ARRI デジタルシネマ・カメラの基礎知識
世界の映画の 70% を独占?!ARRILASER からはじまる ARRI のデジタル開発の歴史を辿りながら、デジタルシネマの撮影をする上で “教養” として覚えておきたい ARRI のデジタルシネマ・カメラの基礎知識を紹介していきます。
1. ARRI のデジタル化のはじまり
1917 年の創業当時より、フィルム・プリンターの開発を続けてきた ARRI ですが、1998 年にそのデジタル版となる新モデル ARRILASER を発表します。これが ARRI のデジタル開発のはじまりとされています。
ARRILASER は、映像データをフィルムに焼き付ける フィルム・レコーディング のための装置ですが、反対にフィルムをデジタル化するための装置して開発されたのが、動画用のフィルム・スキャナー ARRISCAN です。
2. ARRISCAN
2004 年発表の ARRISCAN は、その名の通りフィルム映像をデジタルデータ化する フィルム・スキャン のための装置です。フィルムの映像を最大で 6K 16bit DPX の非圧縮データに変換することができます。
いま現在では、Blackmagic Design 社の Cintel Scanner、DFT Scanity など、より高性能なフィルム・スキャナーも登場していますが、1990 年代後半から続くこの ARRILASER、ARRISCAN の研究開発を通じて、ARRI は(おそらくどの企業よりも早い段階から)フィルム・ルックの解析とデジタル化に関する知見を深めていきます。
3. プロトタイプ機 D-20 の誕生
2005 年、ARRI はその初号機となるデジタルシネマ・カメラ Arriflex D-20 を発表します。
この D-20 は、回転型ミラーシャッター、光学ファインダーを採用したフィルム・カメラの面影が色濃く残るプロトタイプ機で、ARRISCAN の技術を応用した CMOS イメージセンサーが搭載されています。またカメラ本体には収録機能がなく、当時は HD-SDI から出力される信号を SONY SRW-1 などの外部レコーダーに記録して運用されていました。
4. Arriflex D-21
2008 年、ARRI は D-20 の後継機となるデジタルシネマ・カメラ Arriflex D-21 を発表します。
D-20 と同じく、D-21 にも回転型ミラーシャッター、光学ファインダーが搭載されており、フィルム・カメラと同じ 4:3 比率の CMOS イメージセンサーを採用しています。カメラの標準感度は ISO 200 と低感度で、独自のログガンマ Log-F が採用されている点に特徴があります。
当時の時代背景としては、2007 年に RED Digital Cinema 社が RED ONE を発表、2008 年には SONY が F35 を発表するなど、各社でデジタルシネマ・カメラの開発ラッシュが起こり、その流れが現在まで続く デジタルシネマ撮影 のはじまりとなります。
5. ALEXAの登場
2010 年、ARRI は D-21 と設計のまるで異なる新型のデジタルシネマ・カメラ ALEXA Classic EV を発表します。
この ALEXA Classic は、ARRI の象徴ともいえる回転式ミラーシャッター、光学ファインダーなど、フィルム・カメラ特有の構造をなくした新設計のカメラとして業界の注目を集めます。
ルックに関しては、Log-F に変わる新たなログガンマ Log-C を採用し、SxS モジュールの搭載により業界初となる Apple ProRes 収録が可能となります。標準感度も ISO 800 となり、この段階で ARRI のデジタルシネマ・カメラの標準規格が確立することになります。
6. 第 1 世代:ALEXA Classic 機種まとめ
この ALEXA Classic シリーズは、度重なるアップデートを繰り返しながら、さまざまな撮影用途に応じた派生モデルが開発されていきます。
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