はじまりとおわりのパフェ
「おうちで、見て、食べる、パフェ」。
第32回目として、紹介したいのは、
「HENRI LE ROUX(アンリ・ルルー)」さんである。
「パフェ グラス C.B.S.」
このパフェには思い出がたくさん詰まっている。
わたしは小さい頃からパフェがだいすきだった。
幼い頃から特別な日はパフェを食べていたし、
これまでも今もこれからもパフェとともにある。
パフェは人生だ(エッセイ参照)。
でも、わたしが「パフェ」という存在を愛し、
真剣に意識するようになったのは、
「パフェ グラス C.B.S.」に
出逢ってからだったと思う。
9年ほど前。上京したての大学生時代。
六本木の東京ミッドタウン内にある、
サントリー美術館に行ったときのこと。
ちょっと贅沢して、
キャラメルで有名なお店で
休憩することにした。
そこが「アンリ・ルルー」だった。
照明が落とされたシックな店内に入るのは、
女子大生にちょっとした優越感を与えた。
メニューを開くと、
すぐに目に入る「パフェ」の文字。
わくわくしてたまらなかった。
女子大生にはとても高くて、
ドリンクの注文は我慢したけれど。
さあ、パフェの登場。
言葉を失った。
美しすぎたのだ。
食べ始めると、
その繊細で上品な味わい、
構成、すべてに深く感動した。
店内に入って、
パフェと対峙し、
対話し終わるまで、
その時間と空間すべてが
いとおしかった。
はじめて、わたしは、
「パフェ」への愛を意識し、自覚した。
うれしかった。
それ以降、
わたしの「パフェ活」というべき、
パフェの研究、
パフェへの旅路が始まったのである。
もちろん、「アンリ・ルルー」さんには何度も通った。
「パフェ グラス C.B.S.」は、
わたしを変えたパフェだ。
詳細を紹介しよう。
そもそも、店名にもなっている、アンリルルー氏は、
世界で唯一のキャラメリエだ。
彼自身が、商標登録した「C.B.S.(セーベーエス)」とは、
いわゆる塩バターキャラメルの事だ。
つまり、この長ったらしい名前のパフェは、
「特製塩バターキャラメルパフェ」ということになる。
ポイントの「C.B.S.(セーベーエス)」だが、
これが非常においしい。
とにかくおいしい。
まず、トップにある円形のショコラをパリパリと楽しもう。
すると、「C.B.S.」を使用したアイスとバニラアイスのご登場だ。
濃厚でコクがある。
このコッテリ感に「C.B.S.」の塩気が非常によい塩梅で効いてくる。
食べ進めていくと、クレームショコラが現れる。
このショコラは、ほんのりヘーゼルナッツの薫りがする。
香ばしさを堪能することができ、とてもおいしい。
その下に、さらにクリームシャンティーがある。
混ぜれば濃厚さに拍車がかかり、
まろやかでコクのあるクリームが完成される。
おいしい。
全てのフレイバーがバランスよく、
塩バターキャラメルの風味を活かすよう、
構成されている。
すると、大粒のクランブルだ。
パフェにおいて、乾き物は緩急をつける重要な役割を果たす。
これが、未だかつてないほどおいしいのだ。
クッキーやラングドシャとも違う、
豪快で堅めの素材となっている。
アイスやクリームは
繊細な素材で構成されてきたのに、
突然現れるゴリゴリとした食感。
この差がとても楽しい。
少し溶けたアイスやクリームと混ぜれば、
さらにおもしろい味わいになる。
「アマンドキャラメリゼ」が付いているので、
自分が好きなタイミングでトッピングすることができる。
香ばしく、優しい苦味が、また程よいアクセントとなる。
そしてさいごに、たっぷりの「C.B.S」が盛り込まれている。
「C.B.S」=「アンリルルーの塩バターキャラメル」を
最大限に謳歌することのできる、楽しいパフェだ。
ここまで読んで、写真を見て、
「ぜひ食べてみたい」と思う人がいたら、
それはパフェの魅力を伝える者として冥利に尽きる。
しかし、
六本木「HENRI LE ROUX」の店舗はすでに閉店してしまった。
その他、「HENRI LE ROUX」も、
唯一、新宿伊勢丹に残っていたが(ショップ店舗のみ)
それも昨年撤退し、もはや日本には存在しない。
パフェへの愛を自覚させてくれた、
わたしの原点。
ありがとうとさようなら。
いつかまた。