Netflix 名作クライム映画の技術解説|Mindhunter
1970 年代のアメリカで起きた連続殺人事件の真相に迫る、Netflix 名作クライム作品『マインドハンター(Mindhunter)』の技術解説を通して、RED 愛好家として有名なデビッド・フィンチャー監督作品の制作プロセスを紹介していきます。
1. 製作費と撮影スタイルに関して
2017 年に配信を開始した Netflix オリジナルドラマシリーズ『マインドハンター(Mindhunter)』は、1970 年代のアメリカで起きた連続殺人事件の真相に迫る、FBI 行動科学捜査班の捜査官たちを描いたクライム作品です。映画監督の デビッド・フィンチャー(David Fincher)氏が監督を務めたことで話題の作品となっています。
ネット上に製作費に関する情報は見当たりませんが、続編となる Season 3 が “製作費が高額のため” 無期限延期とされていることなどから、Netflix のヒット作品の平均的な予算である 1 話あたり 2〜3 億円 以上が投じられていると推測されます。
総合演出を担当した David Fincher 氏は、2010 年公開の映画『ソーシャル・ネットワーク』以降の全ての作品を RED Digital Cinema 社のカメラで撮影する RED 愛好家として有名ですが、本作でも RED のカメラが使用されています。
2. RED の特注モデル Xenomorph
RED のカメラは、本体(brain)やイメージセンサーを自由に組み合わせられる、DSMC という設計思想に基づいた “モジュール型” の構造を採用しており、RED をこよなく愛するハリウッドの有名監督たちは、各自の撮影スタイルに合わせた特注モデルを所有しています。
Fincher 氏は本作の撮影にあたり『Xenomorph(ゼノモーフ)』という名前の特注モデルを制作していますが、この Xenomorph は ❶ ワイヤレス・トランスミッター、❷ ワイヤレス・レンズコントロール、❸ TC BOX など、通常はカメラ上に取り付けられるアクセサリー機器を本体に埋めこむことで、煩雑な配線のない一体型(All-in)モデルとなっています。
またこうした “一体型モデル” に対する需要の高まりを受け、RED は 2019 年に一体型モデル RED RANGER を製品化することになります。
3. カメラ設定とモニタリング環境
カメラ設定やワークフローに関しては、撮影を担当した撮影監督 エリック・メッサーシュミット(Erik Messerschmidt)氏が、その詳細を様々なメディアで公開しています。
2017 年公開の Season 1 では、カメラは DRAGON 6K センサーを搭載した Xenomorph が使われています。このシリーズは撮影段階では SDR 仕上げが想定されており、撮影現場では DIT など色管理の専門スタッフを付けずに、SONY の 25" OLED モニター PVM-A250 上で、Rec.709 の色空間でルックの管理をしていたようです。
2019 年公開の Season 2 ではカメラの仕様が変わり、8K 解像度の HELIUM 8K S35 センサーを搭載した Xenomorph MK2 が使用されています。このシリーズは撮影段階から HDR 仕上げが決定していたため、撮影現場では HDR 表示のできる Canon の 24" 液晶モニター Canon DP-V2420 上で、Dolby PQ ガンマ、Rec.2020 の色空間でルックの管理をしていたようです。
ワークフローとしては、8K 撮影された R3D RAW 素材を 6K openEXR(16-bit)形式に変換して、後処理は 6K 解像度で行われていたようですが、撮影監督 Messerschmidt 氏は 8K 撮影のメリットとして、スーパーサンプリング効果 によるノイズ性能、色再現の向上などを挙げています。また従来の 6K DRAGON センサーより低ノイズで撮れるということで、感度は ISO 800、圧縮率は 8:1 に引き上げてられています。
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