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うなぎ事変をご存知か?

あの惨劇は、忘れもしない2023年の敬老の日に起きた。

関東のとある配達員がお客様に「鰻重」を届けず、
それを廃棄にして、自らが美味しく食べてしまったのだ。

ただ、それだけの事件なのであるが、
「あまりにも浅ましい」と一部の配達員の間で
プチ炎上騒ぎとなったのだ。

プチ炎上とは言うものの、
「うなぎを美味しくいただきました」という
SNSへの投稿はスクショまで撮られて、
⚫︎ちゃんねるのスレッドが建てられたほどだ。

これは、このうなぎを廃棄にして、
食べた配達員にアンチがそこそこいたため、
このような結末となり、その後、半年間くらいは
ことあるごとに蒸し返された。

しかし、皆が注目しているのは、
この配達員が、客のうなぎを食ったと言うことだけであり、
その後ろに隠れているお客様側の視点が欠けているのだ。

もう少し、この件について当時を振り返ってみよう。
この「うなぎ事変」が起きたのは敬老の日である。
配達員が客のうなぎを食すことになった経緯はこうだ。
「この客、住所はいつもと同じままで、ピンがいつもと違うぞ?」
「高級うな重だから、いつもの住所で待つことにしよう」
ここで大きな間違いが発生している。
配達員は大原則、ピンの位置まで届けるのが正しいので、
ピンの位置にいかねばならない。
それなのにこの配達員はピンには行かなかった。
高級うな重という、配達員風情では到底食べられない食材に
心が負けてしまったのだ。

配達員はいつもの住所で待ち続けた。
しばらくすると、お客様から連絡が入った。
「すみません、位置情報の示しているところに来てもらえますか?」
「え?なんでですか?私はあなたの住所にいますから、ここで待ちます」
「そんな・・・今日はピンを刺している場所に届けて欲しいのです」
「あー無理ですね、サポートと相談しますね」
プツッ・・・。
この時、お客様からしてみれば運悪く、
配達員からしれみれば運よく、
アホのサポートに当たってしまった。
「なるほど、配達員さんの言い分はわかりました!!
サポートにてキャンセルいたしますので廃棄してください」
「やったぜ、高級うなぎ重2セットゲット!!」
配達員は喜んでいいね欲しさにSNSにアップしてしまったのだ。
結果としては、いいねよりも批判が集まりプチ炎上したわけだ。
配達員はお客様のことのなど、気にもかけずに、
配達員を叩くことに全力を注いでいた。

では、この時お客さまは、どうだったのだろうか?

きっとこうに違いない。
「父さん、ごめんね。足が悪いから外に出るのは辛いだろうと
鰻重をフーデリで取り寄せたのだけど、届かないみたいだ・・・ごめん」
「タカシや・・・今年はうなぎを食べられないんだね・・・」
「ああ、そうだよ。サポートもこっちの落ち度だと言っているから、
返金もないんだ・・・でも、もう一度頼んでみるよ・・・」
「タカシ・・・勿体無いから今年は諦めるよ・・
来年までにトレーニングを頑張って、歩けるようになるよ。
そして、お店で美味しいうなぎを食べようじゃないか」

そして数ヶ月後・・・。
そこには墓石の前で手を合わすタカシの姿があった。
「父さんは結局、最後にうなぎを食べることはできなかったな。」
「ごめん、父さん・・・」

墓石には高級うな重が供えられていた。

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