「君には能力を社会に役立てる義務がある」
3年半務めた会社を退職してスペインに来て、早2年が経ちました。
「人生で一度くらい海外に住んでみたい。どうせなら、英語以外の言語に挑戦してみよう。」というシンプルな理由で決めたスペイン渡航。
1年だけの語学留学のはずが、いまでは現地での大学院進学に向けて準備を進めています。
「留学をしたい」
と思ったきっかけは、ポジティブな理由ばかりではありませんでした。
働いていた会社ではいわゆる激務が続き、週末は同僚と飲んでは会社の愚痴をこぼす日々。
なによりも受け入れられなかったのは、「女性は危ないから海外営業部には行かせられない」という人事部の発言でした。
国際的な仕事に就きたいと考えていた私にとって、性別が原因で可能性を絶たれることは非常に悔しかったです。
でも同時に、「そんなものなのかな。何かあったときに女性は不利だし、結婚して子供ができたら仕事も辞めることになるんだろうし。」と、自分を納得させるためのたくさんの理由を探していました。
頑張って働いて結果を残しても「女の子の割にスゴイ」。
バリバリ働き続ければ「仕事ばかりで結婚できない」。
月80時間以上残業しても「料理くらいしないとダメだ」。
自分のやりたいことと、社会から求められるジェンダーロールがマッチせず、そのギャップに悩み続けました。
20代後半。
もういい歳なんだから、良い人をみつけて安定しないと、という気持ちもありました。
そんなとき、ふと、学生時代の元恋人が言ってくれた言葉を思い出しました。
「君は賢くてセンスが良いだけじゃなくて、人一倍努力してここまで来た。君にはその能力を社会に還元する義務がある。変なプレッシャーのせいで、夢を諦めるべきではない。」
今思えばずいぶん傲慢な言葉です。
でも私は、8年前の恋人に言われたこの一言に、今でも支えられているのです。
頑張ってきたし、今も頑張っている。
私が獲得してきたものには、価値がある。
これを社会に還元して、役立てていくのが私の役割だ。
胸を張って良いのだと気づきました。
1人の男性に出会い、結婚し、その人を支えながら子どもを産み育てることだけが「人生の幸せ」。
そう思う人もたくさんいると思うし、素敵なことです。
でも、誰もがその価値観を受け入れる必要はなくて、進みたい道を進んで良い。
女だからと言って、必ずしも結婚・出産をゴールに設定する必要は、ありません。
これまで高校受験、大学受験、就活など、すべての場面で私は戦うことを要求されてきました。
そしてその中で努力を重ね、いつも一番欲しい結果を掴んできました。
でも、社会人になった途端、私の価値は「結婚」と「出産」に変わり、同期男子との間には、どう努力しても埋められない差があることを知りました。
彼の言ってくれた言葉は、「私の人生の価値」を肯定してくれる言葉でした。
今でも、「頑張ってきたのに、やっぱり私になんて無理なのかな」と思ってしまうことがあります。
そんなとき、彼のあの傲慢な言葉は私の背中を押してくれる気がします。
私の人生には価値がある。
やりたいことをやる義務がある。
自分の価値を決めるのは自分だから、今日もマイペースに進みます。