日比谷の薫風
東京に来てから、パークライフという吉田修一の小説を再読しよう何度も思いつつ、まだできていない。
朧げな記憶だが、日比谷公園付近を縦に切ってみたら断面が云々かんぬんという表現があって、その箇所を選考委員に激賞されていたような…。
私の職場は日比谷近辺にある。緑が多くて皇居が近いのでビルが他のエリアに比べて密集しておらず、空が開けている。
東京には何度も来たけれど、日比谷や丸の内エリアには縁がなかった。着任初日、東京にこんな場所があるのかと感嘆した。
「日比谷公園ん中、歩いて帰りますか〜」
金曜の夜、夕飯を共にした同業他社のMさんに地下鉄までの帰り道、提案された。一年で数回あるかないかの、ベストな気温湿度風速の日だった。
快諾し、こちらからも一つ提案した。
「日比谷野外音楽堂に行ってみたいんですけど」
何度か日比谷公園は歩いたことがあるけれど広大なため、断片的にしか知らない。
日比谷野音て、どこにあるんだ。
地図を頼りに進んでみると、わりと近くにあった。暗くて近くまで行けなかったけれど、いろんな映像で見てきたステージが後ろから見えた。
看板を見上げて、思わず声を上げた。「すばらしくてNICE CHOICE」のライブ映像の冒頭出てくるビルじゃん!霞ヶ関の合同庁舎だったのか。
フィッシュマンズっていうバンドを中1の時に知って、好きになって、でもボーカルが亡くなって…とMさんに説明する。
弥勒菩薩似のMさんがふんふんと聞いてくれる。いい人だ。
酔客を横目に散策を続け、皇居外苑の楠木正成像まで見に行って解散。ダメ元で写真を撮ってみたら東京ミッドタウン日比谷もうまく写った。
すばらしくてNICE CHOICEな夜だった。高1の時に読んで以来だったパークライフ、今度こそ読んでみよう。地上から見る東京の夜景が好きだ。