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世界人権宣言──世界が認めた普遍的な人権

12月10日は世界人権宣言の記念デーです

「世界人権宣言」は、人権および自由を尊重し、確保するために、「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」としての基本的人権を宣言したものであり、人権の歴史において重要な地位を占めています。


(以下は、世界人権宣言に関する参考文献からのデータのまとめです)
  
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1947年の第4回国際連合(以下、国連と略)経済社会理事会は、国連人権委員会委員長の要請に基づき、国際的な人権章典の起草のため委員会を設け、国連人権委員会に草案を提出しました。人権委員会は人権宣言の検討を行い、国連総会に提出しました。

世界人権宣言は、1948年12月10日に第3回国連総会において採択されました。(票決:賛成48 反対0 棄権8 )
これは、多くの尊い人命が奪われ、悲劇と破壊をもたらした第二次世界大戦の反省から、「差別を撤廃し、人権を確立することが恒久平和に通じる」との確信のもとに採択されました。

世界人権宣言は、この宣言より後に国連で結ばれた人権条約の基礎となっており、世界の人権に関する基準のなかで最も基本的な意義を有するものです。例えば、世界人権宣言以降の人権章典は、人種、宗教、皮膚の色、性、言語、政治的意見その他の意見、国民的もしくは社会的出身、財産、出生またはその他の地位を理由に差別を受けることなく、みながここに掲げられたあらゆる権利を行使する権利の適用にあずかることができるようになっています。

世界人権宣言は、法的な拘束力は持たないのですが(注:現在は、国際慣習法として法的有効性(効力)を認められているとされています)、その道義的な規範性は世界に広く受け入れられ、諸国に対して道徳的、政治的な権威としての力は持ちます。世界人権宣言が人権諸条約や国連総会の種々の決議のなかで繰り返し言及されているのはこの証拠です。第三世界の国々のなかには、その国の憲法にこの宣言の条文を盛り込んだものもあるほどです。

世界人権宣言第1条は「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ尊厳と権利において平等である」と規定していますが、これは世界人権宣言が西欧的な「自然権思想」に根ざすものであることを明白に示すものとして注目されます。社会権も、後に「国際人権規約」の社会権規約に規定されることになる諸権利は、大部分がすでに世界人権宣言に登場しています。

世界人権宣言の歴史的な意義について─国連の人権活動の大部分は、世界人権宣言の諸規定を具体化し発展させる方向で進められてきたもので、国際人権規約などその後の諸条約は非締約国を拘束しないのに対して、世界人権宣言はすべての加盟国に適用される共通の基準として、国連憲章と並ぶ権威を認められてきました。さらに、自決権や人民主権についてその後の発展の基礎となった条項や、人権の完全な享受を実現するためには国際秩序の変革が必要であることを認めた点で、後の「発展の権利に関する宣言」に連なる条項など、世界人権宣言は未来を先取りするような規定も含んでいました。そしてまた、世界人権宣言が、全会一致ではないが、反対なしに圧倒的な賛成によって採択された事実も重要です。

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最後に私見を述べます。私たちが現在、当たり前のように思っている自由や権利、例えば、好きな時に言いたいことを言える自由・権利(表現の自由)は、私たちが海外旅行や留学などで外国にいる時も、しばしば当たり前のように思って使ってます。それが可能なのは、じつは世界人権宣言のような、自由と権利に関する国際的な基準や規約に支えられているからなのだと思います。この意味で、世界人権宣言は縁の下の力持ち、世界の平和的な生活の大切な土台、基礎です。同時に忘れてはならないのは、この世界人権宣言が、世界中の人類を巻き込んだ恐ろしい大戦争による教訓であり、人種などの差別なく全ての戦争犠牲者たちの血によって贖われたものだということです。たぶん、「世界人権宣言」のなかの「人権」という言葉は、それだけ重い意味を担っているのではないでしょうか。



✤ 世界人権宣言の元のテキストはインターネットでも読めます。検索サイトで「世界人権宣言 全文」のキーワードで調べて下さい。

✤ 世界人権宣言に関する本記事は、やや専門的な内容ですが、読むに当たって繁雑さを避けるため、登場する専門用語についての説明を省いています。分からない用語は辞書、事典やネット検索などで調べて下さい。

✤ 筆者は世界人権宣言を含む国際法に浅学のため、記事内容に不備がある可能性があります。記事の正確さを検証するよう、読者の皆様方においてチェックを行って頂くことをおすすめします。


執筆にあたっては、下記の文献等を参照しました。


主要参考文献:

『国際法から世界を見る』松井芳郎, 東信堂, 2001.
『国際人権法入門』高野雄一, 三省堂, 1983.
『核軍縮と国際法』黒沢満, 有信堂高文社, 1992.
『人権の歴史』杉原泰雄, 岩波書店, 1992.
『国際法』松井芳郎, 有斐閣, 1988.
『国際人道法』小池政行, 朝日新聞社, 2002.
『国際条約集 2005年版』大沼保昭, 有斐閣, 2005.
『国際人権条約・宣言集』田畑茂二郎, 東信堂, 1994.
『基本的な人権六法』吉峯啓晴, 三五館, 1995.

参照したホームページ:

 外務省
 ユネスコ
 文部科学省
 ウィキペディア
 国連広報センター
 日本国連協会
 ひろげよう人権
 日本ユニセフ協会



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