ガ合のあとがきのあとがきみたいなのを書こうと思って書けなかったから後日談みたいなのを書きました。
つまりそういうことです。なんか書こうって思ってとくにこれといって言いたいこととか無かったので後になってからもう一個くらい視点いけたなって思ってた短いやつを書きました。
pixivでも良い気がしたんですがガ合関係だしnoteのがええやろかということでnoteに小説書くことにしました。たぶん今後すごい怒られそうだなみたいな悪い話書く時とかnoteにします。判定ふわふわになりそうだけど。
残された亀は
――――手に入らないと思って諦めていたものを、きっと誰のものにもならないと思っていた人を。同じ想いを抱いているだろうと思っていた人に奪われた時、どう思うのが正しいんだろう。三人がふたりになってから、そればかり考える。
「真維さんはさ、後悔してないの?」
いつか、もう手遅れだと気付いてから。はるかっちのいない教室で、真維さんに問い掛けたことがある。
……答える一瞬前、真維さんの表情が歪んだことを。瞳の中に憎しみすら感じたことを、何年も経った今だって憶えている。
「智加ちゃんは、後悔しているの?」
「なんでこうなったのかもわからないのに、後悔なんてできないよ」
「そう。智加ちゃんにはわからないんだ。わかってくれないんだ」
そう。なら、きっとそうね。何度も何度も、自分に言い聞かせるように呟いて。たたたっと廊下を走る音が近付いてくる方に一瞬視線を向けてから、真維さんがわたしを見て。
夕焼けを背ににっこりと、映画の中の女優みたいな笑顔を作って。瞳の中には、やっぱり憎しみと後悔が燃えているようで。
「――――後悔は、これからするのよ。私も、智加ちゃんも」
いつか、彼女が言ったこと。呪いのようで、預言のようでもあったそれは、今でもわたしの耳に響いている。
兎は何処へでも跳んでゆける。海の向こうでも地の果てでも、もしかしたら月へだって。ひとりじゃできないかもしれないけれど、あの子を支えたいと思う人はたくさんいるから。
釣り人は何だってできる。欲しいものを手に入れる為に、どんな努力だってできる人だから。才能もあって、努力も惜しまない人だから。ズルをズルだと理解したうえで、それでもと選べる人だから。
亀は、臆病で、足が遅くて。首を伸ばしても、月に届くなんて事は無くて。釣り針に食い付くなんて、怖くてできなかった。兎と釣り人がいなくなっても、ずっと甲羅の中に引籠ったまま。今更顔を出しても、誰も見付けられない。歩いたって、誰にも追い付けない。
二兎春花という人間は本当は寂しがり屋で繊細で、萬歳智加はそれを知っているはずだった。知っていて、きっと大丈夫と気にしなかった。
桜泉真維という人間はズルをしても止めてもらえることを期待していて、萬歳智加はそれも知っているはずだった。知っていて、気付けなかった。いや、気付かないふりをしていたのかも。今となってはわからないし、どっちでも変わらない。
三人は、ふたりになった。きっともう三人には戻れない。はるかっちと真維さん、どちらかとふたりなら耐えられるけれど、三人になると後悔に押し潰されそうになってしまうから。きっとこれは、真維さんも同じなんだろう。三人でラジオをして、聴いていた日々には。どうやったって戻れない。
…………ねぇ、真維さん。あの日の教室で本当に言いたかったことがあるんだよ。もう遅いし、言う気にはなれないんだけどさ。
本当はね、言ってやるつもりだったんだよ。今更取り戻せないんだから言いたいこと言ってやろうとか逆に状況が良くなるんじゃないかとか、なんかいろいろ考えてさ。それで結局言えないで、もう一生言えないだろうなって諦めちゃったんだけどさ。
……それでも真維さんに会う度に、やっぱり言うべきだったのかなって思うんだ。正直、これが一番後悔してることかもしれない。
――――真維さんの、裏切り者。いつか言おうと思って、結局呑み込んでしまった言葉。
これはきっと、最期まで声にできない。もしかしたら、あなたが本当に欲しかった言葉はこれなのかもしれないとは思うんだけどね。
臆病者に、裏切りを怒る資格なんて無いんだよ。それに、真維さんだってわたしの臆病を怒ってくれなかったから。
臆病者も、裏切り者も。きっと、本当に言いたかったことは墓場まで呑み込んだまま。後悔は、死ぬまで終わらない。
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