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医療ベンチャーの筆頭格、メドレーの決算を徹底分析!

こんにちは、うなぎいぬです。

いまの世の中、様々なものがオンラインで進むような仕組みになっていっていますね。コロナによって損害、被害を受けた方々がいらっしゃるので軽薄なことは言えませんが、大企業を始めとして変えることに抵抗感がある企業や人たちがコロナによって強制的に仕組みを「変えさせられた」のは事実だと思います。

今よりもオンラインに移行する前から、オンライン前提のプロダクトをつくり、オンラインを啓蒙してきた企業はたくさんあると思います。

そんな中で医療業界でその筆頭格となっているのが「株式会社メドレー」さんだと思います。(以下敬称略。)

メドレーは昨年2019年12月にマザーズに上場した医療系のベンチャーです。
オンライン診療などのプロダクトを持っているため、世の中の期待を一手に集め、株価はうなぎいぬさんもびっくりのうなぎ上り(うるさい)

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(Webサイト「みんなの株式」より引用)

上場時に1,300円(公開価格)だったものが、7月7日時点では4,230円と3倍以上に!時価総額も1000億円を突破しております。

エムスリーの決算分析もしたので、同じく医療系ベンチャー企業の決算も分析してみたいと思います。

1.メドレーとは

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メドレーさんのHPを見ると「医療ヘルスケアの未来をつくる」というスローガンが印象的な、シズル感というか、夏の早朝起きたときのさわやかさのようなページでとても印象的でした。

企業の沿革は以下のようになっており、起業から10年で東証マザーズへ上場しています。株価の推移は前述の通り大幅に伸長中です

2009年6月 メドレー設立
2009年11月 医療介護の求人サイト「ジョブメドレー」開始
2015年2月 オンライン医療事典「MEDLEY」開始
2015年4月 介護施設の検索サイト「介護のほんね」を運営開始
2016年2月 オンライン診療システム「CLINICS」提供開始
2018年4月 クラウド型電子カルテ「CLINICSカルテ」提供開始
2019年12月 東証マザーズへ上場

 1-1 事業内容概要

医療ヘルスケア領域の人材不足に取り組んでいるということで、事業領域としては、「人材プラットフォーム事業」「医療プラットフォーム事業」の2本柱を持っています。

その他に「MEDLEY DRIVE」という医療系企業への投資や事業サポートなどの事業を行っているようです。資金面での成長サポート言うよりも事業シナジーなどを想定したCVC的な位置づけなのでしょうか?

 1-2 どんな会社か

企業の成長の源泉は、「人」だと個人的には考えています。
よいプロダクトの開発も、強い営業力も、真似されない仕組みもすべてそこで働く「人」が作り出しています。
今の時代は情報の非対称性が様々なサービスによって是正されており、会社の情報もその一つ、ということで企業を調べるときは必ず会社の口コミサービスで社員からどのように思われているのかは比較的重要視しています。

メドレーはこんな感じでした。

総合点     :◯
待遇面の満足度 :△
社員の士気   :◯
風通しの良さ  :◯
20代成長環境  :◯
法令遵守意識  :◎
人事評価の適正 :◯

給与の待遇面以外は比較的良好という結果でした。
まだ上場したばかりのため、給与水準などは一般的な上場企業などよりも低いのかもしれません。
2019年12月期に黒字化したようなのでこれから給与水準は上がっていくのではと思います。

口コミもあまり件数は多くなかったですが、医療業界というレガシーで法制度による制約も多い業界を変えていくというビジョンへの共感度の高い社員が多いように感じました。

2.最新決算

 2.1 決算数値概要

メドレーの最新決算は、2020年12月期の第1四半期(1-3月)になります。

売上については、前期比+43%と高い成長率を継続しています。
各セグメント単位で見てもすべての事業でプラス成長しています。

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EBITDAについては、第1四半期はマイナスであるものの2019年12月期は通期で黒字であることから今期も黒字着地見込みなので問題ないと思います。

事業別のEBITDAで見ると黒字事業で稼いだキャッシュを成長領域に投資しているようです。

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業績の通期予想は以下のようになっていて、EBITDAのブレ幅は大きいもののプラス影響、マイナス影響をともに織り込んでも業績予想は変わらずということでした。

 売上高:6,600~6,900百万円(前期比:+39~45%)
EBITDA:500~800百万円(EBITDAマージン:7~12%)
EBITDAの前期比は+100〜200%と利益ベースではブレがかなり大きそうです

 2-2.メドレーの事業とは

「1.メドレーとは」でも書いたのですがメドレーの事業は、「人材プラットフォーム事業」「医療プラットフォーム事業」の2本柱です。

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第1四半期の売上成長の内訳は以下のようになっていて人材プラットフォーム事業が売上の87%を占めており、成長率も最も高くなっています。

全社            1,249百万(+43%)
人材プラットフォーム事業  1,084百万(+47%)
医療プラットフォーム事業    134百万(+25%)
新規開発サービス          30百万(+15%)

四半期単位の業績だと、第2四半期が突出して高いのも人材事業がメドレーの稼ぎ頭になっているからです。

人材系の中でも、中途採用や新卒採用などの採用領域の企業というのは、入社時期として4月が最も多いため人材事業の売上も4月に偏ります。

メドレーの第2四半期は4月〜6月がその期間にあたります。

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EBITDAも見ると、人材プラットフォーム事業で稼いだ利益を事業運営費用および新規の投資に回していることがよくわかります。
つまりメドレーは医療系Techベンチャーであるものの、実は医療系人材サービス企業である側面が非常に強いのです。

HP上では医療×Tech領域でレガシーな医療業界を変えていくというところを強く打ち出しており、コーポレートブランディングとしての上手さ、強さを感じます。

 2-3 人材プラットフォーム事業

メドレーの人材事業は「ジョブメドレー」という転職サービスになっています。

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「日本最大級の医療介護求人サイト」という謳い文句でアピールしています。

ジョブメドレーのサービスを見てみると特徴が2つあります。それは(1)サービスモデルと報酬体系、(2)対象職種の戦略です。

(1)サービスモデルと報酬体系

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最近の人材サービス事業者は概ね「人材紹介」か「転職サイト」そして「ダイレクトリクルーティング」に分かれます

ジョブメドレーは、この中でダイレクトリクルーティングを採用しています。
報酬体系は、既存のビズリーチのような年収×◯%ではなく、職種に応じた固定費用としているため、高い年収の人を採用したとしても採用コストを抑えることができます。

ダイレクトリクルーティングは自社で候補者に対してスカウトを打つため、探す手間や候補者とのやり取りに工数がかかるのが難点ですがジョブメドレーは、顧客へのサポートを手厚くすることでカバーしているようです。

また掲載期間を無期限としているところも特徴的です。
ダイレクトリクルーティングであればクローズドなサイトの中に求人を掲載し、スカウト送付の契約期間を過ぎれば掲載はできなくなるのが普通ですが、ジョブメドレーは無料で掲載が可能、且つスカウトも200通は無料でつけています。

(2)対象職種の戦略

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決算資料を読み込んでいくと、メドレーの戦略が見えてきます。
うなぎいぬは医療系は詳しくないので、かなり勉強になったのですが、「医療系」と一言で言っても多様な職種があるようです。

上記の表のうち、「医師」「看護師」「薬剤師」が3割を占めています。
そしてこの領域は競合が多くいる領域のようです。
エムスリーキャリアやエス・エム・エスキャリアなどが競合に当たると思います。

メドレーはこの領域ではなく、ミドル・ロングテール領域と称して「助産師」「検査技師」「理学療法士」「鍼灸師」など競合が比較的小さいもしくは、アルバイト紙が競合に当たる職種をメインターゲットにしています。

これは小規模事業者へはコストリーダシップがはまること、後発ベンチャーとして大手が参入しづらい領域に絞っており、戦略として秀逸だなと思います。

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業績としても、顧客数は19.2万事業所で前年比+23%と成長していて順調のようです。
また取りうるマーケットとしても110万事業者が最大と考えればまだまだ成長の余地はあると考えられますし、一定規模が取れてくれば価格を上げることで収益性も向上すると思います。

 2.4 医療プラットフォーム事業

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医療プラットフォーム事業は、オンライン診療アプリ「CLINCS」と電子カルテ「CLINCSカルテ」を提供しています。

利用医療機関数も+20%程度の伸びを見せ順調に見えます。
売上は順調に伸びているものの、EBITDAではまだ黒字化は達成できていないようなので投資成長フェーズのようです。

オンラインでの診療については法的な規制が多く絡みます。厚生労働省の指針には以下のようなことが書かれています

・初診は原則対面診療
・別の病気で薬を処方する場合も初回は対面診療
・オンライン診療はビデオ診察を中心とする
・オンライン診療を行う医師は厚生労働省指定の研修を受講する
※厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」より一部抜粋

今回新型コロナウイルス感染症対策の時限措置としていくつか規制が緩和され、オンライン診療の伸びにもつながったようです。

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3.今後の展開

人材事業「ジョブメドレー」を成長させながらキャッシュカウとしつつオンライン診療などに投資していく方針は変わらないようです。

また「オンライン服薬指導支援システム」の事業を開始するとのことで、一部実証実験を行っていたフェーズから、法改正へとフェーズが移り、調剤薬局向けのサービスとしてスタートするとのことです。

調剤薬局は大手チェーンが大きくシェアを占めているマーケットであり、オンライン診療のノウハウを生かしてtoBサービスとして成長させられる余地が大いにありそうです。

「予約」「オンライン診療」「電子カルテ」「服薬」など医療の一連の流れをオンラインで完結できれば、ユーザーとしても非常にメリットがあり、医療費の抑制などにも非常に効果がありそうだと個人的にも期待しています。

また積極的にM&Aを検討しており、社内にソーシングチームを揃え、PMIまでやれる体制を作るそうで、エムスリーも同じこと言ってたなぁと思いますが、医療系は優秀層が集まるのかな・・・医者だし・・・なんて思っています。

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最後まで読んでいただきありがとうござました!

医療系マーケットは社会的な意義が非常に高い領域だと思うのでぜひ頑張って欲しいですね!

メドレーの株買っておけばよかった・・・

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