賞眼によって選ばれた最高級の作品が並ぶ。
個人的には大好きな酒井抱一の十二か月屏風と十二か月花鳥図が向かい合って展示されてるのが眼福すぎた。
初めて出光美術館で十二か月屏風を観たとき、あまりの美しさに立ち尽くした記憶が甦る。
絵葉書も購入し月ごとに飾っています。
毎日見てるけど本物はそりゃあ格別。
久々に対面して青の鮮やかさや可憐な優美な花や可愛らしい鳥や蝶などの
小動物への慈しみなど美が凝縮された作品に見惚れました。
伴大納言絵巻は描かれた人物の躍動感に燃え盛る炎の迫力と
絵巻物の真骨頂の趣。
いったい誰が描いたんだろう。
こういう作品が現代まで伝わってることに感動する。
文人画の田能村竹田の作品も出光美術館で知ったもののひとつ。
ここの展覧会は規模が大きくないので一つ一つじっくり見られるので
覚えてる作品が多い。
またいつか見られる日がくることを楽しみにしています。
実は欲張ってこのあと夜は新宿のシアターサンモールで
舞台「月農」も見ていたのでした。
それはまた別の機会に。
よき秋の日でした。