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【完全保存版】 レンズフィルター徹底比較!Diffusion篇

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レンズの質感を自由に変える? Tiffen、Schneider、NiSi、Formatt Hitech の人気モデル 24 種類の比較を通して、ディフュージョン系のレンズフィルターの効果を検証していきます。


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1. はじめに

一般的に、ディフュージョン系のレンズフィルターの効果は、以下の 3 種類に分類され、それらの効果がかけ合わさることで、フィルターの個性が生まれる構造となっています。

・Halation
・Resolution
・Contrast

Halation は光を拡散させる効果、Resolution は輪郭のシャープネスを軽減させる効果、Contrast は映像のコントラストを軽減させる効果、を意味するものになります。

レンズフィルター開発の最大手である Tiffen は、この 3 方向の軸を用いて、Tiffen のフィルター製品の特性を分類したチャート Triangle of Diffusion を公開していますが、今回のテストでは、24 種類のフィルターの効果を比較することで、最終的にこのチャートに Schneider、NiSi、Formatt Hitech など他社製品を追加していきます。

テスト撮影の環境としては、光が拡散するハレーション効果を見やすくするために、黒背景 の前にチューブ型の LED ライト(INFINIBAR PB-12)をカメラに向けて設置し、その前にカラフルな衣装を着たマネキンを置いて撮影をしています。

照明環境に関しては、大型のソフトボックスを取り付けた Aputure LS 600c Pro をキーライトに、その対角線上となる逆めの位置に amaran 300c、天井にパネル型 LED である amaran F22c を設置して、ポートレート撮影でよくあるライティングを再現しています。

コントラスト比は 16:1 の状態で、キーライトの明るさが +1 STOP、最暗部が -3 STOP となる光量バランスで、露出を切っています。またライトの色温度は 5600K° に揃えています。

カメラ機材の構成に関しては、カメラは Blackmagic Cinema Camera 6K、レンズは Leica の写真用レンズである、APO-Summicron-SL 75mm f2.0 ASPH. を使用しています。下の画像は、屋外でのテスト時のものですが、室内ではマットボックスは付けずに撮影をしています。

Blackmagic Cinema Camera 6K は、2023 年に発売された、35mm フルサイズ規格のシネマカメラで、レンズマウントは Leica L マウント、ダイナミックレンジの公称値は 13 STOP となります。カメラ設定は、以下の通りです。

Blackmagic Cinema Camera 6K
6K 17:9(6048×3200)Blackmagic RAW Q3
ISO:200 / Shutter: 90° / WB: 5600K

Blackmagic Cinema Camera 6K

APO-Summicron-SL 75mm f2.0 ASPH. は、Leica の 35mm フルサイズ規格のミラーレス一眼、Leica SL シリーズ向けに開発された写真用の単焦点レンズで、非球面レンズ(Aspherical Lens)が組み込まれているため、限りなく色収差が抑えられた、アポクロマートな設計に特徴のあるモデルとなります。レンズの F 値は、F2.8 で撮影しています。

Leica APO-Summicron-SL 75mm f2.0 ASPH.

以降、今回の記事では、Tiffen、Schneider、NiSi、Formatt Hitech のディフュージョン系のレンズフィルター 24 製品の質感を比較していきます。


2. Halation 系の効果を比較する

ハイライトの光を拡散させることで輝き(Glow)を生み出す、ハレーション効果 に特徴のあるフィルターは、その構造の違いにより、4 種類に分類することができます。

・Black Mist
・White Mist
・Lenslet
・複合型

一般的に、ガラス内部にこまかな粒子が散りばめられたフィルターを “Mist Filter” と呼びますが、黒い粒子を用いた Black Mist タイプは、光が拡散するハレーション効果が、シャドウ域に影響しにくいという特徴があります。Black Pro-Mist など、製品名に Black の表記があるモデルが、これにあたります。

それに対して、白い粒子が散りばめられた White Mist タイプは、ハイライトの明るさは変わらず、ハレーション効果によりシャドウが白く浮く、という特徴があります。

Lenslet タイプは、ガラス内部または表面にある小さな凹凸(Lenslet)の構造により、コントラストに影響を与えることなく、ハレーション効果を生み出すという特徴があります。また 複合型 は、Mist × Lenslet など、複数の構造を組み合わせたモデルとなります。

以降、ハレーション効果に特徴のある 16 種類のモデルを比較していきます。

・Tiffen Black Pro-Mist
・NiSi Black Mist
・Tiffen Black Glimmerglass
・Schneider Black Frost
・Schneider Hollywood Black Magic
・Tiffen Black Diffusion FX
・Tiffen Gold Diffusion FX
・Tiffen Black Satin
・Tiffen Satin
・Tiffen Glimmerglass
・Tiffen Pearlescent
・Formatt Hitech Firecrest Bloom Gold Diffusion
・Tiffen Pro-Mist
・Tiffen Warm Pro-Mist
・Schneider True-Net
・Tiffen Smoque

まずは、ディフュージョン系のレンズフィルターを語る上で欠かせない、世界で最も有名なモデルとなる、Tiffen Black Pro-Mist のフィルター効果を見ていきます。


Tiffen Black Pro-Mist

Black Pro-Mist は、1980 年代半ばに開発されたフィルターで、ガラス内部に埋めこまれた 黒い粒子 のはたらきにより、ハイライトの明るさを落とし、シャドウ部の浮きを抑えながら、ハレーション効果が得られるという特徴があります。

▶︎ Black Pro-Mist のおもな特徴
・Reduces Highlights and Lowers Contrast
・Softens Wrinkles and Blemishes
・Creates a Soft Quality of Light

Black Pro-Mist Screw-In Filter

Triangle of Diffusion のチャートでは、Pro-Mist に次いで、ハレーション効果が最も強いモデルとして分類されています。

Black Pro-Mist のラインナップには、1/8 から 3 まで 6 段階の番手(Grade)がありますが、今回のテストでは、3 以外の 5 枚を検証しています。まずは、Black Pro-Mist の質感を フィルターなし の状態と比較してみると、以下のようになります。

また Black Pro-Mist には、その姉妹モデルとして、ガラス内部に白い粒子が散りばめられた Pro-Mist というモデルがありますが、Black Pro-Mist の質感を Pro-Mist と比較してみると、以下のようになります。

画面右の Pro-Mist の方は、ハレーション効果が全体的にかかり、マネキンの瞳や体の側面などのシャドウ部が、白く浮いている印象があります。

一方、画面左の Black Pro-Mist は、黒レベルは Pro-Mist と変わりませんが、中間域からハイライトの明るさが落ち、マネキンの瞳や体の側面など、よりシャドウ域の黒の締まりが維持されていることが分かります。

続いて、YouTube など SNS 界隈で有名な NiSi Black Mist のフィルター効果を見ていきます。


NiSi Black Mist

Black Mist は、Black Pro-Mist と同じく、ガラス内部に 黒い粒子 が散りばめられたフィルターで、NiSi の 4×5.65” 角型フィルター Allure Mist Black を再開発したモデルとされています。

開発元の NiSi Optics は、2005 年に設立された中国の光学機器メーカーで、ディフュージョン系のフィルター製品としては、他に Allure SoftCircular White Mist などを開発しています。

Black Mist のラインナップとしては、1/8 から 1/2 まで 3 段階の番手がありますが、今回のテストでは、1/8、1/4 の 2 枚を検証しています。まずは、Black Mist の質感を フィルターなし の状態と比較してみると、以下のようになります。

続いて、Black Pro-Mist と質感を比較してみると、以下のようになります。

両モデルを比較して、まず気になるのが色の違いです。今回のテストで使用した Black Pro-Mist は、ハレーション効果が Amber 方向(暖色)にシフトする傾向が見られますが、Black Mist にはそうしたカラーシフトは見られません。

また質感に関しては、Black Pro-Mist はハレーションの輪郭がわりとはっきり出ているのに対し、Black Mist の方は、ハイライトの光がよりソフトに拡散され、その輪郭が背景に溶けこんでいるように見えます。

被写体のシャープネスに関しては、Black Pro-Mist より Black Mist の方がハレーションの影響が少なく、輪郭がシャープに出ている印象があります。

コントラストに関しては、両者とも似たような感じになっていますが、Black Pro-Mist は明るさ全体が落ちるのに対して、Black Mist はハイライトの輝度はあまり落ちず、よりシャドウが浮いた状態となっています。

その効果としては、Pro-Mist に近い感じにも見えますが、波形モニターで確認してみると、Black Mist のシャドウの浮き具合は、Pro-Mist よりも大きいことが分かります。

続いて、Tiffen の人気モデル Glimmerglass の Black 版となる、Black Glimmerglass のフィルター効果を見ていきます。


Tiffen Black Glimmerglass

Glimmerglass は、ガラス内部に 銀色のラメのような粒子 が散りばめられており、ハレーション効果とともに、解像感とコントラストを軽減させる効果が得られるフィルターですが、Black Glimmerglass は、そこに黒い粒子が追加された新モデルとして、2017 年に発売されています。Glimmer は“きらめき” を意味します。

▶︎ Black Glimmerglass のおもな特徴
・Subtly lowers detail resolution
・Adds low contrast, muted Look
・Smooths out blemishes and wrinkles

Black Glimmerglass Camera Filters

Triangle of Diffusion のチャートでは、三角形のほぼ中央に位置しており、シャープネスの軽減効果、コントラストの軽減効果、ハレーション効果のすべてが備わったモデルとされています。

Black Glimmerglass のラインナップとしては、1/8 から 2 まで 5 段階の番手がありますが、今回のテストでは、1/8、1/4 の 2 枚を検証しています。まずは、Black Glimmerglass の質感を フィルターなし の状態と比較してみると、以下のようになります。

続いて、Black Glimmerglass 1/4 の質感を Glimmerglass 3 と比較してみると、以下のようになります。

今回のテストで使用した Black Glimmerglass は、番手の表記とフィルター効果が正しく対応していない印象があり、Black Glimmerglass 1/4 とコントラスト感が等しくなる Glimmerglass の番手を探っていくと、Glimmerglass 3 の質感が最も近いという結果となりました。

本来は 1/4 ぐらいの番手で比較をすると、フィルター効果の差が見やすくなりますが、今回は番手の表記があいまいなので、Black Glimmerglass に関しては 1/8 の番手で比較をしていきます。

続いて、NiSi Black Mist と質感を比較してみると、以下のようになります。

両者とも質感は似ており、コントラスト感もあまり変わらない印象ですが、Black Mist の方がハレーション効果が強く、シャドウ域の明るさが上がっているのに対し、Black Glimmerglass はより黒が締まった状態を維持しています。

続いて、Black Pro-Mist と質感を比較をしてみると、以下のようになります。

両者の質感はわりと似ていますが、Black Pro-Mist の方がハレーション効果が強く、Black Mist と同じように、シャドウの明るさが上がっているのに対して、Black Glimmerglass はより黒が締まった状態を維持しています。またハイライトの明るさは、Black Pro-Mist の方が落ちており、全体のコントラストも低くなっています。

続いて、Schneider Black Frost のフィルター効果を見ていきます。


Schneider Black Frost

Black Frost は、Schneider が開発する Black Mist タイプのフィルターで、ガラス内部に散りばめられた マイクロポア(Micropore)粒子のはたらきで、黒の締まりを維持した状態で、ハレーション効果が得られるとされています。開発元の Schneider Optics は、レンズフィルター開発では米国 Tiffen と肩を並べる、ドイツの老舗ブランドになります。

▶︎ Black Frost のおもな特徴
・Reduces contrast for a soft overall image
・Maintains control over flares and shadows
・Retain rich blacks
・Mutes colors

Black Frost - Schneider Kreuznach

Black Frost のラインナップとしては、1/8 から 2 までの 5 段階の番手があります。まずは、Black Frost の質感を フィルターなし の状態と比較してみると、以下のようになります。

続いて、Black Pro-Mist と質感を比較してみると、以下のようになります。

Black Frost は、Black Pro-Mist の Schneider 版ともいえる製品で、両者ともフィルム全盛期に開発されているため、質感はわりと似ています。ハレーション効果に関しては、ともに Amber 方向(暖色)にシフトする傾向が見られますが、Black Frost の方がハイライトの光の拡散が少なく、ハレーションの輪郭がはっきり出るような質感になっています。

また Black Frost は “黒の締まりが維持される” と説明されていますが、実際にフィルターの番手を上げていくと、シャドウ域がだんだん浮いてきます。波形モニターで見ると、黒レベルは Black Pro-Mist とあまり変わらず、ハイライトの明るさも落ちる傾向にありますが、その落ち具合は Black Pro-Mist より小さくなっています。

続いて、NiSi Black Mist と質感を比較してみると、以下のようになります。

両者を比較すると、Black Frost より Black Mist の方が、ハイライトの光がよりソフトに拡散され、シャドウ域が明るくなる傾向が見られます。また輪郭のシャープネスに関しては、ハレーション効果の影響により、Black Frost の方がぼんやりした印象となっています。

続いて、Schneider の人気モデル Hollywood Black Magic のフィルター効果を見ていきます。


Schneider Hollywood Black Magic

Hollywood Black Magic は、デジタルシネマの撮影が普及しはじめた 2013 年頃に発売されたフィルターで、Black Frost 1/8Schneider HD Classic Soft の効果を組み合わせた、複合型モデルとなります。Black Frost によるハレーション効果は一定で、フィルターの番手を上げていくと、HD Classic Soft の効果が強まる仕様になっています。

▶︎ Hollywood Black Magic のおもな特徴
・Constant smooth halation at all diffusion strength
・Creates a filmic look by adding a subtle glow to highlights
・Maintains rich blacks and colors
・Smoothen digital look of high-res images

Hollywood Black Magic - Schneider Kreuznach

フィルターの表面を拡大してみると、以下のようになります。

Evidence Cameras

Hollywood Black Magic のラインナップとしては、1/8 から 2 までの 5 段階の番手があります。まずは、その質感を フィルターなし の状態と比較してみると、以下のようになります。

続いて、NiSi Black Mist と質感を比較してみると、以下のようになります。

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