銚子電鉄は、なぜ遠く離れた南海電車を導入したのか?
初めての記事は今日話題のこのニュースから。
2023年8月17日(水)、銚子電鉄は、南海電鉄が所有する「2200系車両」を8月15日付で譲受したことを発表しました。
新車両の予想合戦
銚子電鉄社長の一言から始まった
銚子電鉄に新型車両が導入されることは、7月9日に銚子電鉄犬吠駅前広場で開催された「銚電まつり」のステージで発表されていました。
この時は、銚子電鉄の既存車両と同じく2両編成を1本導入することが発表されました。
また、次のようなヒントも出ています。
「しっかりと整備された、年式は古いが、予備パーツも豊富にある車両」
「(大手鉄道会社では主流の)20m車を入れるとホームにぶつかってしまう」
「(北の方を指さして)多分あっちの方です」※これは後に誤りと判明
新車両の条件
ちなみに銚子電鉄で運行するにあたって必要な条件は
電圧が直流600Vに対応できること
ワンマン運転に対応できること
1両が19m以下の車両であること
整備がしやすい事
1については、大手私鉄の大半の電車は直流1500Vで動く設計であることが多いですが、銚子電鉄の電車や変電所は直流600Vで動いています。
したがって直流1500Vの車両では電圧が足りず、改造しない限りは走行できないのです。
2については、銚子電鉄は、運転士が本来車掌の仕事であるドア操作も行うワンマン運転+アテンダントによる切符販売が基本であるため、ワンマン運転に対応した装置が必要です。
3については、社長のヒントそのままで、車両が20m級だとホームと電車がぶつかってしまう為です。
4については、大手と比べると技術レベルが低くなる地方鉄道であっても整備ができるものというのが大前提になっていきます。
本命と大穴
これらの情報や、他社線の引退発表された車両が譲渡されるのではないかという推測を含めた結果、鉄道ファンからの候補は、
静岡鉄道1000形
北陸鉄道8000系
アルピコ交通3000形
などが上がっていました。
実際、上記の3形式は条件を満たしており、しかも新型車両による置き換えが進行中でした。
そんな予想が飛び交う中、発表されたのは大穴、南海2200系だったのです。
南海2200系が選ばれた理由
条件に合致していた
先ほど挙げた条件を確認すると
電圧が直流600Vに対応できること
ワンマン運転に対応できること
1両が19m以下の車両であること
整備がしやすい事
南海電鉄の電車は現在、直流1500Vで動いていますが、かつて600Vで運行していたことがあり、2200系は旧型であるが故に600Vにも対応した装備となっています。また、17m級の車両でワンマン運転に対応の2200系は条件に完全に合致していました。また、整備がしやすい事については、モーターを制御する方法が従来の車両と同じで、機構が比較的シンプルな「抵抗制御」であること、同型車種が多数存在することや、今後、南海電鉄内では別の車両に置き換えられていく事から部品に関してはまだまだ潤沢のはずです。
必要最小限の改造は必要
条件に合致しているのであればすぐ走らせられるのでは…?と思いきや、赤信号を超えたときなどに列車を自動的に止める自動列車停止装置(ATS)など、細かい機器類は仕様が違うので、改造や取り換えは必要です。しかしながら、必要最小限の改造で済むことでしょう。
中古車両の譲渡実績がある
南海電鉄の中古車両は大井川鉄道や和歌山電鐵に譲渡された実績があります。特に和歌山電鐵のたま電車は一般の方でも知っている人がいらっしゃるのではないでしょうか。
結論:南海2200系は銚子電鉄にぴったりの車両
ここまで読んでいただければわかる通り、南海2200系は現在の銚子電鉄においてジャストフィットした車両であることは間違いありません。
「なんかいい車両」ではなく銚子電鉄にぴったりの「とってもいい車両」が見つかって本当によかったです。