RED V-RAPTOR X 触ってみた
Nikon 買収のニュースで話題となった RED Digital Cinema 社の最新シネマカメラ、V-RAPTOR [X] のレビューをお届けします。ダイナミックレンジを 20+ STOP に拡張できる Extended Highlights は、実際どんな感じなのか?
1. V-RAPTOR [X] とは?
RED の最新シネマカメラ V-RAPTOR [X] は、V-RAPTOR 8K VV の後継機となるフラッグシップモデルで、日本では CP+ 2024 の会場で披露され、現在、公式代理店 RAID を通して販売されています。
この V-RAPTOR X は、グローバルシャッター方式 の新型 CMOS イメージセンサーが搭載されているという点に特徴がありますが、最大 8K 120P のハイスピード性能、17+ STOP のダイナミックレンジなど、基本的な性能に関しては、V-RAPTOR 8K VV と変わらない仕様となっています。
一方、V-RAPTOR 8K VV と異なる点として、V-RAPTOR X には、グローバルシャッターの特性を活かした Global Vision といわれる新機能が搭載され、話題を呼んでいます。その新機能として、現時点では、ダイナミックレンジを 20+ STOP に拡張する Extended Highlights、LED Wall の撮影で、CG 背景とグリーン背景を同時に記録できる Phantom Track が紹介されています。
2. グローバルシャッターの効果
V-RAPTOR X に搭載されているグローバルシャッターの機能は、KOMODO シリーズと同じく「ローリングシャッター現象が全く起こらない」という点に特徴があります。
CMOS イメージセンサーには、おもに 2 種類の方式があり、グローバルシャッター方式では全画素を同時に記録しますが、一般的なローリングシャッター方式の場合は、上から下方向にイメージが順番に記録されるため、ローリングシャッター現象 といわれる、映像表現として好ましくないさまざまな現象が発生します。
その最も代表的なものとして知られているのが、カメラや被写体がすばやく動いた時に、イメージがななめに歪んでしまう スキュー現象(Skew)です。
また閃光時間の短いフラッシュ光が、部分的に露光する フラッシュバンド(Partial Exposure)も、ローリングシャッター現象の事例として有名です。このあたりは、ライトが明滅する演出の多い MV やライブイベントの撮影などでは、重要なポイントとなります。
ローリングシャッター現象には、その他にもカメラが細かく振動した際に、イメージ全体がふにゃふにゃとゼリー状に揺れる ゼリー効果(Jello Effect)、プロペラなど高速回転する物体、ギターの弦など細かく振動する被写体の形が崩れてしまう、空間エイリアシング(Spacial Aliasing)などのアーティファクトがあります。
V-RAPTOR X は、こうした現象が全く起こらない仕様になっているわけですが、現行のデジタルシネマカメラの中で、グローバルシャッター方式を採用しているモデルは他にないので、この点は V-RAPTOR X、KOMODO の大きな強みといえます。
以降、従来モデル V-RAPTOR 8K VV と比較をしながら、V-RAPTOR X の体験レポートをお届けしていきたいと思います。
3. Extended Highlights を試してみる
まずは、シャッタースピードの異なる 2 種類の映像をブレンドすることで、ダイナミックレンジを 20+ STOP に拡張できる Extended Highlights の機能を試してみます。
V-RAPTOR X は、V-RAPTOR 8K VV と同じく、公称 17+ STOP のダイナミックレンジがあるとされていますが、False Color の Gio Scope ツールを利用して、カメラの階調を 16 段階に色分けして表示することで、それを可視化することができます。
この Gio Scope は、RAW データに基づく階調を表示するツールで、露出の標準値となる 18% Gray が 黄緑、黒潰れする直前のシャドウは 紫、白飛びする直前のハイライトは 赤、白飛びしている領域は 黒 で表示されます。
まずは V-RAPTOR X で、Extended Highlights を OFF にした通常時のイメージがこちらになります。
これを Gio Scope で見てみると、以下のようなイメージになります。窓外のハイライトを見てみると、黄色・オレンジ・赤色になっていますが、ポールの天面、道路の一部などが 黒く なっていることが分かります。
試しに、RED 純正の現像ソフトである REDCINE-X で、露出を 6 STOP 下げてみると、Gio Scope 上は白飛びしていると思われていた階調が、復元されているように見えます。
波形モニター上でも、明らかに信号がクリッピングしている感じは見られませんが、そもそも白飛びしている被写体の色がグレーなので、すこし分かりにくい印象もあります。
それに対して、Extended Highlights を ON にしてみると、イメージは以下のようになります。
プレビュー画面上では、特に何の変化も見られませんが、これを Gio Scope で見てみると、Extended Highlights が OFF の状態で黒く表示されていたエリアが、赤く なっていることが分かります。
同じように、REDCINE-X で露出を 6 STOP 落として見てみると、ハイライトの階調がきれいに復元されました。
比較のために、Extended Highlights が OFF の状態のものを再び掲載しておきます。両者を見比べてみると、印象はそこまで大きく変わりませんが、ON の状態の方が、ハイライトの階調がやや落ち着き、色調が Mg(マゼンタ)方向にシフトしている感じが見られます。
参考までに、同じ条件で撮影した V-RAPTOR 8K VV のイメージは、以下のようになります。印象としては、Extended Highlights を OFF にした状態の V-RAPTOR X と近い感じがあります。
続いて、Gio Scope 上では明らかに白飛びしていると思われる、明るい窓の前で手を振り、Extended Highlights の課題とされる 不自然なモーションブラー が発生するかを検証してみます。下の画像は、V-RAPTOR 8K VV のイメージです。
これを Gio Scope で見てみると、窓外の白い壁とベランダのガラスの一部が 黒く 表示されており、明らかに白飛びしているように見えます。
それに対して、Extended Highlights を ON にした V-RAPTOR X のイメージがこちらになります。
これを Gio Scope で見てみると、V-RAPTOR 8K VV では黒く表示されていた窓外の白い壁などが 赤く なっており、白飛びしていないことが確認できます。
同じように、REDCINE-X で露出を 6 STOP 落として見てみると、今度は V-RAPTOR 8K VV と V-RAPTOR X とで、明らかな差が現れました。まずは、Extended Highlights 機能のない V-RAPTOR 8K VV のイメージがこちらになります。
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