宮越屋珈琲霞ヶ関店
毎週のように食事に行っていた同業他社のMさんが、本社のある九州に戻ってしまった。
さみしい。
仕事の情報交換のみならず、地方から見た東京について、業界の未来、政治、経済、お笑い。とにかくいろんな話をした。自分の仕事に、誇りや愛着を持ち直すことができた。
日比谷公会堂の前を通りがかった時に「ここがテロルの決算の現場か!」、芳賀書店の前を通りがかった時に「ここがビニ本の聖地か!」と騒いでいるさまを見守ってくれたり、23時過ぎの増上寺の撮影に付き合ってくれたりした。
情緒不安で多動な私は、日常生活で、とにかく擬態している。普通の30代OLの擬態。それなりにうまく出来ていると思うが、まじ疲れる。でも、いつからか、この人の前では擬態せず脳内を開陳しても大丈夫だと思えるようになったのだ。
数え切れないほど世話になったので、大丸藤井で買ったパーカーのボールペンをプレゼントした。
引っ越しの前日、Mさんのリクエストで、宮越屋珈琲霞ヶ関店でお茶した。
「このコーヒーチェーン、北海道発祥なんですよ」と以前、通りがかった時に私がつぶやいたことを覚えていてくれたらしい。
先に入ってMさんを待った。初訪問ながら、かつて札幌駅構内にあった店舗と造りが似ていて、懐かしい気持ちになった。保険の勧誘をしている光景も一緒だ。
到着したMさんが「ちょっと袋がしわしわになっちゃたんですけど」と言ってバッグの中から紙袋を取り出した。表は桃色で後ろはミントグリーンのパスケースが入っていた。
どっちも好きな色だ。すごいな。
嬉しいとか、しんみり、といった感情よりも驚きが上回った。だからちゃんとお礼を言えたか心許ない。お互い猛暑を乗り切ろう、またどこかで、と言って別れた。
Mさんとあちこち一緒に歩いたことで、嫌いだった東京を少し好きになれた。私も誰かにとって、こいつには脳内を開陳しても大丈夫だな、と思ってもらえる人間でありたい。
本日の購入書籍備忘録。本を買ってもひたすら積読になっていくばかりなのでなるべく記録していくとする。